食事の代償?
「お待たせしました~~。ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます」
私たちがメニューへ思いを馳せ、話をしていると食事が運ばれて来た。私のメニューは鳥炊きご飯と山菜セットの言葉通り、鶏肉に相当するお肉をお醤油や野菜と混ぜ込んで炊いたご飯に、山菜の煮浸しなどがついている。
「はい、こちらのお兄さんも」
「ありがとう。思ったより、量がありますね」
「沢山召し上がってくださいね」
出汁炊き込みご飯のオーク肉混ぜ込み飯セットを頼んだリュートのご飯は、炊き込みご飯という程、ご飯に色が付いていない。
「こちらはその器に入っている具材を、汁ごとご飯に入れて混ぜてくださいね」
「分かりました」
どうやらリュートのご飯は後から具材入りの汁を混ぜ込むタイプみたいだ。汁の入れる量で味の調節もできそう。
「お姉さんはもう少しだけ待っていてくださいね。卵に時間がかかってて」
「構わないよ。ほら、あんたたちは冷めないうちに食べな」
「は~い」
早速、私は軽くご飯を混ぜてご飯を口に含む。
「ん~~、美味しい! 更にこのお漬物を一緒に……」
私は少し濃い味の混ぜご飯にあっさりとしたお漬物を合わせることで、中和する。
「やっぱり思った通り、食べやすくなってる。これはご飯が進む~。おっと、ご飯だけじゃなくて、隣の山菜も食べないとね」
山菜も箸に取り、口に含む。
「うん! 砂糖が高いからお醤油の味がちょっと目立つけど、これはこれで美味しい。使ってある山菜の種類も豊富だし、来てよかった」
「そう? 僕も食べてみるね」
そう言うと、リュートは隣で別添の器に入っていた汁を一口味見すると、全部ご飯に入れてしまった。
「全部一気に入れても大丈夫?」
「うん。ちょっと味を見てみたけど、全部入れても食べられる濃さだったよ。さて、これを混ぜてと」
小さいしゃもじのような物も付いてきたので、一気にかき混ぜるリュート。立つ湯気からは美味しそうな匂いが立ち込めている。
「アスカも一口食べてみる?」
「いいの⁉ じゃあ、一口だけ……」
リュートの好意で一口、ご飯を箸で取る。
「おっとっと。水分が多いからかこぼすところだった」
何とか自分の器に移すと、早速食べてみる。
「ん~、味は全部入れたからかちょっと濃い目だけど、美味しいね。サラダとかがあると一気に食べられそう」
「そうだね。でも、サラダは小鉢に少しだけどね。メインがご飯で、後は汁物だね。だけど、汁物も具が入っていて食べ応えはありそうだよ」
「へ~、私の汁物は他の具材が多いから具は少なめなんだ」
そう言いながら、リュートの汁物の中に入っている具を見せてもらうと、お肉と野菜がバランスよく入っていた。健康にも良さそうな食事だなぁ。
「すみません、お待たせしました」
「おっ、あたしのもやっと来たね。ほら、アスカも人のを見てばっかりじゃなくて、食べ進めなよ」
「は~い」
「従魔の子たちはこれね。どうぞ」
《にゃ~》
《ピィ》
こうして私たちは食事を食べ始めたものの、途中でたまにジャネットさんの手が止まる。
「ジャネットさん、さっきからどうしたんですか?」
「あっ、いやね。見てみなよ、リックの奴」
何だろうと思って一人で食べているリックさんに目をやると、さっきの店員さんと話をしていた。入店の時から様子もちょっと変だったし、何かあるのかなぁ。
「全く、何の交渉をしてたんだか」
そう言うと、ジャネットさんはスプーンをザクッと何度も大きな玉子焼きに入れる。
「ああ、折角綺麗な卵焼きだったのに……」
「ん、ああ悪い、アスカも食べたかったのかい?」
「あっ、いや~、そうですね。食べたいかもです」
口は禍の元。ちらりと目に入ったリュートのポーズのお陰で口をつぐむと、何とか言葉を紡ぎ出した。
「そんじゃ、取りな。ちょうどいいサイズになったしな」
「ありがとうございます」
ひと口大のヒュージクックの卵焼きを口に含む。
「あっ、大きい卵だから味も大味かと思いましたけど、結構繊細ですね」
