48話 乱入する人達
さらなる乱入者…。
「…………お前は…。」
アルディオを呼び止めた人物…それは。
「はぁ…。”カイ兄から聞いて来たけど”本当に暴走しているなんて…。」
そう溜息を吐きながら発言した人物は、少し長い黒髪を簪でまとめており、金の瞳を持つ身長165cm以上の美少女。
この世界では珍しい女袴を着ているスズ・キサラギである。
「カイ兄?もしかして主の事か?」
カイ兄という言葉からカインへと繋げるアルディオ。単細胞だがカインの事になると急に頭が冴える。
「はい、そうですよ。蒼い髪と耳…アルディオさんで間違いないですよね?」
アルディオの特徴を教えてもらっているが念の為に確認をするスズ。
「うむっ!!我は誇り高き天狼のアルディオだっ!!」
ドヤ顔で大きな胸を張り、いつものポーズを決めるアルディオ。本日だけでも4度目である。
「………はい、聞いていた通りですね。私はカイ兄から貴方が暴走していたら止めて欲しいと頼まれてやって来ました。」
少しアルディオに呆れながらも、見た目も行動も一致したので完全に同一人物であると特定した。そして、カインに言われてきたと言う事を証明する為に”とある物”をアルディオに見せた。
「な、何だとっ!!わ、我は暴れていないぞっ!!」
物凄く動揺をしているアルディオ。スズが見せた物を見て、自分でも暴れていた事はわかっているので弱気になる。
「では、お話をするのでメリルさんの鍛冶屋の中へ戻りましょう。」
「う、うむ…。」
大人しくなった事を確認したスズは、アルディオを鍛冶屋の中へと誘導していった。その後ろをとても静かに付いて行くアルディオの耳は非常に垂れてしまっている。
鍛冶屋へと向かうスズの後ろをトボトボと付いて行くのであった…。
そして、2人は鍛冶屋の中に入ったその時…。
「うぉぉーーいっ!!危ないだろっ!!!」
男の叫び声が聞えて来た。その男は黒の短髪に金の瞳を持つ身長175cmくらいあり、容姿もそこら辺の男では勝てないくらい整っている。そして、この男もスズと同じく袴を着ていた。
「邪魔をするなら…貴方も斬ります。」
ヒュッ!!
ソフィアがその男に向かって短剣で襲いかかる。そして、ソフィアと戦っていたエルミナも…。
「ヒロくん、邪魔をしないでっ!!」
カシャンッ!!
エルミナが錫杖を鳴らすと、50cmくらいの光の玉が5つ発生して乱入した男…ヒロに向かって高速で迫っていく。
「待て待て待てぇぇーーっ!!!なんで2人とも俺を狙い始めるんだよっ!!!」
キンッ!!
ヒュッヒュッヒュッヒュッヒュッ!!
ソフィアの攻撃を腰に差していた太刀で防いだあとに、エルミナの作り出した光の玉をギリギリで躱していくヒロ。
2人を止めに来たのに、何故か自分が集中的に狙われている事態になっていた。
「誰かも分からない方の言うことを聞くわけないでしょう。それに、私はカイン様の命令しか聞きません。」
攻撃を防がれた後、直ぐにヒロから距離をとったソフィアが言い放つ。そもそもヒロとソフィアには面識が無いのだ。
「だからっ!!俺はカ「問答無用っ!!!」聞けよぉぉおおーーっ!!!」
ソフィアは邪魔をするヒロに目掛けて攻撃を再開する。全く話を聞いてもらえない非常に残念な男である。
「ヒロくん、どいてっ!!」
カシャンッ!!カシャンッ!!
再び錫杖を鳴らすエルミナ。2度鳴らした錫杖から今度は2つ光の剣が出現して高速でヒロに迫っていく。
「だからっ!!なんで俺を狙うんだぁぁあーーっ!!」
その様子を眺めていたスズは…。
「何やってんの…バカ兄貴…。」
全く役に立たない残念な兄に呆れているスズ。仕方無いので自分で止めに行くようだ。
シュッ!!
