のんびり細工
リュートの服を買って宿に戻ってきた。結構長くいたと思ったけど、まだちょっと昼を過ぎたぐらいだ。
「あっ、そういえばお昼はどうしようか?」
「食べてないね。宿に厨房借りられるように頼んでくる。ちょうどまだ残ってるブルーバードの肉を使った串焼きでも作るよ。それならすぐに出来るしね」
「本当! 楽しみに待ってるからね」
リュートが出て行き、私は今日の戦利品をベッドに並べる。
「今度からはリュートがこれを着て一緒に街に出かけるんだね~」
服を並べてちょっとだけその姿を想像する。
「ん~、こんな感じかな? それで私が横に立つでしょ。ん~、もうちょっと距離近いかな? って、駄目駄目なんで腕組もうとしてるの!」
服着てるところを想像するだけだったのに変な想像をしたので、すぐにそれを消し去る。
「そんなことより服はたたんでおいて、細工の用意しなくちゃね。女性服専門のお店の人にも、今日行ったお店の人にも約束しちゃったし」
まずは明日予定のオリーブの髪飾りだ。まだ、絵も描けてないので早速そっちから始める。ササッと絵を描いていると、リュートが串を持ってきた。
「下で今から食べるって言うのもあれだし、飲み物と一緒に持ってきたよ」
「ありがとうリュート。でも、厨房をよく簡単に借りられたね」
「ブルーバードの肉を処理したいっていったら簡単だったよ。もうちょっと残ってる分は明日にでもカレーを作る時に使うよ」
「それじゃ、いただきま~す」
小皿にはたれが入っているけど、まずはそのまま食べる。宿にいる時や屋台のおじさんのお店もそうだけど、結構塩のみの味付けも好きなのでまずはそのまま食べるのだ。
「どう?」
「うん。柔らかいし、皮もパリッとしてて美味しいよ!」
「よかった。それじゃ僕も……うん、うまい。そういえば、さっきまでどうしてたの?」
「細工のデザインを描いてたの。ほら、昨日約束してたでしょ?」
「ああ、あれね。でもあんまり時間ないんじゃない?」
「大丈夫。明日も特に予定もないし、魔力もばっちりだし。リュートこそ、この時間から何するの?」
「それなんだよね。こうなると僕ってあんまり趣味とかないのかも」
「ジャネットさんは武器屋巡りとか単独でも依頼受けるし、冒険者が趣味みたいなものだけど、リュートはそうでもないよね?」
「だね。でも、料理もライギルさんたちとは違って、厨房でしっかりというより野営でいかに美味しく作るかだしね」
「そうだ! 良い物があるんだ」
「良い物?」
私はごそごそとマジックバッグの中を探す。最近はほとんど出番がなかったし、奥の方だよね。
「あった!」
「これは?」
「機織り機だよ。ちょっと見ててね。こうしてこうやって布にしていくんだよ」
「へ~、ちょっとした時間とかに良さそうだね。でも、どうしてこんなの持ってるの?」
「ちょっと服を作る時に使ったんだ。でも、細工が忙しくって最近は使ってなかったの。もし暇だったら作って見ない? 作ってくれたら私も助かるし」
「助かるって作った布はアスカが使うの?」
「そうだよ。今着てるのはまだ持つけど、出来たら夏用とか後二枚ぐらいは欲しいからね」
「そ、そう。頑張ってみるよ」
何だかリュートの表情が苦笑いみたいな感じだけどどうしたんだろ?