「だろ? この店にしてよかったよなぁ」
そんな風に話している間も、ジャネットさんはチラチラとリックさんの方を見ている。本当に何で一人で座ってるんだろ。料理を持って来た人と割とも話してるし。何て疑問は浮かびつつも、料理を食べ終える。
「アルナ、キシャル。お代わりは大丈夫?」
《ピィ》
《にゃ~》
二人とも十分だと私の方へとやってくる。私もリュートに続いて食べ終わっていた。もうすぐジャネットさんも食べ終わるんだけど、問題はリックさんだ。
「リックさん、頻繁に話しかけられていたからか、まだ食べてる途中ですね」
「はん! あんな奴は放っておいたらいいんだよ。値ももう食べ終えるから出るよ」
「あっ、はい」
確かに今日は別会計だし、お店も空いているという訳ではないので、その方がいいだろう。
「お勘定お願いします」
「は~い!」
お金を支払うと、アイコンタクトで帰ることをリックさんに伝え、お店を後にする。
「ん~、美味しかったね」
「そうだね。僕も量があって満足だったよ」
「さて、そんじゃ、宿へ帰るとするかねぇ」
「は~い」
リックさんはと聞こうと思ったけど、またもやリュートから合図が送られたので、何も言わずにそのまま皆で宿へ帰った。
「ん~、食べた食べた~」
「食べてばっかりだと太るよ。明日も出かけたらどうだい?」
「残念ですけど、細工の予定があるので無理ですね。でも、細工を頑張るのでカロリーは消費しますよ」
「ま、それならいいかねぇ」
《ビカッ》
「あっ、マイ。もう食事はできるようになったの?」
食事をし過ぎて気分が悪くなっていたマイに話しかけると、大丈夫と光って見せる。
「ん~。それじゃあ、今日はリハビリ代わりにちょっとだけね」
MPを100程あげて、今度はティタの方へと向き直る。
「ティタはこれね。私たちも豪華な食事になったし、今日は魔石だよ」
「ご主人様、ありがとうございます」
ティタはすぐに手を伸ばすと、魔石を丸呑みする。その後は子気味いい音を立てて、魔石を食べていた。
「ん~、ご飯も食べたし後はお風呂に入って寝ましょう」
「そうだね」
ここのお風呂はちょっと広いので、ジャネットさんと一緒にお風呂へ入る。
「ふ~、いいお湯ですねぇ」
「全くだね。あたしも明日はゆっくりするかねぇ」
「それが良いですよ。毎日外出してても疲れますし」
「誰かさんが無茶しないように監視もできるしね」
「明日からの二日間は普通の細工ですから大丈夫ですよ」
「そんなこと言って、アラシェル様の像を作るんだろ?」
「良く知ってますね」
なるほど、ジャネットさんは私と会っていない時も、詳しいと思ったけどリュート情報だったのか。これからはリュートにも気を付けないとな。これは学びを得たと胸に刻みつけたのだった。
「ん~、いいお湯でした」
「はいはい。それは分かったから早く拭きな」
「は~い」
お風呂を上がると、寝間着に着替えていざベッドへ。寝る前に少しだけお話ししていると、ドアがノックされた。
「誰だい?」
「俺だ。今時間いいか?」
どうやらリックさんが帰ってきたみたいだ。
「悪いけど、もうアスカもあたしも寝るところでね。明日にしてくれないか」
「……分かった」
「良いんですか?」
リックさんが去って行ったと思い、ジャネットさんに声をかける。食時中も気になってたみたいだから、いい機会だと思うのに。
「別に構わないよ。明日でも聞けるしね。それより、明日は細工をするんだろ? 早く寝ないでいいのかい?」
「もう少し起きてます」
うう~ん、私もちょっと気になっていたから一緒に話を聞きたかったのにな。そんなことを考えながらもベッドへ入る。まあ、後で聞けばいいと、気を取り直して再び会話を再開する。
「ふわぁ~」
「ほら。もう寝る時間だって身体が言ってるよ」
「しょうがないですね。それじゃあ、ジャネットさん。また明日」
「ああ、またね」
「皆は……もう寝てるか。アラシェル様、おやすみなさい」
横目でキシャルたちを確認した後、私は眠りについたのだった。




