表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
786/818

139

「という訳で美雪、その時はまたこうして一緒にいてくれるかな?」


 一緒にいない訳ないじゃない、と美雪は額で俺の腕をゴシゴシする。前世の俺には顔を掌でゴシゴシ擦る習慣があり、お陰で顔に皺があまりないのだと個人的に考えていた。顔ゴシゴシと言えば、体を洗うナイロンタオルで顔をゴシゴシ洗う習慣も前世の俺にはあり、大学のゼミの女性達にその情報が偶然伝わり、ナイロンタオルゴシゴシのデタラメさを懇々と説かれたものだ。でも中年以降は、俺の方が断然若い肌をしていたんだよね。とはいえ個人差があるので人に勧めたことはなく、でも美雪が生身だったら美雪のこの額ゴシゴシを、俺は心配したのかな? うろ覚えだけど炎症を招き、シミ等の原因になるとされていたような気がする。う~むやはり心配だ、遠回しに尋ねてみよう。


「ひょっとして美雪は、前世の俺が掌で顔をゴシゴシ擦っていたのを、知っていたりする?」「ナイロンタオルゴシゴシも知っているよ」「・・・ど、どのような情報源をお持ちなのでしょうか?」「日記に決まっているじゃない」「へ?」「前世の翔が毎日律儀につけていた日記よ。母さんによるとその日記を弟さんや妹さん達は宝物にしていて、出版の話もあったんだって」「な、なな、なんですと―――ッッ!!」


 遠回しに尋ねたら核心を貫かれてしまっれたのだがそれは置き、美雪の説明を時系列順に並べてみよう。

 美雪によると水難事故に遭った10人の小学生を救った俺は、一時期メディアに注目されていたらしい。それ絡みでネットに公開していた独自の健康法の著者も俺とバレて出版の話も出たが、日記を根拠に弟や妹たちはそれを拒否した。すると必然的に日記の存在もバレ、弟や妹たちが何気なく話した内容がネットでウケたのをきっかけに、日記にも出版の誘いがあったという。もちろんそれも弟や妹たちは拒否してくれてそれは御の字なのだけど、可能なら母さんにもキッパリ言ってほしいのが俺の本音。「兄の許可なく兄の日記を盗み読むのは止めてください!」ってね。そうは言っても創造主には、日記どころか頭の中でこっそり考えたことも、すべて筒抜けなんだけどさ。

 それ関連の前世の出来事を思い出した。現実逃避を兼ね、思い出してみよう。

 小学四年生のとき、失敗を嘘で誤魔化そうとする気持ちの非常に強い女子が同じ班にいた。謝罪できないその子は感謝の言葉も出てこず、弟や妹たちがこうなったらヤバいと危ぶんだ俺はまずは何より情報収集の原則に則り、その子と積極的に交流した。孤児院の子として色眼鏡で見られることに嫌気が差していた俺は、その子の情報も色眼鏡を介さず直接集めようとしたのだ。それを察知したのだろう最初は壁が半端なかったが、そこはまだ小学四年生。次第に様々な話をするようになり、その一つに両親の話があり、それによって謎はあっけなく解けた。失敗を嘘で誤魔化し感謝も謝罪もできないのは両親がそうだったからという、ただそれだけの事だったのである。解明できたのが夏休み直前だったことも、図書館に日参して夏を過ごした理由の一つだった。

 感謝の言葉を言えない両親はそれを、「家族だからいちいち感謝しなくていい」という理屈にすり替えていた。そのせいで自分の子もそうなったが、すり替えたことから窺えるように謝罪できないつまり「自分の非を認められない」両親は、自分の子がそうなってしまったことも認められず放置した。よってその子は感謝も謝罪もできなくなり、それでも自宅では不都合なかったが、子供には学校での暮らしもあるんだよね。学校では不都合の連続に、見舞われることになったのである。

 しかし見舞われても、どうすれば良いかその子には分からなかった。今思うとその子は、前世が日本人ではなかったのかもしれない。「自分の非を認めないのが国民性」という国も、地球には多いからだ。いやそっちの方が多い気もしこたまするがそれは置き、不都合に連続して見舞われたその子が選んだのは、嘘をついて誤魔化すことだった。何のことはないそれも、両親を真似たのである。

 後で知ったのだがその子にはお兄さんがいて、お兄さんはその子と違い嘘で誤魔化すことをしないと人伝に聞いた。中学入学後にひょんなことから知り合ったときは感謝も謝罪も自然に使いこなしており、勇気を出し小学四年生のとき妹さんと同じ班だったことを明かしたところ、「お前が同性で友達になっていたら妹も人生が変わっていたかもな」と肩を落としていた。お兄さんは小学1年時にクラスメイトに性格を指摘され、直す努力を懸命にし、そのクラスメイトと親友になったそうなのである。社会人になり偶然再会したさい「家族と絶縁したよ」とせいせいした顔で言っていたのを、今も鮮明に覚えている。

 話をまとめよう。

 創造主には日記どころか、頭の中でこっそり考えたこともすべて筒抜けになっている。創造主を木の幹とするなら枝の先端に相当する本体もそれは変わらず、一から十まで筒抜け状態だ。それを、本体と共鳴率の高い心ほど直感的に理解できるため、嘘や誤魔化しをなるべく排した人生を送ろうとする。そうすることで共鳴率が益々高まることも、その人達は直感的に理解しているんだね。

 これは、逆にもそのまま作用する。本体と共鳴率の低い心ほど筒抜け状態の理解が難しくなり、そして嘘や誤魔化しを重ねるほど共鳴率が減じることも、益々理解しづらくなっていくってこと。まこと「神の愛は無限。然るに厳しさも無限」なのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