高速でソフィアとエルミナの間に移動していき…。
「もう、やめて下さいっ!」
スズの武器である小太刀2本腰から抜き、それぞれソフィアとエルミナに向けて制止を呼びかけた。
2人目の乱入者にソフィアとエルミナの動きが止まる。
「またですか…。貴方も邪魔をするなら殺しますよ。」
スズに殺気を放ちながらニコニコしているソフィア。さらなる乱入者のスズも殺すつもりだ。
「スズちゃん、久しぶりだねっ!」
一方で、エルミナは幼馴染みのスズと会えて喜んでいた。スズより前に登場しているヒロの時とは全く違う扱いである…。
「なぁエルミナさんや、俺の扱い酷くないか?」
止めに入ったのに、逆に狙われるという酷い目にあったヒロはエルミナに文句を言うが…。
「あれ?ヒロくんいつから居たの?。」
今気が付いたみたいな事を言うエルミナ。さっき思いっきりヒロの名前を呼んでいたのに、全く気が付いてなかったらしい。
「うぉぉーーいっ!!!ずっと居たわっ!」
大声で抗議するヒロ。久しぶり会った初恋の相手に雑に扱われる事に納得行かない様子だが…。
ヒュッ!!
3人で話をしていたところへソフィアが攻撃を仕掛けてきた。今度はスズに狙いを定めている…。
「はぁ…。本当にカイ兄以外の言葉は聞かないんですね…。」
止まらないソフィアに溜息を吐きながら、アルディオと同じく”とある物”をソフィアに見えるように掲げた。
「なっ!!それはカイン様のっ!!!」
スズの掲げた物を見て驚くソフィア。まさかの物を見せられて思わず叫びながらも攻撃を中断する。
「これは、カイ兄から預かっているものです。これを見せるとソフィアさんが言うことを聞くと教わりましたが…。」
本当に効果があった事に安心するスズ。
「なるほど…。本当にカイン様から言われて来たようですね。この展開を予想していたとは……さすがカイン様です。」
スズの掲げた物である”櫛”を見て納得しているソフィア。そして、この展開を予想していたカインを褒めている。
この櫛はソフィア専用の物でカインの特別製だ。ソフィアの尻尾の色である金と白の装飾が施されている。
櫛を見せるという事は、要するに言うことを聞かなければ二度と毛づくろいをしないという意味である。なので、さすがのアルディオも大人しくしているのだ。
「ちょっと待てぇえーっ!!俺はそんな事知らないぞっ!!!なんだよ、その櫛はっ!!!」
櫛を見せれば大人しくなる事を知らなかったヒロ。カインからこの事を聞いていたのはスズだけだったらしい。
「これは大切な物らしいから、男のヒロには触らせたく無いらしいよ。どうせ価値も知らないからって言ってた。
まぁ、私もその気持ちは分かるし。」
カインのこだわりが強いので、女の子の髪を梳かす櫛を他の男には触らせたくなかったらしい。
しかし、納得出来ないヒロは文句を言おうとして…。
「何だよっ!!そんな物は所詮だだの櫛だ…」
ドガッッ!!!ドガッッ!!
「ぐはっ!!」
突然、言葉の途中でアルディオとソフィアの2人から同時に蹴られるヒロ。物凄い勢いで壁へと吹っ飛んでいき…。
ドォォォンッ!!!
メリルの鍛冶屋に2つめの大きな穴が出来た。
そして、勢いもそのままに外へと吹き飛ばされていった。
「この櫛を馬鹿にするとは許せませんっ!!」
「よし、あの男は殺ってしまおうっ!!」
物凄く怒っているソフィアとアルディオ。自分達を毛づくろいする為のカイン特別製の櫛を馬鹿にしたことが許せないらしい。
しかし、それを見てスズが止める。
「あのバカ兄貴は無視しましょう。相手する価値もない男です。
そんな事より、私がここに来た経緯をお話します。」
女心が分からないバカな兄を放置する妹。そんな事よりも、スズ達が何故オボルにやって来たのかを説明するようだ。
「仕方ありませんね。あんな男よりも、カイン様の事が気になるので貴方の話を聞きましょう。」
「うむっ!主の様子も聞きたいぞっ!」
「わ、私もカイくんの事を知りたいっ!!」
スズの提案を了承した事により、4人は離れたところで見ていたメリルとアンドラと合流をしていく。
「やっと、落ち着いたようだね…。わしの鍛冶屋に2つも穴を開けるとは…まったく厄介な子達だよ。」
「エルミナ様が無事で良かったです。」
自分の鍛冶屋を荒されたメリルはようやく治まったことに安心しているようだ。しかし、壁に大穴を開けられたのは嬉しくない。
その一方でアンドラはエルミナに怪我がない事を確認して安心している。
「では、向こうの部屋をお借りしますね。」
「はぁ…。構わないよ。」
スズの発言を溜息を吐きながらの了承するメリル。納得出来ない事もあるが、とりあえずスズの話を聞く事にしたようだ。
こうして、6人は別の部屋へと移動していった。そして、全員が椅子に座ったのを確認したスズが話を切り出す…。
「では、これまでの経緯をお話していきます。」
次回、スズ達とカインの再会…。
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