「私だけの処方箋」
何気なく、仏壇のおばあちゃんの写真を見ていて気が付いた。
少し顎を引いて、少し眉尻が下がって。
それでいて。
口は真一文字なんだけど。
ほっぺたが上がっている。
だから、いつ見ても私に微笑み返してくれているって。
怒った時も。
楽しい時も。
悲しい時も。
お尻を浮かせて。
手を伸ばす。
お線香を一本つまんで。
鼻を近づける。
唇を食む。
ふふ。
おばあちゃんの匂い。
そして。
シュッ。
マッチに火をつける。
ここだけは。
我が家の七不思議。
ライターとかのが便利なのに。
ここだけはマッチ。
先端に灯った炎から。
ゆっくり細い煙が立ち上る。
ふーっ。
と。
マッチに息を吹きかけて。
火を消して。
小さな灰皿に入れる。
お線香を扇いで。
炎から灯火に変える。
線香立ての真ん中に。
お線香を差した。
一筋の白煙が。
波打つように。
まるで。
龍のように。
天へと向かい。
空気に溶けていく。
りん棒をつかんで。
おりんを叩く。
チーン、チーン……
澄んだ高音が。
耳を抜けていく。
そっと。
顔の前で手を合わせて。
おばあちゃんを見つめる。
昔も。
今だって。
何を話しかけても、笑ってくれていたおばあちゃん。
彼に振られちゃったんだ。
おばあちゃんの声が聞こえる。
「がんばったね」
「大丈夫よ」
「あんたはいい子や」
って。
そう言って、頭を撫でては、面白い昔話をしてくれた。
お線香の匂いに、包まれていたら。
おばあちゃんに、抱きしめられているようで。
心の中の澱さえ。
掬い上げてくれる。
気がしてくる。
「要らないものは、ありがとう言って、ポイって捨てたらいい」
「へへ……」
思わず想い出した。
おばあちゃんの言葉に。
肩を揺すって笑っていた。
そう。
いつだって。
おばあちゃんの写真を見ていると。
不思議といつの間にか。
私も微笑みかけている。
おばあちゃんの笑顔は――
私にとって、何でも治す薬みたい。
ありがとう。
おばあちゃん。
お読み下さりありがとうございます。
感謝しております。