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。別に外に来ていく服でもないから」
「えっ!? パ、パジャマとか?」
「ううん。まあ、気にしなくていいからね。さっ、細工しよう」
リュートも結構器用だから心配はいらないだろうし私は絵の続きをする。描きかけだったこともありすぐに終わらせると、早速型作りだ。まずは銅を取り出して、型を作っていく。
「んんん、葉先が難しい……」
「大丈夫? ちょっと休んだら」
「あれ? 声に出てたの。ごめんね、集中切らしちゃって」
「いいけど、ほどほどにしなよ」
「駄目だよ。今日のお姉さんも言ってたけど、質が良いって触れ込みなんだから、型は妥協しちゃダメなの。これが元になって販売用の出来に影響するんだから」
「分かったよ。飲み物のお代わり頼んでくるから飲みながらやるんだよ」
「了~解」
その後、ちょっと手間取りながらも型が完成した。
「よしっ! 一つ目は自分用に銀で作るぞ~。折角だし、お姉さんに見せるのも一緒に作ろう」
今日はMPの残りも多いので、魔道具で一気に削って、端の方の細かいところだけを通常の道具で削っていく。オリーブの実の方は数も増やせるように着脱式にしてある。
「後は色かぁ。ねぇ、リュート。これ色塗った方がいいと思う?」
「色? なくてもいいと思うけど……実際に服と合わせてみないと、僕じゃよく分からないかも」
「そっか、ちょっと待っててね。すぐに出すからね」
服を取り出して早速、合わせようとする。
「ちょ、ちょっとアスカ。こんなところで着替えなんて……」
「着替え? やだなぁ、こうやって身体に合わせるだけだよ。リュートがいるところで着替えるわけないでしょ」
「そ、そうだよね」
「で、どう?」
「やっぱり色があった方が映えるかな?」
「そう? なら頑張ってみる!」
塗料セットを取り出すと必要な色の粉を取り出して伸ばしていく。
「色味はと……ちょっと色を薄めにしておいて、まずは薄く色塗りだね」
「重ね塗りとか時間かからない?」
「そうだけど、この方が綺麗に塗れるし、ちょっとした色の違いも出せるからね。乾燥も魔法で短縮できるし」
「なるほど。そうやって手間かけてるから綺麗なんだね。出来た物は僕らも見るけど、作ってる光景は中々見ないからね」
「まあ、作ってるのは宿の部屋とか野営中だからね」
そう言っている間にも乾燥を促す熱風を送り込んで再度色を塗る。
「今日はこの二つと、昨日買った魔石付きのブレスレットに魔法を込めるだけだね。えっと、スクロールはと……」
スクロールを取り出して魔法を込めようとすると、ちらっとリュートがこっちを見てきた。
「どうしたの?」
「うん。僕も風魔法は使えるし、付与ってできるのかなって」
「どうなんだろう? 出来なくはないと思うけど、人によって付与効率が結構変わるみたい。だから、魔道具にしないのは売った方がましだからなんだ。商人ギルドの店で見たみたいに、ろくに威力の無い魔法とか込められると売る方も困るしね」
「そうか……ならやめておくよ。込めるのはバリアの魔法?」
「ん~、これだとあんまり強力なのはできそうにないから一回、エリアヒールを試してみるよ」
まあ、回復魔法は込めたとしても結構効率が落ちるらしいから微妙なんだけどね。でも、使えない人にとっては、適性のある属性であれば使用できるのはメリットなんだ。
「ヒール系か。この魔石だと何回ぐらい使えそう?」
「どうだろう? あんまり大きくないし、元々宝石扱いで使ってるだろうから三回ぐらいじゃないかな? それでも、魔道具にするだけで価値は上がるしいいんじゃないかな?」
「そうだね。で、魔道具にしてどうするの? 売っちゃう?」
「どうだろうなぁ。売るのは良いんだけど、これって私の細工じゃないでしょ? 魔道具として売るならいいかもだけど、細工として売るなら商会とか通せないし、またあのギルドの店に売りに行くのって微妙じゃない?」
「それはそうかも。魔道具にしましたって売りに行くのはね」
「という訳で、完成したらリュートにあげるね」
「何で僕に?」
「だって、売りにくいし私はエリアヒール使えるから必要ないし。そうなるとリュート以外使えないじゃない」
「そう言われるとそうだね。使う機会はないに越したことはないけど……」
「まあ、私もいるからまず使う機会はないよね。旅先で気に入った人にあげちゃうとかでもいいんじゃないかな?」
「そんな扱いでいいの?」
「いいというか。でも、使い道が薄いしね。それじゃ、付与しちゃうね」
スクロールを敷いて、その上にブレスレットを乗せる。準備が出来たら風の魔力を流していく。
「ん~、こんな感じかな? 多分できたと思う。ホルンさんがいれば鑑定してもらって、一発でどんな感じか分かるんだけどね~」
「それで、たまに用事もないのにギルドに行ってたの?」
「そうだよ。途中からはお茶も出してもらえるようになったし、割と昼間はくつろいでたかも。冒険者の人たちもあの時間はいないしね」
魔法の付与を終わらせたら、細工の塗りの確認をして次の細工の絵を描いて食事時までの時間をつぶす。
「入るよ~」
「は~い」
そうこうしているうちにジャネットさんも帰ってきた。
「ただいま~ってあんたら何してんだい?」
「何って、私は普通に細工ですけど……」
「僕はアスカに誘われて機織りを……」
「ここは産業部屋だったかな? あたしは頭が痛いよ」
そういうと、ベッドに寝転がってティタと何か話を始めた。どうしたんだろ? 外で何かあったのかな?
娘が天然でお母さんが困っていたら息子も影響され始めた。これはもうダメかもわからんね。




