町へ行きたい
「この先です」
「分かったよ。んじゃ、ちょっとここで待ってな」
「えっ!? 案内は……」
「見た感じ悪い奴じゃなさそうだし、待ってなよ。この先だとこっちも守れないんでね」
「……いいのですか?」
「いいも何も話は後で聞くから待っときなよ」
「は、はいっ!」
ジャネットさんの言葉で商人風の人を置いて先に進む。反応はと……十一人か。
「アスカ、囲まれそうかい?」
「いえ、半包囲陣です。行けます!」
「リュート、先制攻撃でも構わないかい?」
「構えてます。問題ありません」
「じゃあ、行くよ! 先手必勝!!」
「……! こいつら、気付いてるぞ!!」
「あいつ、バラしやがったか!」
「あんたらのやり方が稚拙なんだよ!」
ジャネットさんは私がかけたフライで一気に飛び上がる。
「風の刃よ、舞い踊れ! ストーム」
私はすぐさま前方に風の刃を放つ。渦状から広がっていった刃が周囲の木々を切り倒し、襲撃者の姿をあらわにする。これで視界は確保できた。
「リュートは右を、私たちは左から!」
「分かった!」
リュートを右から回り込ませ、私たちが盗賊を倒していく。
「舐めやがって! たかが三人に……」
「はん! 実力が違うんだよ!」
ジャネットさんが当身や軽く切りつける程度でいなしていく。私はそこにウィンドで衝撃を加え、動けなくしていく役目だ。
《ピィ》
「ぐあっ! ど、どこからだ!」
《ウ~~》
「こ、こいつ、従魔もいるぞ! でかいキャット種だ!」
「よそ見とは、甘いね!」
私たちは盗賊を次々と倒していき、数分後には制圧していた。
「さてと、縄がないことだしどっか落として動けなくさせるかね?」
「ひぃ!? ま、待ってくれ! 俺たちはまだ何も……」
「結果的にだろ? それにそれはこれから分かることだしねぇ」
半分ぐらいの人には強制的に寝てもらって、先に進む。そこには襲われたと思われる馬車があった。
「これでも何もしてないっていうのかい?」
「これは、その……」
「幌を縄にってのもめんどいからねぇ。半分はここでサヨナラしようかね」
「待ってくれ! 俺たちは殺しなんて……」
「ああっ!? あんたらは商品の仕入れや生産にどれだけ手間がかかってると思ってるんだい?」
不用意な発言をした盗賊を一人見せしめ代わりにぼこぼこにして相手の戦意を削ぎ、その後は何とかロープを確保して連れて行く。
「冒険者さんたち! 大丈夫ですか?」
「ああ、こいつらを連れて行くから後ろから見といてくれよ」
「は、はい」
「で? あんた、新人の商人?」
「いえ、実は私は御者でして。商人の方は……」
ちらりと盗賊たちに目をやる御者の人。
「ふ~ん。嘘までついてるとはね。これも町に入ったら報告だね」
何とか盗賊を引っ張りつつ港町クレイストに到着した。ただし、無用な出来事のせいで辺りは暗くなってきていたけど。
「ん? 今日の開門時間は……盗賊団か?」
「ああ。ここらでは有名なのかい?」
「最近被害が多くてな。すぐに手配する。先に代表者の身分証を」
「ちょっと待ってくださいね」
私はすぐに冒険者証を見せる。
「ん、嬢ちゃんが代表者なのか? まあいい、こっちの水晶に手を」
「はい! これでいいですか?」
「ああ、済まないな。盗賊団の仲間ではないと思っているが規則でな。この先の詰所に行ってくれ」
門番さんが門を通してくれると、すぐ横の詰所に行く。
「クロース! まだ交代じゃ……あ?」
「盗賊団だよ。全部で十一人だ」
「ふん! こいつらか。衛兵隊長を呼んで来るから、ちょっとだけ待っててくれ。おい、お前ら見張ってな」
「はっ! 副隊長殿」
責任者の人が出ていくと、盗賊たちは奥の牢に入れられ、見張りを詰めていた兵士の人がやってくれる。
「助かりました。こいつらは元ロデン村の奴らで、野党になって困っていたんです。馬車を襲っては荷物を奪うので、近々領主様に直訴しようかと思っていたんですよ」
「そうかい。そりゃよかった」
「ほら、ガルドさん。ここです」
「分かったから……あんたたちは?」
「そこのを連れて来て待ってるんだよ」
「ほう……こいつらをな。それは悪かったな。俺はここの責任者のベックスだ。よろしくな。早速で悪いが経緯を説明して欲しい」
「分かったよ。アスカ、説明を頼む」
「えっ!? 私ですか?」
「あんたがリーダー何だから当然だろ?」
「分かりました」
「ん、お前がリーダーではないのか?」
「柄じゃなくてね」
「まあいい。冒険者のやることだからな。それじゃ、頼む」
「はい」
私はベックスさんに出会った時の状況を説明する。
