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納品と仕入れ

「ご飯も食べたし、いざ納品へ!」


「アスカ、意気込んでるところ悪いけど、そのまま持ってくの?」


「そうだった!作り置きの木箱を出してと…」


高い方の雪の結晶とイヤリングを木箱に仕舞っていざ店へ。


「こんにちわ~」


「いらっしゃいませ…まあ、お待ちしてました。その後はどうでしょうか?」


「こんな感じなんですけど、広げられるところありますか?」


とりあえず、安いやつを出して置けるところを作ってもらう。


「えっと…奥にお願いします。店の方、任せるわね」


「はい、店長」


お姉さんに案内されて店の倉庫側に行く。


「それで、こちらが作ってもらったものかしら?」


「これは一般向けですね。大銅貨3枚位で売れませんか?」


「それだと引き取り料がかなり安くなるのだけどいいかしら?」


「はい。こっちは普及用ですから元々安価に提供するためのものなんです」


「安価に?何か意味があるのかしら?」


「こう、子どもとか働き始めた人でも簡単にお洒落できたらなって」


「分かりました。じゃあ、そういう子向けに流すわね。正直、これぐらいなら普通に売れるんだけど」


「それと、お話していた分はこっちです。これはちょっとお金かかってるのでそれなりの値段でお願いします」


私は本命のディリクシルのイヤリングと雪の結晶のネックレスを取り出す。


「あら、綺麗な木箱に入ってるのね」


「作った人もちょっと自信ありげでしたし」


「へぇ~、そうなのね…」


パカッとふたを開けるとお姉さんが固まってしまった。それからしばらく近づいたり、遠ざかったりして2つの作品を見ている。


「あ、あの、どうかしましたか?」


「い、いえ、本当にこれあなた…あなたの知り合いが?」


「そうですよ」


「うちの店でもショルバの2工房通りのそこそこの作品を仕入れることはあるけど、それよりもいい出来かもしれないわ」


「そうですか~、本人も喜ぶと思います。それでこっちのイヤリングなんですがちょっとつけてもらえますか?」


「こうかしら?」


お姉さんに付けてもらったら鏡のあるところに行き、ちょっと布で暗くする。


「ちょっとだけ魔力をイヤリングに流してみてもらってもいいですか?」


「魔力を?やってみるわね」


お姉さんが魔力を流すと、淡くイヤリングについている魔石が光る。


「こ、これは…」


「どうでしょうか?月明かりの下とかでちょっと光るときれいだと思うんですけど」


「素晴らしいわ!きっと売れるわね。いくらがいいかしら?魔道具扱いだし、金貨4枚は行けるわね…」


「あ、あの、ディリクシルの魔石ってもっと安いんじゃ。これ、小さい魔石ですし…」


「そんなことよりこの見せ方よ!この効果ならいけるわ。買取も勉強させてもらうから、ちなみにいくつあるの?」


「い、今は2つですけど…。魔石の方が手に入りにくくて」


「魔石ですね。確かにディリクシルの魔石は人気もないし、数が出回りませんね。買取価格が安いというのもありますが…」


「それにほら!細工師とはもう連絡が取れませんから、探してもらっても渡せませんし!」


「そ、そうでしたわね。まあ、この冬の間に限定という形であと4つ程頂ければ…」


「冬の間ですか…」


確か、来月の納品は済ませたし、今は町にいる。次は数日後に神殿に行くけどそこでも滞在するしなぁ。魔石さえあれば2日で出来るか…。


「まあ、会えたらでいいなら」


「では、魔石加工の失敗もあるでしょうから14個ほど確保しておきますね」


「そんなに一気に手に入るんですか?」


「ディリクシルの魔石は引き取り価格も安いので、宝石代わりにも扱いがあるんです。うちでは形にもそこそここだわってますし、取り置きもあるんです」


「細工師は居ませんよね?」


「いませんけど、値段の割に手に入りにくいので確保しているんです。チャンスを逃してやる気がなえてしまうと次の納品にも響きますから」


「次はこっちのネックレスなんですけど…」


「さっきのとは違って細かい細工ですね。苦労されたでしょう?」


「ん~、まあ、もっと細かいのとか道具から作ることを思えばそれなりですね」


多重水晶の時は専用の道具にその取扱いの習得と大変だったもんね。


「それにしてもここまで毎回細かくされるので?」


「まあ、これは毎回ちょっと形が違うかもですね。でも、作ってると楽しいので、いくつか作ります。それと実はこれ魔道具なんです。アクアバリアの魔法が入っていて、数回ですけど使えるんですよ。まあ、水の魔力が必要ですけど」


「こ、これ、魔道具になってますの?」


「一応ですけどね。そんなに強い魔法とかは防げませんよ」


「い、いえ、バリア系の魔法が込められてるって言うだけでもかなりの人気商品ですが…」


「そうなんですか?やっぱり冒険者には安全が大事なんですかね?」


「いいえ、どちらかというと貴族の方が…万が一とか政敵とかいらっしゃいますので」


「そっちですか…」


「この細工でしたら身につけていても不自然ではありませんし、こそっと身につけるのにもいい感じですね」


交渉の末、商会の名前を出さずに売ることで話をまとめておいた。こっちはなんと金貨8枚になった。ブルースライムの魔石自体が金貨2枚ということもあるけど、結構なお値段だ。時間があったらまた送ってくださいねと言われて店を後にした。


