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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
巨大北方都市ラスツィア

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こぼれ話 リュートと不思議な少女

実はこの回は記憶が正しければ初のリュート回です。前作から主要キャラなのに…。でも、ノヴァも主役を務めたのは完結後なので、差はないな。


僕の名前はリュート。孤児院で育った15歳だ。今年で15歳になって孤児院を出なくちゃいけないから今は一緒に出て行くノヴァと一緒に行動している。


「リュート!そっちにゴブリン行ったぞ!」


「ちょっ!嘘でしょ」


………。


「はぁはぁはぁ。何とかなったよ」


「もっと、手際よくやれよ」


「ノヴァこそ、なんでこっちに来させたんだよ。そっちは剣でしょ?」


「切れ味が悪いんだよ。リュートのナイフは研いだばっかりだろ?」


「だからって…ああっ!?また服に穴が。まだ買ってそこまで経ってないのに」


「俺だってボロボロだぜ。大体、小さい傷が多くてそれどころじゃねぇよ」


「治癒師どころかポーションすら買えないもんね…」


ポーションは比較的安価な傷薬で、たちまち傷を治すことが出来る。だけど、それすら今の僕たちには高価で手が届かない。そんな物を買う余裕があるなら食べ物を買う方が大事なんだ。


「これじゃ、また宿なしかぁ」


「また城壁側かぁ。まさかこんな生活になるなんてね」


「そうだよな~、アール兄がいて去年の今頃はもっと楽な生活になるって言ってたのによ~」


アールというのは僕らの一個上の孤児院を出た人で、15歳ながら大人顔負けの体格をしていて、冒険者を目指した僕らの希望だった。今頃はDランク位の冒険者にでもなって、僕らに稽古をつけてくれるって話をしてたんだけど、彼は死んでしまった。仲間を逃がすためにもう一人の前衛の人と一緒に残ったんだって。そんなはずないのに…アールさんはいつか孤児院に一杯寄付してみんなを見返すって意気込んでたんだから。


「どうしたリュート?」


「本当に2人だけで大丈夫かな?」


「何とかなるだろ?大体、孤児院出のやつと誰が組んでくれるってんだよ。俺は嫌だぜ!」


ノヴァも言わないけど分かってるんだ。あの人の腕っぷしに一番期待してたのもノヴァだったもんね。それからもだましだまし武器を使って、何とか生活していた。


「あ~、全くこの前の剣は何なんだよ。買ってひと月も持たねぇでやんの。あのおっさん、ガラクタ掴ませやがったな」


「だから言ったじゃない。あんな中古買うもんじゃないって」


「でも、前のも切れなくなったししょうがないだろ?それより、東側で採取なんて大丈夫か?こっちは強い魔物もいるんだろ?」


「そうだけど、しょうがないよ。向こうは人も多いし…」


「なあ、それなら折角だしちょっと奥まで行こうぜ!」


「危ないよ!」


「危ないって言ってもどの道一緒だろ?何事も経験だって。そんじゃ行くぞ~」


「はぁ、全くノヴァってば」


行動力があるのは良いことだけど、もうちょっと考えて欲しいよ。


「そういえばエステルはどうしてるんだろ?長く会ってないなぁ」


今年、孤児院を出たのは3人だ。男が僕とノヴァで、女はエステルだけ。まともな職に就いてるといいけど…。


「ほら、置いてくぞ!」


「待ってよノヴァ。1人じゃ危ないよ」


こうして東の森にも行動範囲を広げた僕たちは、何度かそっちにも足を運ぶようになった。そして院を出て半年、僕は一つの出会いをした。


「今日はゴブリン討伐か腕が鳴るぜ~」


「そんなこと言って突っ込まないでよ」


「大丈夫だって。この前も2匹いたの倒しただろ?」


「あれは側面を突けたのが良かったんだよ」


「それにお前だって短剣に慣れて来ただろ?大丈夫だよ」


「もう~」


そう言いながらも強くなった実感もあったので少しは安心していたんだけど…。


「おい!6匹に増えるなんて聞いてないぞ」


「僕だって知らないよ。それより早く逃げるよ」


相手は弓を使う奴もいるし、さっさと距離をとらないと。


「げっ!後ろに回り込まれた」


「しょうがない。戦うよ!」


「おう!」


覚悟を決めたその時、木とともにゴブリンの体が両断された。


「とどめを!」


少女の声とともに残ったゴブリンを片付けると再び話しかけてきた。


「大丈夫ですか?」


大丈夫だと答えると少女は助けが必要だったかと尋ねてきた。礼儀正しい子みたいだ。もしかしたら貴族の冒険者かもしれない。騎士爵や低位の貴族の子どもで継承順位の低い子はその魔力を生かして、冒険者として活動することもあるって聞いた。自己紹介を済ませると、採取中だという。


「えっ、じゃあ、エステルさんと一緒の出身なの?」


「エステルを知ってんのか?あいつどこで働いてんだ。まだ、仕事見つからないって困ってたのに」


「鳥の巣って宿屋よ。私もそこで働かせてもらったりしてるの」


話を聞けばアスカはエステルと知り合いらしい。彼女が真っ当な職に就いていることも聞けて安心した。それにしてもさっきからノヴァが話している間、ちらっと見てるけど本当にかわいい子だな。何ていうか本物の貴族っていうかエステルもきれいだけど、神秘性がある感じの子だ。


「一緒に薬草探さない?」


「えっ、いいのか。お前の依頼だろ?」


しかも、助けてくれただけじゃなく依頼も一緒に受けさせてくれるみたいだ。採取はそんなにお金にならないけど、この子ともうちょっと一緒にいられるならいいかも。そう思っていたんだけど、僕らの取り方がまるでなっていないと怒られてしまった。適切に取ればもっとお金になるという。それに、全部採らないようにと定期的な収入にする方法も教えてくれる。何ていい子なんだ。


