12.VSブラックマンバ その3
黒い嵐が晴れ、透明な海が戻る。
毒が巻かれた上に海流が掻き乱されたのだから、リアルだったら水は濁るはずだけど、快適な視界となっている。
「そんなぁ……ばかなぁ」
口から昇る白い気泡は少ない。胸に空いた穴からほとんどが抜けてしまっているから。
私の嘴が、毒蛇さんの肺を貫いていた。
夜の嵐が生み出した渦を利用し、私は嵐の中を飛んだ。
少しでも激流に逆らえば、毒や流氷の餌食になっていたけど、感覚強化で何とか回避。
私は渦を利用した加速で、自分を一本の矢に変えた。
いくら星ゼロでも、超高速体当たりなら――そして弱点を穿てば、勝てる可能性は十分あった。
「あぁ、せめて君も巻き沿いにしてやる」
毒蛇さんが大きく口を開け、身をくねらせる。
私に巻き付いて、最期の力で捕食する気なんだろう。
だけど、私は海流に乗って逃げる。
「くそぉ……覚えたからねぇ、シオン。イワトビペンギンのシオン……! 君はぁ僕のぉ獲物だぁ!」
【 プレイヤー「ダークウイング」を狩猟しました 】
【 称号「強肉弱食」を得ました 】
【 レベルが上のプレイヤー・エネミーに対して能力の補正が発生します 】
【 称号「窮鼠猫を嚙む」を得ました 】
【 逃げ場がない空間で能力の補正が発生します 】
【 称号「潜水名人」を得ました 】
【 水中での移動に補正が発生します 】
【 水中での行動時間が増加します 】
「ふぅ……いやったぁ!!」
なんとか生き延びた。胸がドキドキする。震えが止まらない。
水の中で思わず旋回してしまう。海流に乗って、本来自分が出せる速度を越えて水中を飛び回る。
毒蛇さんを相手にして勝てたのは偶然に近い。
・海流が激しいエリアに居たこと。
・毒蛇さんの耐久が低かったこと。
・私のセンスが強化出来ていたこと。
・毒蛇さんが夜の嵐を使ったこと。
特に、最後の技については予想していなかったことだから、本当にラッキーだった。
あの黒い嵐が無くても、毒蛇さんに一撃与えられたかもしれないけど……
その一撃で倒しきれるとは思えない。
これは偶然。たまたま。ビギナーズラック――頭でわかっていても、冷静になれ調子に乗るなと自分に言い聞かせても、喜びが溢れる。
「いやっほぉー!」
嬉しさのあまりに水面に飛び出す。
クジラのブリーチング、イルカのジャンプのように、翼を広げながら飛び上がる。
【 エネミー「神速鯱」と会敵しました 】
「あ……」
【 エネミー「神速鯱」に捕食されました 】
【 エリア「北極海―第三氷上地点」 】
「なるほど、なるほど、水中から地上の索敵は、ちょっと感覚が違うのね、うんうん、なんか気配はあったけど、岩鰐とかそっち系かなって思ってたんだ。甘かったね。うんうん。これは私のミスだね……」
ここはアニマルユートピア。
動物たちの楽園。
リアルな動物世界を体験できます。
気を抜いた奴から死んでく、弱肉強食ワールド。
アニマルユートピア、サイコー\(^o^)/
知っていたけど、その上で遊んでいるけど……
「っんの! クソオルカァー!!!」