「後、行きたいところはある?」


「う~ん、特にないけど街を離れることを考えて細工用の材料とか他にも食料品をちょっと見たいかな?」


という訳で、まだ行ってなかった魔道具屋さんに来た。


「リュートはどう?」


「僕は風だけだし、どっちかというとアスカじゃない?この風の小手もあるし、正直見る物がないんだよね。見るならナイフだけど、急ぎのものでもないし…」


「私は弓と杖だから何か使い捨てのものでもあればいいんだけどね」


でも、自分の魔力と一緒の属性なら必要ないし、そうなったら水なんだけど、便利な水の汎用魔石はバカ高い。土の魔石は安いものもあるけど、防具でまかなえるから不要だ。


「後、買えると言えば…」


一応、手投げ弾みたいなものはある。ただ、MPを込めて暴走させた魔石を投げるというとんでも武器で、魔石ごとに耐えられるMPの量が違い、暴発の危険性があるというやばい代物だ。


「結局、買うとなったら魔石になるんだよね」


魔道具自体はここでも買うような物がないので魔石を見る。ん~、結構いいのが揃ってるなぁ。


「その分値段も結構するものが多いね。あっ、この氷の魔石って安い」


「何だい嬢ちゃん。珍しい氷使いかい?氷魔法が使える奴だけに使えるもんだよ。お陰でこれだけ安いんだ。ただ、繰り返し使えるから全く使えんわけでもないけどな」


金貨1枚。これぐらいなら持っておいてもよさそうだ。


「これと…ウィンドウルフの魔石ありますか?」


「ああ、王都周辺に出るからこの辺でも安いよ」


そういわれ値段を確認したけど、やっぱり値上がり傾向だ。これなら、自分たちで手に入れた方がいいかも。現地で買えるだろうしね。代わりにムルムル達のためにというかシェルレーネ教の人のためにノースコアウルフとブルースライムの魔石を購入する。


「別にまとめて買うほど珍しくないけど良いのかい?」


「はい。旅してますから、次来るとしてもずっと後なんです」


後っていうか、もう来ないかもしれないしね。悪い街じゃないけど私にとっては貴族街があるこの街はネックだ。その後、魔石を買い足して店を出た。


「こうなるとアスカに必要な魔道具って、職人さんが作るやつじゃないと駄目かもね」


「否定できないのが辛い…。ジャネットさんの剣もかなり高かったって言ってたし、まだお世話になる勇気はないかな」


中途半端な時間だったので、ちょっとその辺の店に入る。


「いらっしゃいませ!」


「何か甘味ってありますか?」


「はい。ケーキとクッキーと紅茶のセットです」


「それを…」


「僕は紅茶だけでいいよ」


「セット1つと紅茶を」


「かしこまりました」


ちょっと待つとセットとリュートの紅茶が運ばれてきた。


「ん~、いい香りだね。何て言っても普段飲まないからわからないけどね」


「でも、思ったのと違うね。カップは熱めだし、ポットで出てくるなんて」


「きっと2人分だからだね。入れてあげる」


「出来るの?」


「任せてよ!入れ方も見たことあるし」


TVのドラマだけどね。しかも、今の私には強い味方がある。ポットを上まで持ち上げて一気にカップへ。もちろん慣れてないからちょっとずれるけどそこは魔法で調整だ。


「ふふ~ん。どう?」


「今、紅茶が曲がった気がしたんだけど?」


「気のせいでしょ。ほら、飲も」


ケーキは砂糖が高いせいかやや小さめだけど、その分クッキーはちょっと大き目かな?


「そうだ!ちょっとクッキーおっきいから1枚あげるよ」


「いいの?」


「うん。それにほら、私ってそんなに食べないから夕食が入らなくなっても困るしね」


「じゃあ、貰おうかな?」


「なら、あ~ん」


「へ?」


「ほら、早く!」


「う、うん」


パクリとリュートがクッキーを食べる。


「どう?美味しい?」


「うん。でも、いきなりなんで?」


「私って昔は体が弱かったって話したでしょ?だから、友達と外でこういうこと出来なかったんだよね」


「…そっか。でも、意外かな。アスカはこういうのあんまりしないと思ってたから」


「そうでもないよ。友達と帰りに話しながら寄って、こうやって食べさせ合ったりずっとしたかったんだよ」


「なるほど。それは仕方ないね。それで感想は?」


「う~ん。ちょっと思ってたのと違ったかな?なんでだろ?」


「アスカが思ってたのって、女友達何人かじゃない?」


「よくわかったね。でも、そんなに変わらないと思うけど…」


「一応僕も男だし、二人きりでしょ?流石にそれと一緒は無理だと思うよ」


「何言ってるのリュート。それじゃあ、これってデートみたいじゃない!」


ちらっと窓に移った私たちの姿を見る。そこにはアラシェル様に似た少女と、随分前に背を抜かされたちょっと精悍になったリュートの姿が映っていた。


「喫茶店に男女2人で飲食…。ほんとだ。リュートは気づいてたの?」


「気づいてたっていうか、普通そうじゃないの?」


「そっか、そうなんだ。これってデートだったんだ…。あっ、最近どう?仕事上手く行ってる」


「何それ?仕事って冒険者で一緒でしょ」


「そ、そっか。でも、デートってどうやるのかなって。経験ないし」


「別に意識しなくていいんじゃない?自分たちなりでさ」


「そう?だったら、これはデートじゃないね。デートって待ち合せたりするものだし」


「まあ、それでもいいよ。じゃあ、次は待ち合わせしよう。といっても明日には市場に行くわけだけど」


「それだと待ち合わせいらないでしょ。同じ部屋だし」


「う~ん。だったら、次の機会に取っておくよ」


そんなちょっと不思議な間食を取って、その日を終えたのでした。



多分、店員から失せろと思われてそうな二人の会話でした。あと、お姉さんの口調は焦っているからです。

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店員「バカップルめ…!」
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