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無自覚だけど世界最高の男  作者: かめごろう
第2章 修行後と集い
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46話 争う人達

個性的なメンバーが集まるとこうなる…。

 メリルの鍛冶屋に集結した6人の個性的なメンバー達。

 

『神獣と呼ばれている1人で天狼アルディオ。』

『皇族ナイトリーツ家の長女ソフィア。』

『同じくナイトリーツ家の長男フィリップ。』

『鍛冶界で知らないものが居ない名匠メリル。』

『新たな皇族アフェリー家の当主エルミナ。』

『七星天兵団第一師団第三分隊長のアンドラ。』


 中々豪華な顔ぶれである。

 この中で始めに口を開いたのはメリル。


 「それで、これはどういう状況なんだい?」


 鍛冶場でナニカ専用の武具を作っていたら、なにやらカウンターの方が騒がしくなったので様子を見に来たのだ。

 そしたらこんな面々が集まっていたので、状況が理解出来無いのはあたりまえである。

 

 メリルのといに答えたのはフィリップ。


 「これはこれは、名匠メリル殿ではありませんか。こんな場所で何をしてるのですか?」


 丁寧な言葉遣いで逆に質問をした。本人はソフィアの気配を察知してここに辿り着いたので、この場所がメリルの鍛冶屋だとは思っていない…。


 「わしの鍛冶屋なんだから居るのは当たり前だ。この前もここで短剣を作ってあげたじゃないかい……。」


 トンチンカンなフィリップに呆れているメリル。自分の鍛冶屋なのに何で居るんだとか聞く方がどうかしてる…。


 「ん?……ああっ、言われてみればメリル殿の鍛冶屋ですね。この前は、短剣を作っていただきありがとう御座いました。

  あの短剣は妹の門出かどでにプレゼントしたのですよ。」


 ようやくメリルの鍛冶屋だと気が付いたフィリップは、ソフィアにプレゼントした短剣の話を始めた。

 しかし、その短剣は……。


 「変態兄貴のプレゼントした短剣は無くなった筈だぞっ!!そうだよな、ソフィアっ!!」


 プレゼントした本人の前で思いっきりぶっちゃけるアルディオ。そして、ソフィアに同意を求め始めた。


 「な、何だとっ!!嘘だよなソフィアっ!!」


 物凄く動揺をしながらソフィアに詰め寄っていくフィリップ。そのまま右手でソフィアの肩を掴もうとするが…。


 ヒュッ!ヒュッ!


 一瞬でアイテムボックスβから短剣を取り出したソフィアは、フィリップの首筋と右手に短剣を当てて動きを止めた。


 「私にれないでと言った筈です。今度またさわろうとしたら、その首と手を斬り落としますよ。」


 物凄い殺気を放っているソフィアは今にもフィリップの首を落としそうだ。しかし、そんな事お構いなしのフィリップは…。


 「な、何だその短剣はっ!!!俺が渡した短剣はどこに行ったんだっ!!」


 ソフィアの短剣を見て平然と抗議している。


 「私の物は全て御主人様に作って頂きました。あんな安物の短剣と一緒にしないで下さい。」


 更に殺気を強めていくソフィア。名匠メリルの作品をサラッと安物扱いしている。


 「わしの作った短剣を安物扱いするとは……。でも、確かにお嬢ちゃんの持っている短剣は凄い品だね。2本ともSS級以上の短剣のようだ。」


 自作の品を安物扱いされて少し不満そうにしているメリルだったが、ソフィアの持っている短剣を見て感心している。

 この短剣は、1番初めにカインとの模擬戦で使用した『ダーインスレイブ』である。あの後ソフィアの希望により、予備も合わせて10本ほどカインが作っていたのだ。

 その短剣をソフィアはアイテムボックスβ以外にもメイド服のスカートの中にもかくしている…。


 「また御主人様かっ!!!!くそっ、バルシリガ家に逃げ込むとは卑怯な奴め……確か名前は…。」


 フィリップは妹に手を出したカインを殺害しようとしているが、遠すぎてさすがに行けないので非常に悔しがっている。そして、1度聞いたカインの名前を思い出そうとしていた…。


 その様子を見ていた、エルミナとアンドラは…。


 「ソフィアさんの御主人様は凄いんだね。SS級の短剣を作れる人なんて……。」


 「現在では、S級の品までしか作れない筈です。古代級の短剣を作り出したとなれば世界最高の鍛冶師と言えるでしょう。

  さすがソフィア様の主人となられる方は凄いですね。」


 まだ見ぬ世界最高の鍛冶師を想像して感心している2人。まさか、カインがソフィア達の御主人様だとは思っていないだろう。


 一方、名前が出てこないフィリップ…。


 「カ、カ、カ、カンバルワッ!!……違うな。

  カ、カ、カダルンテッ!!……これも違う。

  カ、カ、カ、カタムナゲヨッ!…こんなんじゃないっ!!」


 もはやカインのカの文字しか合っていない。これでは一生出てこないだろう。


 「カ、カ、カ……無理だ、分からんっ!!