「なるほどな。これまでは馬車を襲っても人は逃がしていたんだが……」
事情を聴いたベックスさんは盗賊団に向き直る。
「お前ら! 商人も当然だが護衛もどこにいるか後で取り調べをするから楽しみに待ってろ」
「ひいぃ」
「じゃあ、調書を作るからもう少しだけ待っていてくれ。そういえばそっちの男は?」
「こいつは商人の格好をしているが、御者だとよ。後で話を聞いてやんな」
「分かった。報酬を用意するから明日また来てくれないか。宿が決まっているならそこに使いをやるが」
「あいにくとこいつらのお陰でまだ決まってなくてね。どこかないかい?」
「それなら、後で案内させよう」
調書を書き終えたベックスさんから宿を紹介してもらって私たちはそこへ向かった。
「はぁ~、今日は疲れましたね~」
「全くだよ。盗賊なんぞ遭いたくないんだがね」
「そうですね。僕も人相手は加減が難しくて疲れます」
「加減もある程度にしときなよ。別に悪いのは向こうなんだからね」
「次からはそうします」
リュートは相手の武器を落としてから、魔槍の反対側で突いたり、当身程度でかなり手加減していたから大変だっただろう。
「いらっしゃいませ! 遅い到着ですね」
「ああ、衛兵隊長さんからの紹介でね」
「分かりました。上の部屋がありますからそこへどうぞ。お食事は大したものは出せませんが、要りようですか?」
「頼むよ」
「分かりました。では、出来次第お呼びします」
案内されて私たちは四階にある部屋に通された。というかこの宿は大きいなぁ。
「わぁ~、広い! いいお部屋ですね」
「ありがとうございます。従魔の子たちは申し訳ありませんが食堂の利用をご遠慮ください」
「あっ、そうですよね。すみません、いること伝えてなくて」
「いえ、その程度の大きさの従魔なら問題ありません。その子たちは何を食べますか?」
「こっちの猫は私が用意します。この子は野菜くずでも貰えれば助かります」
「分かりました。では、ごゆっくり」
宿の人も出て行って、私たちはまったりとしていた。
「これはダンジョンを五階層でやめておいてよかったですね」
「まあね。だけど、下まで行ってたら盗賊には出くわしてないと思うよ?」
「そのお陰でこの辺の治安もよくなったし、いいことじゃないか。報酬も出ることだし」
「でも、近くの村の出身だって言ってましたよね。そんなに村は生活が厳しいんですか?」
「大方、次男とか三男が町に出て来て職にあぶれたんだろうさ。あぶれるのは勝手だが、ちゃんとして欲しいもんだね。ああいうのが一件起こると、周辺の村の出身者の肩身は一気に狭くなっちまうんだよ」
「あ~、そうですよね」
そんな話をしていると食事の準備が出来たと宿の人がやってきた。
「ちょっと遅い時間だったのでこれぐらいですが、おかわりも出来るので言ってくださいね」
「ありがとうございます。そういえば、お金払ってませんでしたけど、いくらですか?」
「いいですよ。衛兵隊長さんからさっき話も聞きました。この町のために動いてくださったんですって? 予定がないのであれば明日も泊まっていってください」
「いいんですか?」
「ええ。これで荷揚げが終わって王都へ行く商人さんたちも安心できますもの。町周辺の治安の悪化は私たちにとっても重要なことですから、ささやかですが御礼です」
「んじゃ、おかわりね」
「はい! 少々お待ちください」
港町らしく魚料理が並び、リュートもジャネットさんもお代わりをしていた。私はそもそもあまり食べないのでしなかったけど。
「ああ~、やっぱり港町の魚はいいねぇ」
「僕も初めてだけどお代わりしちゃいましたよ」
「二人ともよく食べてたもんね。でも、アヒージョみたいなのはなかったなぁ」
大体の料理は焼いてあってそれをつゆにつけるか、塩などがあらかじめ振られている物だった。新鮮だからそれでも美味しかったけど、今のパンだとああいうのがあると嬉しいんだけどね。
「アヒージョ? 何それ」
「えっとね。油をひたひたにした中にニンニクとか唐辛子……スタミナのつく野菜と辛めのやつを入れてそこに魚とかを入れて煮るんだよ。その油をパンにつけて食べても美味しいの!」
「へ~、面白そう! 後で宿の人に話してみようかな?」
「本当!? ちょっとの間だけでもパンが美味しく食べられるし、お願いね!」
「あ~あ、リュート知らないよ。もう食べられる気でいるよアスカは」
「が、頑張ります……」
野盗との戦いの疲れを癒すように、私たちは初めての港町での一夜を過ごしたのだった。




