表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/571

船旅へ向けて

翌日、明後日には船が出発するので、まずは乗船の手続きをしようということになった。


「ん?乗船希望か?あいにくとほとんどもう埋まってるぞ?」


「そうなんですか?これでお願いしたいんですけど…」


私はジョーンズさんから貰った乗船証を見せる。


「こ、これは!ちょっと待っててくだせぇ。すぐに話をしてきますんで!」


受付係の船員は直ぐに奥に行って責任者を連れてきた。


「あなたたちが乗船証を持っている方ですか?人数は何名でしょうか?」


「3人なんですけど、従魔がいるんです」


「従魔は大きい種族でしょうか?」


「いいえ。ここにいる小鳥と小さい猫です」


「ならば、一部屋で泊まれるように手配しておきますので、乗船時間になりましたらお越しください」


「ありがとうございます!」


「では、当日をお待ちしております」


「スムーズに乗船手続き出来たね」


「こいつのお陰だよ。今度会ったらちゃんと礼を言っときなよ」


「そうですね。お手紙を書いておきます」


乗船の手続きも終わったので、後は昨日つかまえた盗賊団だ。衛兵さんの詰所に行って確認しないと。


「こんにちは、ベックスさんいらっしゃいますか?」


「ん?冒険者か。何の用だ?」


「昨日つかまえた盗賊団の件なんですけど…」


「盗賊団…ああ、君たちか。そこまで少ない人数のパーティーだと思わなくてな。隊長!例のパーティーが来てますよ」


「分かった。少しかかるからちょっと奥に通しておいてくれ」


「すみませんね。奥へどうぞ」


受け付けてくれた衛兵さんに奥の部屋に通される。


「ちょっと待っててくださいね。お茶出しますから」


「ありがとうございます」


お茶をもらってから数分後、ベックスさんがやってきた。


「いや~、すまんな。ちょうど、討伐依頼とかを出した直後でな。その取り下げや、町の商人たちにもつかまった知らせをしていたら遅くなった」


「いえ、いいですよ。みんなが安心できる方が重要ですから!」


「それで報酬の話だったな。依頼するはずだった報酬もあるし、早期解決だからなこれぐらいだ」


「えっと、合計で金貨15枚!多くないですか?」


「商人からももらっていてな。あいつらもこの件には不安だったからな」


「じゃあ、遠慮なく。そうだ!宿ありがとな、融通してくれたんだろ?」


「気にするな。俺も助かった」


報酬をもらって私たちは詰所を後にした。


「さて、これからどうする?」


「僕は昨日アスカが言ってたアヒージョってやつを頑張ってみます。宿の人には話してますので」


「アスカは?」


「ん~、折角ですし港町の感じを確認したいですね!それにここって国境にも近いですし」


「ああ、そいつはあるね。今から行く反対側のバーバルは向こうの大陸側だけど、こっちの大陸の国との貿易はここだからね」


「ジャネットさんも行きますか?」


「ああ」


「それじゃあ、ちょっと着替えてきますね。キシャルとかも連れていきたいですし」


「分かったよ。前で待ってるよ」


私はそそくさと宿に戻って街行きに着替えて、キシャルとアルナを連れて出る。


「2人ともあんまり動き回らないでね」


んにゃ~


ピィ


「ジャネットさん、用意出来ました!」


「おっ!決まってるねぇ。それじゃ行くとするか」


2人で連れだって町を回る。町の北の方が住宅街で南は港があるので一大倉庫街となっている。その間が商店街などだ。


「ふ~ん。結構いろんな店在りますね。もっと、商人たちが持っていくだけかと思いましたけど」


「だねぇ。結構街にも流れてるみたいだね。おっ!こいつはグリディア様の像だね。でもちょっと見覚えあるねぇ」


「どれですか?あっ!?それは…私のですね」


「通りで。おっさん、これいくらだい?」


「こいつか?これは向こうの大陸からの輸入品でな。ちょっと高いぞ」


「なるほどねぇ。確かに、もうちょっと探してみるよ」


おじさんに提示された価格は確かに私の普段販売している価格の倍していた。まあ、向こうからの運搬費用とかもあるんだろうけど、輸入品扱いだなんて変な気分。


「さて、それじゃ他のもんでも見るかね。あの屋台なんてどうだい?」


「あっ、いいですね。いい匂いです」


「じゃあ、決まりだね」


「いらっしゃい、ここは海の幸を選んで焼いてやるよ。ここにないものがあったら新しく焼いてやるよ」


「へ~、色々ありますね。切り身になってて食べやすそう」


「おうよ!流石に骨が多いのとかもあるから、そこんところは心配すんな」


「んじゃ、あたしはこのピンク色のやつだね」


「私はどれにしようかなぁ~、この白身の魚かな?」


「おっ!お2人さん、目がいいね。どっちも味はたんぱくだからこいつに付けて軽くあぶりなよ」


「分かりました!」


私もジャネットさんも漬けダレに浸して火の近くに持っていきあぶってみる。


「ん~、美味し。あつっ!」


「ほら、アスカ。気を付けなよ」


「すみません。ジャネットさん」


ジャネットさんに口元を拭いてもらって再びチャレンジする。


「ふ~、ふ~。んっ、美味しい!」


「よかったねぇお嬢ちゃん。もう一つどうだい?」


「いいんですか!でも、そこまで食べちゃったら…」


「そっちのねぇちゃんと半分こしなよ」


「そうですね!じゃあもらいます。でも、悪いです。貰っちゃって」