  ソフィア、あのクソ野郎の名前はなんだ?」


 諦めてソフィアに問いかけるフィリップ。カインの事をクソ野郎と言ったフィリップに対して、ソフィアが笑顔になって……。


 ヒュッ!!!!!


 「うぉぉいっ!!危ないだろっ!!!」


 物凄い速度で首を落とそうとしたソフィアと攻撃をギリギリで躱すフィリップ。常人なら首が下に落ちていただろう……。

 相変わらずニコニコしながらソフィアが…。


 「私の御主人様を侮辱する者は全て排除します。変態はさっさと死になさいっ!!!」


 ヒュッヒュッヒュッ!!


 笑顔で短剣をフィリップに振るっていくソフィア。高速の連続斬りをギリギリで避けていくフィリップ。


 「おお、兄妹喧嘩の始まりだっ!!」


 その様子を見て楽しそうに発言するアルディオ。

 

 「お、おいっソフィアっ!!兄であるの俺を殺す気かっ!!!」

 

 「聞いてませんでしたか?殺すと言ったんですっ!!!」


 その言葉とともに更に速度を早めてフィリップに攻撃していくソフィア。

 

 ヒュッヒュッヒュッヒュッヒュッヒュッヒュ!


 「ソフィアやめろっ!!俺じゃなかったら死んでるぞっ!!!」


 「……さすがにしぶといですね…。」


 「いいぞソフィアっ!!変態を成敗するのだっ!!」


 フィリップはソフィアの1歳上の兄だが、皇族ナイトリーツ家の次期当主としてかなりの実力者でもある。

 そんな壮絶な兄妹喧嘩をあおるアルディオ。

 

 この3人のやり取りを見ていた者達は……。


 「あれ、止めなくても良いの?」


 兄妹喧嘩が殺しに発展しているので、心配そうに見ているエルミナ。さすがに、あの中に入って止めるという事は自分には出来なかった。


 「ナイトリーツ家では日常の光景なので、わざわざ止める必要は無いですよ。

  それより、ここに来た目的の方はよいのですか?」


 ナイトリーツ家では当たり前の風景だとでも言っているアンドラ。そんな事よりもエルミナの用事について質問をした。


 「あっ!!そうだよ、カイくんの事についてメリルさんに聞かないとっ!!!」


 色々と衝撃的な事がありすぎて、思わずカインの件を忘れてしまっていたエルミナ。慌てながらメリルの元へ走り寄って行く。


 「メリルさんっ!!!」


 エルミナの呼び声で、兄妹喧嘩を見ていたメリルもエルミナに気が付いたようだ。


 「エルミナ、久しぶりだね…。色々と大変だったみたいじゃないか。」


 2年ぶりの再会に少し嬉しそうにしているメリル。カインと同じく孫のように可愛がっていたのだ。


 「うん、色々と皇族としてやることが多かったよ。でも、今まで帰って来られなくてごめんなさい。」


 頭を下げて謝罪するエルミナ。黙って居なくなってしまった事に責任を感じているようだ。


 「まぁ、エルミナが望んだ事じゃないのは分かってるよ。

  それで、今日は用事があってきたんだろ?わしに挨拶する為だけに来た訳では無さそうだしね。」


 「そ、そうだよっ!!私は、カイくんが失踪したと聞いてメリルさんなら何か知ってるかなと思って来たんだよっ!!

  それに…私には手紙が無かったし……。」


 ようやく本題に入ることが出来たエルミナ。初めは少し慌てた様子だったが、最後の方は自分への手紙が無かった事に落ち込んでいる。


 「ん?手紙ならカインは全員に書いていた筈だよ。」


 エルミナの最後の言葉を聞いて不思議に感じたメリル。孤児院に行った時に院長から、カインの知り合いに1人ずつ手紙を書いていた事を教えてもらったからだ。


 「えっ!!でも、孤児院の皆は無かったって…。」


 自分にも手紙が残されていた事に驚くエルミナ。孤児院の皆からエルミナには手紙が無いと聞いていたのだ。

 実は、ヒロがスズへの手紙の内容からエルミナへの内容も察して、孤児院のみんなに頼んで無かった事にしてたのである。


 「まぁ、どっちにしてもカインの居場所ならもう分かっているから問題ないんだけどね。」


 疑問はあるが無いものは仕方無い。それよりも、カイン本人の居場所を知っているから直接会って話したほうが早いのだ。


 「カ、カイくんの居場所を知ってるのっ!!」


 1番会いたい人の所在を早く知りたいエルミナは、物凄い勢いでメリルに詰め寄る。


 「知ってるも何も、そこのお嬢ちゃん達はカインの従者だよ。わしもカインから依頼を受けて武具を作っているところだ。」


 争っているソフィアと楽しそうに見ているアルディオの方を指差しながら説明していくメリル。まさかエルミナがその事を知らなかったとは思わなかった。


 「ええぇーーっ!!聞いてないよぉっ!!

