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 輝力俺をテレポーテーションさせて行う名家巡りの第一回目は、バカンスを終えた翌日から始めた。具体的には名家20家を10家ずつの二班に分け、初日は一班を訪問し、二日目は二班を訪問し、三日目は一班というように六日連続訪問し、その六日間を第一回目としたのである。ちなみに一班は三家と六家と舞ちゃんの実家の天草家、二班は天草家を除いた11家だね。鷹司令官によると、勇と舞ちゃんの剣持夫妻および昇と奏の深森夫妻を臨時名家とし、11家を13家にする案が根強く残っているそうだが、両夫妻が承諾せず実現していないという。ならば鷲と晴、そして橙と藍の二組の夫婦に某司令官達は声をかけるも同じく拒否され、面目丸つぶれになったそうだ。個人的には少なくとも剣持夫妻と深森夫妻は、承諾せざるを得ない状況になると予想している。予想が当たりそうだったら、面目を失った某司令官達へその旨をこっそり伝えてくださいと、鷹司令官に俺は頼んでいた。

 そうそう一度に訪問する家の上限が10なのは、各々の訪問先で3つに分離し、合計30体にする予定だからだ。年齢別に指導するには、最低3体必要ってことだね。名家巡りの第二回目である戦士養成学校の長期休暇中は3体では足りない可能性があるが、何事もしてみなければ分からない。よって今のところ、3体で試してみようと思っている。


 その六日後。

 数々の反省を背負い、第一回目の六日間は終了した。そうこの初挑戦により、問題と課題を浮き彫りにすることが出来たのである。まさしく「やってみなければ解らぬようこの宇宙は創られている」だね。かなり疲れているけど反省を兼ね、整理してみますか。


 輝力俺テレポーテーション名家巡り略して「分身指導」の初挑戦によって浮き彫りになった最大の問題は、罪悪感で胸が押しつぶされそうなことに、『食事会の中止』だった。前回までは訓練後に、皆さんと昼食や夕食を共にしていた。しかし輝力の分身ではご飯を食べられないから、今回は食事会を設けなかったのだ。それを知った小さい子たちがギャン泣きしたのは、マジ胸が押し潰されそうだったな。

 この食事会問題は非常に深刻で、その一つに輝力工芸スキルによる会場設営があった。訓練後の食事会は基本的に屋外で行ったため、冷暖房付きの輝力製会場を当初は俺が毎回創っていた。けどそのうち「自分達にも創れますか?」と戦士養成学校の子供達が訊いてきて、ならば試しに創ってみようということになり試行錯誤を重ねたところ、立派な会場を子供達だけで設営できるようになったのである。一族の子供達の成長を喜んだ大人達は食事をいっそう豪華にしてそれに報い、子供達もやる気を益々高めていった。そう会場設営は、輝力工芸スキルの極めて有意義な訓練でもあったんだね。

 その食事会の最中、子供好きの俺は特に小さい子たちの食事をいつもアレコレ世話していて、その時間が無くなったことも深刻な問題とされた。名家訪問で俺はお子ちゃま達と遊び半分訓練半分の時間を過ごし、その後の食事会で世話をいそいそする事により、お子ちゃま達の好意と信頼を爆上げしていたという。その一切を、今回は省いてしまったのである。これを重視した大人達は眉間に深い縦皺を刻み、このような危惧を揃って口にした。


「幼少期にその体験をしなかった世代が、体験した世代と同等の好意と信頼を翔さんに寄せるとは、思えないのです」


 俺は人気のために名家巡りをしているのでは決してない。しかし命がけの戦場で戦友に抱く好意や信頼が強大な力になることは、容易く想像できる。恥ずかしさと人選ミス感の極致だが俺は人類軍の先頭に立つ身ゆえ、戦友の好意や信頼を減じる行いは慎むべきなのだ。したがって第一回目の分身指導を終えた俺の胸にあったのは、


「次の第二回目は、異なる方法で行う可能性が極めて高いな」


 だったのである。方法を変えない可能性が(ゼロ)でないのは、輝力分身ではなく本物の肉体による分身だったら食事問題が解決するからだ。でもそのためには大聖者になるのが必須で、そして大聖者になったら、戦士として闇族と戦えなくなってしまう。それでは本末転倒なため肉体分身以外の方法を見つけなければならないが、無理っぽいなあというのが本音。実際にしてみないと分からぬとはいえ、今回の初挑戦で判明したことは予想を遥かに超えて重く、俺はうつむかずにいられなかった。

 俯くといえば、俺より数週間早く俯いた人がいた。それは、翼さん。贖罪のため正確に述べると、俺が俯いたのは子供達にギャン泣きされた分身指導初日のお昼だったが、翼さんが俯いたのはそれより数週間前の、分身指導の説明をした時だった。つまり翼さんは食事会を設けないことによって生じる問題を、説明されるや見抜いたってことだね。しかし挑戦の偉大さを知り、何より「やってみねば分からない」を熟知していた翼さんは、俯いた理由を教えてくれなかった。ただ「翔さんならすぐ気づくでしょうから、そのときお話ししましょう」と微笑んだだけだったのである。そして迎えた、初日のお昼。ここ数年可愛がってきたお子ちゃま達に抱き着かれ「かえっちゃやだ~」「ししょうとごはんをいっしょに食べる~」と大泣きされた俺は、己の考え足らずをようやく悟った。だが分身指導はある事柄に関する実験でもあったため、少なくとも第一回目の六日間は中断できなかったのである。俺は地に膝をつき、子供達一人一人に詫びた。頃合いを計り親達が近づいてきて、子供達を抱えて連れて行く。子供達にもう一度詫び、次いで翼さんに体を向け、己の考え足らずにやっと気づいたことを告げた。そして翼さんを促し、本家の応接室へ二人で向かった。

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