「良いってことよ。んじゃあな」


私たちが店を離れると近くの人が店に並んでいた。


「タイミングよかったですね。あんなに混んでますよ」


「ああ、まあね。そう見えるんだねあんたには」


「?」


「とりあえず次の店だ。魔道具屋にでも行くかい?」


「そうですね。ちょっと覗きたいです」


「じゃあ、行くよ」


道行く人に場所を聞いて魔道具屋に入る。


「置いてるものはと…結構品ぞろえが違いますね」


「ん?あんた新規か?お使いかい」


「違います!れっきとした…なんでしょう?」


「魔道具師って言ってなよ。作ってるんだろ?」


「まあ。でも、細工のついでみたいなところもありますし」


「ふん!なら一つ作ったものを見せてみな。それに応じたもんを見せてやるよ」


「一つですか…う~ん。これでどうでしょうか?」


私は最近人気の風の盾を取り出す。


「これは最近そこらへんで売られてる奴だな。お嬢ちゃんが作ったのかい?」


「そうです。どうでしょうか?」


「ふむ…出回ってる質の悪いのとは違うようだな。いいだろう、こっちに来な」


店のちょっと奥に通される。入口からは見えないところで、そこにも魔道具が並んでいた。


「ここには魔道具と魔石が置いてある。気になるのがあったら言ってくれ」


「うわ~、いっぱいですよ。しかも、見たことないやつですね。これなんだろう?」


私は目の前にあったブレスレットを指さす。魔石が最低でも3つは付いている様だ。


「ん?それか、失敗作だな。火と水と聖の魔石がついているんだが、そんなに属性を都合よく持っている奴がいないんだよ」


「確かにそうですよね。これってちゃんと使う魔法選べるんですか?」


「知らん。そんな奴に出会ってないからな。仕入れた時はすごいと思ったがその後で気付いたんだよ」


「ん~、これは?」


「そのブローチは何だったかな?おおっ!そうだ。指を添えて魔力を込めるとアクアスプラッシュが発動するぞ」


「何でブローチが攻撃魔法何だい?」


「元々貴族の要望でな。もし、パーティーの最中なんかに襲われた時用に作って欲しいとのことだったんだ」


「で、なんで残ってるのさ?」


「パーティーってのは大体出かけるもんだろ?出先に攻撃型の魔石を持っていくような人間を信じると思うか?」


「ああ、そういう…そりゃそうだね。で、いくらなんだい?」


「本来は水の汎用魔石ということで金貨14枚というところだが、実はこれはその貴族が受け取るのもよくないということでな。特別に負けてやるぞ?」


「うう~ん。でも高そうですね。他のおすすめはありませんか?」


「他か…何かあったかな?これはどうだ、フレイムピアースだ。細身の槍だが先端から炎が出るぞ」


「ちょっと重たいですね」


「そうか…杖も持っているようだし、あとはこれか?」


「これは頭用の飾りですか?」


「宵闇のサークレットだ。魔力を高め、特定の属性を強めると言われているんだが、ダンジョン産でな。詳細は不明なんだ」


「鑑定結果は?」


「鑑定結果がそれなんだよ。一応、鑑定持ちのやつがやったんだが、能力の問題なのかダンジョン産が元々鑑定しにくいのかまでは解らん」


「へ~、銀色の髪に黒っぽいのは映えますね~」


「気に入ったんだろ?いくらだい」


「ダンジョン産ということで金貨8枚だ。安いように思えるが、特定の属性とあるから無駄になる可能性もある。後、売れ残っていてな。場所を取っても仕方ないのが実情だな」


「なら、買います!こういうの欲しかったんですよ。他に魔石とかありませんか?」


「魔石ならファモーゼルの魔石がある。風の魔法が使える奴限定になるが、ウィンドウルフよりも高位の力が込められるので使えるなら良いものだぞ」


「いくつありますか?」


「今は3つだな。1つ金貨9枚だ」


「うっ、ちょっと高い…。でも、しょうがないか。2つ買います」


「いいのか?さっきのと合わせると金貨26枚だぞ?」


「大丈夫です。ここじゃないといつ次に買えるか分かりませんから。今まで見たことのない魔石なんです」


「確かにちょっと珍しいがな。当てがあるのか?」


「はい!大切な仲間なんです!」


「…そうか。大事にしなよ」


「分かってます」


「そうそう。折角の上客だ。こいつも持っていくといい」


「これは?」


「こぶし大だがミスリル鋼だ。魔力の通りは銀以上だ。そいつ用の魔道具にでも使ってやってくれ」


「ありがとうございます!絶対いいのにしますね」


「ああ、もしよかったらうちに流してくれたっていいんだぜ?」


「数が作れるようになったら送りますね」


「おいおい、こういうのは社交辞令だぞ」


「いいえ、きっと送りますから!」


おじさんにそう言って私たちは宿に戻った。


「あんな約束しちまっていいのかい?」


「大丈夫ですよ。この旅は長いんですし、きっとまた手に入る機会がありますよ」


「アスカがそういうんならいいか」


「あっ、2人とも帰ってきたんだね。アヒージョだけど、一応完成したから今夜感想聞かせてよ」


「OK!リュートにはお礼に良いものあげちゃうからね」


「えっ!?な、なに…」


「秘密だよ~」


「こういうところがなけりゃねぇ」


「何か言いました、ジャネットさん?」


「いいや、なら飯を楽しみにしようかね」


明日はいよいよ初めての船旅だ。楽しみだなぁ~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