  じゃあ、カイくんがソフィアさんと神獣様の主人をしているって事だよねっ!!」


 直ぐ近くにカインの関係者が存在していたという事実に驚くエルミナ。しかも、皇族と神獣様の主人というのは普通ならありえない事である。


 「そ、そんなっ!!何故、無能者の彼がっ!!」


 神獣と皇族の主人が無能者であるなど、この世界のあり方を否定するような事なのでエルミナと同じように驚いているアンドラ。そんな発言に反応したエルミナは…。


 「なんでカイくんの事を知っているの?」

 

 少し不機嫌そうな顔でアンドラに質問した。カインが無能者である事はエルミナも知らないのだ。


 「すみませんでした。実はオボルヘ来る前に色々と調べていまして、その時に彼が無能者であると言うことも分かったのです。

  それにより、本当にエルミナ様に相応しい相手なのかと思いまして…。」

 

 頭を下げながら謝罪するアンドラ。従者として主人の為を思ってやった事だ。その言葉を聞いたエルミナは…。


 「……カイくんが私に相応しいかじゃなくて、私がカイくんに相応しいかなんだけどね…。

  前よりも更に強くて超カッコよくなっているんだろうなぁ…。」


 アンドラとは違い、カインに自分が釣り合うのかを気にしているようだ。そして、2年後のカインを想像して頬を染めている…。


 「しかしっ!皇族であるエルミナ様に無能者である彼は相応しくありませんっ!!」


 この世界での常識を語るアンドラ。身分の高い者ほどその認識は高いのだ。

 そんな発言をした次の瞬間……。


 シュッ!!


 ソフィアが狙いをフィリップからアンドラに変更して、高速で移動し短剣で襲いかかってきた。


 「なっ!!!」


 咄嗟に腰に差していた剣で防ぐアンドラ。


 キンッ!!


 ギリギリでソフィアの攻撃を防いだ事により、高い金属音が鳴り響く。

 防がれたのを確認したソフィアは直ぐに後ろに飛んでアンドラから距離をとった。


 「カイン様を侮辱する声が聞こえました。アンドラ・センナハルも抹殺対象と認定します。」


 アンドラに濃い殺気を放ちながら告げるソフィア。フィリップに攻撃していたようだが、カインを侮辱する声はきちんと聞こえていた。


 「ちょ、待って下さいっ!!私は「あぁぁぁぁーーっ!!!思い出した、カインという名前だっ!!」……聞いてくださいっ!!」


 弁明をしようとしたアンドラの言葉をかき消しながら大声で叫ぶフィリップ。どうやら、カインの名前を思い出したらしい。


 「えっ!!!じゃあ、カイくんはバルシリガ家に行っているって事?」


 ようやく話が繋がってきたようだ。さっきの話からカインの居場所を特定したエルミナ。


 「……残念ながら気が付いたようですね。仕方がありません。カイン様を裏切ったエルミナ・アフェリーも、この場で抹殺する事にしましょう。」


 今度はエルミナにも殺気を放っているソフィア。抹殺目標が3人に増えたようだ。

 

 ここから更に場が荒れ始めていく……。


 「エルミナ様は、お下がりくださいっ!!ソフィア様は本当に実行される方ですよっ!!」


 エルミナを庇うように前に出て剣を構えるアンドラ。


 「わ、私はカイくんを裏切ってないっ!!!」


 ソフィアの言葉を聞いて、少し怒っている様子のエルミナ。アンドラの制止を無視して前に出ようとしている。


 「くそっ!!カインとかいう男は絶対にぶっ殺してやるっ!!」


 ようやく妹に手を出した標的の名前を覚えたフィリップ。また姿も知らない遥か遠くにいるカインに向けて殺気を放っている。


 「貴方達はここで死んでください…。」


 完全に戦闘態勢に入ったソフィア。周囲に殺気を放っており今にも飛び出しそうだ。


 「おお、我も混ぜろっ!!」


 物凄く楽しそうにしているアルディオ。祭りみたいな気分になっているようだ。


 そして、離れたところで見ていた最後の1人は……。


 「カイン…なんとかしてくれ…。」


 全く収拾がつかない展開に、唯一なんとかしてくれそうなカインに向けて思わずぼやくメリルだった…。

次回、カインの奮闘


読んで頂きありがとう御座いました┏○ペコッ

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