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本命としたこの星の神話や伝承に、エインティータを想起させる登場人物はいなかった。よってダメ元で地球の記憶を引っ張り出したところ、意外にも候補を二つ見つけた。一つはスコットランドの伝承に登場する妖精の女王、ティターニアだ。ティターニアは妖精王オベロンの妻で、エインティータさんつまり振袖娘に既婚者の印象はない。しかし誇り高い女王の方は、出会った頃の妖精長とかなり重なる。男女両性の中性的容姿をしていたけど強いて言うなら、女性だったからね。
地球の記憶に引っかかったもう一つは、イングランド北部の伝承に登場する妖精の少女、エインセルだ。いや少女ではなく、人の少女の姿をしているだけだったかな? なぜ記憶が曖昧かと言うと、「エインセルは自分自身という意味」の方を強烈に覚えているから。イングランド北部の方言ということになっているけど、カバラを習った者としては見過ごすなどあり得ないんだよね。エインセルの綴りは AINSEL なため AIN はアインとも読め、そしてカバラにとってアインは、極めて重要な位置を占めるからである。
本来の発音やスペルを無視したカタカナとしてのアインなら、カバラにアインは二つある。一つは組織の旗の12角形として表現されている、12法則の一番目を担うアイン。これは人の嗅神経としても顕現しているから、馴染み深いと言えよう。嗅神経と最も関係の深い臓器は下垂体で組織において下垂体は、仮初の自分における意識の中心を指している。よって本体と共鳴率の低い人、もしくは本体を持たない遺伝子族にとっては、「下垂体こそが自分」なのだ。それを自分自身という意味の一部として用いるなんて、意味深にも程があるのである(ainsel は myself だったような?)。
カタカナとしてのアインのもう一つも、意味深にも程がある。創造主の創造主の創造主である原初の存在がまだ不活性状態にあったときの呼び名が、アインだからね。これが活性化するとアインアインとなり、都市伝説界隈でお馴染みのアレになるのだがそれは伏せ、アインは「根源たる大深淵」や「グレートアビス」等々の、中二病を再発しかねない数々の別名で呼ばれている。それを自分自身という意味の一部にするなんて、再発した中二病で俺を殺すつもりなのだろうか? 振袖娘が心配そうにこちらを見つめているし、この方向で考察を深めるのは止めにしよう・・・いや、一つだけ考えをまとめるかな。
俺が地球人だった終盤、「アインはエホバの上位神」と主張するユダヤ教の学者が現れ始めていた。エホバはメルキゼデクの教えを忘れた者達が考案したただの造語で波長的な意味や力は皆無なのだがそれは置き、上位神云々の主張は誤り。不活性状態にある創造主の創造主の創造主は人の想像を遥かに超えて、
なにも無い
のである。エホバの上位神などでは、決してないんだね
話を戻そう。
エインセルという言葉は俺にとって、もだえ苦しむほど興味深いと言える。だが一旦脇に置き、続いてティータを考察してみよう。妖精という括りで思い出したからケルト神話における妖精の女王ティターニアが脳裏を駆けたが、括りを外してティータを素直に TITANIA の TITA とすると、タイタンつまり「巨人」になる。組織において巨人は光の子の子供ゆえ、実はこっちも中二病の発病がヤバい。しかもそこにアインを加えるのだから、誇張ではなく鼻血が出そうである。鼻血を意志で封じて考察を進めたところ、ティターニアはローマ神話におけるダイアナが変化したものという説があったことを思い出した。ダイアナは狩猟と貞節と月の女神とされ、特徴として銀の弓をつねに携えているんじゃなかったかな? 銀の弓といえば翼さんは俺をアポロンと結び付けることに病的なこだわりを見せ、確かにアポロンの馬車の名を冠するカドリガ擬装式飛行車に乗っているけど、それ以外の共通点を俺はあまり感じないんだよね。翼さんは「太陽は天頂で白く輝き白銀に輝くとも言えますから翔さんなのです!」などと、ドン引き必至のことをよくほざいているけどさ。頭痛がしてきたので振袖娘に話を戻すと、振袖娘は振袖を着ているのに、弓がなぜか似合いそうなのである。ちょっと悪戯して、輝力製の銀の弓を創って持たせてみようかな。でもエインティータのエインは下垂体かもしれずもしそうなら金色だから、金色部分と銀色部分を織り交ぜた、いかにも女神が愛用していそうな弓を・・・・
かくして考察中にも拘わらず創作意欲を掻きたてられた俺は、金と銀に彩られた女神愛用の弓を輝力で創ってみた。前世でRPGをそれなりにしていたのが活き、神々しい弓の図案が次から次に湧き出てくる。輝力だと無料かつ瞬時にできるのをいいことに、一張を除き三十張の弓が俺の周囲に短時間で浮かぶことになった(なぜか一張だけべらぼうに苦労した)。その中から「振袖娘に一番似合いそうな弓」と「俺が一番好きな弓」と「工芸品として芸術性が最も高そうな弓」の合計三張を選び、三次元に戻ろうとしたところ、母さんが突如テレパシーで語り掛けてきた。「翼用の白銀の弓も創っておきなさい」とのテレパシーに九死に一生を得た気がしきりとした俺は、深い感謝の言葉を贈る。母さんは「大変でしょうけど大変って思っちゃダメよ」という、分かるような分からないような助言をよこしてきて、ハテナマークを大量生産したものだった。
翼さん用の弓も手掛けたことにより、創造に費やした時間は四倍ほどに伸びた。図案の湧く速度はエインティータさんの時と変わらなかったが、両者を区別すべく形状と配色に手を加えたところ、時間を忘れて熱中してしまったのである。輝力圧縮最大だったから、三次元世界のエインティータさんを待たせることは無かったけどさ。
翼さん用の弓には捻りの何もない、翼を施した。しかし、弓と翼の相性の良さを侮るなかれ。細長い部品で構成される弓と、形状自体が細長い翼は、相性抜群なのである。配色は、翼は温かみのある白銀、弦は明るい金、それ以外は銀とした。翼さんのハープの配色に似ているけど、白銀の翼が良い味出しているから文句は出ないと思う。