「うそ…オーガだ」


そんな感じで採取をしているとオーガに出くわした。今の僕らじゃ相手に出来ない強敵だ。


「どうしてこんなところに…」


「逃げよう」


「だけど追いつかれるかも…」


「そん時はそん時だ!」


一斉に街道沿いに走り出す。その音でオーガも気づいたみたいだけど姿までは見えていないだろう。しばらく街道沿いを逃げたものの、前に旅人の姿が見えた。流石に彼らを囮にはできない。冒険者というか、アールさんを見捨てたやつらと一緒になってしまう。


「仕方ない、魔法で…ウィンドカッター!」


アスカの魔法がオーガに当たるものの、深い傷にはならなかった。


「これ、俺たちの武器じゃ刺さんねえよな」


「気を付けて、折れるかもしれない!」


「だね。気を付けてよノヴァ」


その後、何とかアスカの魔法でオーガを倒すことには成功したんだけど…。さっき見た魔法とは段違いの威力の魔法だった。見た目通り、何かアスカには秘密があるみたいだった。こうして知り合った僕らはなし崩しというか成り行きでパーティーを組むことになった。


「それでリュートは気になる子の家にこうやって仕事をするふりしてやって来たの?」


「もうちょっと言い方があるでしょエステル!」


「だけど事実じゃない。まさかしれっとしている顔の裏でそんなことするとはね~」


「だから違うって!」


「でも、気になるんならもっと腕を磨かないといけないわよ。あの子、無茶はするしそれを無茶だと思ってないところがあるから。人を助けるのは当たり前、それで自分が危険な目に合うのはしょうがないって考えてるみたいよ」


「分かってるよ。僕らの時もそうだったし。でもまだ生活が厳しくてさ、しょうがないでしょ」


「そうね。私も運よく拾ってもらえたけど、働くのが中々難しいのよね」


「そうなの?2人ともしっかりしてると思うけど…」


「エレンは私とは年がちょっと離れてるからね。数年前までは有名だったのよ私たち。今でも青果市場のおばさんのところに行く時は緊張するもの」


「あ~、あそこはね」


「何で青果市場なの?」


「肉屋はほら、火が必要でしょ?ばれないようにするにはそのまま食べられる青果が一番なんだよ」


「結局、自分たちで首を絞めてるのよね。そりゃ、そんなことをする子供に商売させられないもの」


アスカやジャネットさんのお陰で生活も安定してきた僕は毎日、時間を見つけては修行をした。アスカについて行くために、いつか彼女を守れるぐらい強くなるために…。


「なあ、最近お前頑張ってるよな?何かあったのか?」


「どうだろうね?でも、今はとにかく頑張りたいんだ」


「そっか。だが、まだまだお前には負けね~ぞ!体は俺の方が大きいんだからな」


「僕だって負けないよ。目標が出来たからね」


こうして研さんを積んだ僕だけど、いまだに慣れないことがある。


「リュート、次はここ入って見ようよ。きっとおいしい店だと思うんだ~」


「そ、そう。なら入ろうか」


「お邪魔しま~す」


アスカは僕を兄妹か何かと思ってるみたいで、とても距離が近い。男避けとしてジャネットさんに言われて同行するようになってから特にだ。今も店に入る時は手を無意識につないできたりする。これだけでも僕は心臓がばくばくするのに。


「んで、あたしに相談されてもねぇ。うちの妹はそういうことにはバカだからねぇ~。あっ、でも嫌なら言っとくよ。『リュートがあんたとは距離を取りたい』ってな」


「やめてくださいよ」


「いいかいリュート。よく聞きな。あたしは別にアスカの相手が誰でも構わないんだ。ただね、あの子は賢いけど計算できない困った子でね。それを補うか、そういった状況にさせない奴が良いんだよ。特に生まれだね。あの子が隠してるのか知らないのかは分からないけど、普通じゃないことだけは確かさ。それを飲み込めない程度の奴には渡さないからね」


「どうしてもと言ったら?」


「しょうがないけどそん時は実力行使だね。まあ、アスカはやりたいことが見つかって旅に出たっていったら納得するだろ」


本当にありそうだから困る。アスカは夢とかロマンという言葉に弱くて、これがやりたい!ってことを応援するのが好きみたいだし、ちょっと急だけど仕方ないで済まされそうだ。


「分かったら、もっといい男になるんだね」


「具体的には?」


「まずは男扱いされるところからだね。あんた、最近も手をつないだんだって?」


「その話何処から…」


「いいから」


「まあ、はい」


「あの、男に耐性の無いアスカがほほを染めずに自分から手を握ったんだってね。ちなみにロビン相手には恥ずかしがった実績があるよ。分かったら、努力することだね。幸い、相手は村の狩人だ。滅多なことじゃ村を出るなんて出来ないだろうからこの旅の間に決めるんだよ」


「応援してくれるんですか?」


「あんたよりふさわしい相手が見つかるまではね。あ~あ、ベイリスさんがフリーならそっちをパッと紹介したんだけどなぁ」


そうぶつくさ文句を言うとジャネットさんは行ってしまった。


「僕も頑張らないと!」


そう意気込んだリュートだが、ラスツィア観光でいいようにされるとはこの時はまだ夢にも思わなかった。



何かリュートの話なのにアスカ成分少なくないですか?気のせいかなぁ…。

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― 新着の感想 ―
ジャネットさんはアスカを本当の妹、いやそれ以上に大切にしているね。 リュートへ「アスカが幸せになれる男なら応援するが、泣かせるようなクズ男ならぶっ○す!」という熱の入れようだ… 愛されてるなぁアスカ
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