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 ズッッバ―――ンンン・・・‥‥


 前回までの比ではない衝撃波が俺を襲った。輝力を扱えなかった3歳の頃の俺だったら、四肢が散り散りになってもおかしくない爆風を浴びたのだ。俺は大きな考え違いをしていた。今回の輝力量は1千倍なのに対し矢の速度は31倍でしかないから輝力で容易に防げるはずと思っていたけど、間違いもいいとこだったのである。こりゃ美雪に衝撃波の計算式を教えてもらわないとマズイなと、冷や汗を掻いた俺だった。

 などと余裕をかましていたのには訳がある。俺の時間感覚では矢が的を射るには、16秒近くかかるんだね。的の中心を射る未来が確定してから矢を放ったため外れることはないし、仮に外れたとしても分割俺が矢を消去する手筈になっている。そう問題など、何もないということ。輪も破損や不具合は一切無いと言っているし、葉月さんは妖精族の長だからこの程度・・・って、ええ!?


「葉月さん、大丈夫ですか!」


 俺は葉月さんに駆け寄り、片膝付いた。葉月さんが座り込み、胸を押さえていたのである。和装ということもあり昭和人間としては「持病のしゃくが」という時代劇のお約束を思い出さずにはいられないのだけどそれは置き、葉月さんに寄り添う。寄り添っている内に矢が的を貫き葉月さんはそれを非常に恐縮していたけど、そんなのはどうでもいい事。何があったか尋ねたところ、予想を遥かに超える衝撃波に驚いたとのことだった。「驚いただけです」との言葉に嘘はなく、「こんなふうに腰砕けになったのは私だけみたいです恥ずかしい」との言葉にも嘘はないようだけど、これは俺の失態。マッハ50の衝撃波を過小評価していた俺の油断が、葉月さんをこんな目に遭わせてしまったのだ。俺は己の油断を誠心誠意詫びた。葉月さんは「油断していたのは私の方です」と繰り返していたが、詫びの印として「アポロン云々を三回黙認するよ」と提案したら、


「三回といわず三千回」


 などと即座に返しやがったのである。心配するんじゃなかった、と嘆息した俺だった。


 交渉により、三千回を三十回に減らせた。人によっては「三回を三十回に増やされたんじゃん」と評するだろうが精神衛生的に不採用とし話を進めると、実験はあと二回行った。矢に張り付いた分割俺によって矢の進行方向を変えられるかを、試したのである。結果を述べると、変更可能だった。矢の先端を右へ傾ければ右へ、左へ傾ければ左へ、進行方向が変わったんだね。ただこの軸傾斜は「矢が回転していようと同一方向に傾け続けねばならない」ため、地球の技術では不可能に思える。もちろん俺が知らないだけで、自称宇宙人のアレコレをリバースエンジニアリングすることにより米軍が開発済かもしれないけどさ。

 そうそう宇宙人と言えば母さんによると、ポジティブ側宇宙人とネガティブ側宇宙人は好むUFOの形状が異なるという。ポジティブ側は球や流線型を好み、ネガティブ側は直線と角度を好むそうなのだ。一概にはいえないけど、立方体やギザギザ形状のUFOがいたら関わらないのが吉とのことだった。闇族に敗北した際の惑星脱出飛行車が立方体をしているのは、恒星間飛行技術をこの星の人々が失ってしまったかららしい。残念だけどこの星唯一の要塞型飛行車は球形をしているから、それで良しとするか。

 話を戻そう。

 1千圧によるマッハ50矢の二射目と三射目、葉月さんは俺の後に隠れてもらった。「3キロ離れて」「絶対嫌!」「わがまま言わない!」「あっかんべ~~」 というやり取りを思い出すと頭痛がするので放り投げるとし、俺の輝力防御壁で守れる後方にいてもらったのだ。後方と言うか正確には右隣で、俺の戦闘服の腰辺りにしがみ付く必要があったのかは定かでないが、一射目に座り込ませてしまった身としては拒否できなかったのである。嫌ではなかったし和服は堅くて危険な柔らかさもなかったから、全然いいんだけどね。でも素晴らしい花の香りは、少し危険だったな。

 それはさて置き、実験は上々の出来だった。またカレンによるとマッハ50矢はゴブリンを確実に葬り、ハイゴブリンも高確度で葬るとのことだった。カレンは前回の戦争に従軍し遠距離とはいえ闇族との戦闘を実際に観察しているから、見立ては正しいと思われる。俺と翼さんの矢でハイゴブリンを2千体削れば、戦死者を千人単位で減らせるかもしれない。研究の価値は十分あると、俺は判断した。

 実験終了後の妖精族へのお礼も、上々の出来だった。この土地の妖精達も、甘酒をいたく気に入ったようなんだよね。それは手放しで嬉しかったけど、梅酒ソーダは微妙。梅酒ソーダは葉月さんに気に入られ過ぎ、「その一杯が最後って念押ししたよね」「お願いですもう一杯だけ!」「そんなこと言ってると『その一杯が最期』になるよ!」「ビエ~ンごめんなさい~~」とのやり取りをするハメになってしまったのである。どうか酔いから覚めた葉月さんが、あのやり取りを頭を抱えて後悔しますように。


 妖精族へのお礼を終えた俺は、普段より長めの入浴をした。葉月さんのせいで被った精神疲労を除去する役目もあったが、長めの訳は母さんに入浴を勧められたことにある。母さんは何も言わず俺も訊かなかったけど、残り香を俺も感じていたのだ。う~む次からは、もっと毅然とした態度を取らねばな。でも葉月さんの十代序盤の容姿を思い出すや、毅然とした態度を取れるかあやふやになってしまうダメダメな俺だった。

 入浴を終え、体育館へ向かう。生活スペースに足を踏み入れ、ベッドの傍らにいる輝力俺にテレパシーでお礼を言う。輝力俺によると、美雪は健やかに寝ていたという。アカシックレコードで見た美雪の起床時刻まで、残り10分。輝力俺が座っていた椅子の前に輝力製のテーブルを創り、矢の実験に関する報告書を書いていった。

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