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到着、北方都市ラスツィア

「ん~、良く寝たぁ~」


昨日の見張りは一番最初。日が変わるまで見張りをする代わりに、後はぐっすり眠れたので朝6時といえど疲れはない。襲撃でもあったなら別だったけどね。


「アスカ、朝ご飯できたよ」


「は~い」


いつもの通り、朝ご飯を作るリュートが最後の見張りだ。朝早くに出発する時は毎回こうなっている。みんなが起き始めるころに食事が作れるので無駄がないからね。


「今日は?」


「野菜の残りを使って昨日のオークの切れ端と一緒にスープを作ったよ。一部はサラダにしてるけどね」


見張りにも使ったテーブルと椅子を引っ張り出してきて朝食を取る。マジックバッグに空きがあったから昼に使ったものをそのまま運んできたのだ。


「なあ、アスカ。どうせあと半日で着くし、このテーブルとか町で売ったらどうだい?」


「これですか?でも、結構簡易的な作りですよ」


「でも、流木とはいえ結構立派な木だったからいいかもね。丈夫だし」


「まあ、路銀の足しになるならいっか。でも、売れなかったらどうするの?」


「宿にでも寄付すれば?別に困りはしないだろ。4人掛けだしね」


まあ、酒場も兼ねてるような宿なら別にいっか。でもそれなら…。


「アスカ、なにしてるの?」


「ニス塗ってるんだよ。テーブルの表面だけでもってね」


「乾燥は?」


「大丈夫。火魔法でやったことあるから」


さっとニスを塗るとすぐに乾燥を促す。


「よしっ!さあ、バッグに仕舞って出発だ」


「んじゃ、出発するかね。今日はひとまず北上して、川に当たったらそれに沿って東に進むよ」


「分かりました。じゃ、出発だ」


ピィ


「いく」


リュートの合図でアルナとティタも私の肩に乗って進みだす。


「昨日から思ってたんですけど、ちょっと寒くないですか?」


「まあ、この辺は冬は雪の降る地方だからね。どっかで上着を着るかい?」


「う~、そうします。街までは辛いです」


1時間ほど進んだところで休憩できそうなところを見つけたのでそこで上着を着る。といってもまだ夏なので薄手のセーターだ。


「おっ、川が見えてきたよ」


進むこと3時間、目の前には川が見えてきた。後はここから川沿いに進めばラスツィアに着く。


「そうだ、アスカ。ここからは装備も普通に見えるようにしなよ。目立つから」


「分かりました」


旅の間、杖に余りつけていなかった偽装をつける。シェルオークの木にオーク材で作ったカバーをかぶせていく。流石に杖に付けている魔石は水晶で覆っているから大丈夫だろう。


「川の方は薬草生えてそう?」


「ちょくちょくあるみたいだね。でも、探してたら着くのが遅くなっちゃうし、後でもいいよ」


昼過ぎに着くということで、お昼は町で食べる予定にしてるからね。さらに進むと視界の先に城壁らしきものが見えてきた。


「すごい…ここからでも見える」


「まあ、第2の王都ともいえる町だからね。城壁も王都並だし、2重になってるからね」


何でも平民地区や田畑などの地区と貴族街などとは別れていて、さらに小さいが囲いが城の周りにも施されているとのこと。万が一、王都に何かあった時に首都機能を移転できるためでもあるらしい。その為、この地は代々公爵家が治めていて、にぎわっているのだとか。


「でも、貴族街と平民街が分かれているなら安心ですね」


「そんなこと言っても騎士の見回りもあるし、出入りはあるよ。大体、王都より北にある領地の貴族は何人かここに派遣されてくるから、貴族の数自体も多いしね」


「うぇ~、今から憂鬱です」


「まあ、そうそう知り合ったりしないよ。それでラスツィアでは何をする気なの?」


「動植物の本が欲しいかな?寒冷地の花の本も持ってるけど本物も見たいし、色んな本が売ってそうだしね」


以前に王都で本を買ってきてもらったことがあるけど、とっても珍しい本だったんだ。第2の王都と言われるぐらいだからきっと色んな本があるはずだ。そんな話をしていると前の方から冒険者の姿が見えた。


「この辺はもう、冒険者の活動域みたいだね。なら、さっさと町に行くとするか」


前から来たということはろくに魔物とも出会わないし、薬草とかもないということだ。私たちは目立たないように街へと急いでいく。


「ティタもしばらくは喋らないでね」


コクリと頷くと、体も動かさないようにするティタ。置物に見えるのは良いんだけど、これだと私が置物を肩に下げながら動く変な少女になっちゃうんだよね。いや、ティタが目立たない方がいいのは分かってるんだけどさ。


「ここが門かぁ~、おっきいなぁ」


「そうだね。僕も王都の門を見たけど、こっちの方が大きいかもね」


「警備にかけられる人数はこっちの方が少ないからかもね。大都市といっても騎士や警備員の数は王都より少ないからね」


立派な門に並んでギルドカードを見せて町に入る。


「あれ?」


入ったらてっきり、レディトやショルバのような市があるのかと思いきや、思いっきり農村の風景だ。もちろん建物はしっかりしてるんだけどね。


「だから、居住区と生産区だって言ったろ?」


「こっちは川沿いだから畑とかなんですね」


「だけど見なよ。城壁の向こうからさらに奥に伸びてるだろ。あっちは貴族街向けの水道橋だろうね」


門をくぐってものどかな風景が続く中、私たちは店のある方へと向かっている。本当に案内板があって助かった。結構周りは畑だらけだから、目的地が分からないんだよね。


「でも、外で生産したら駄目なんですかね。魔物に襲われる危険はありますけど」


他の地方だと、そこまで城壁の中では作っていないとリュートも疑問に思ったようだ。


「ああ、これは籠城用だよ。簡単には攻め落とせないようになってるんだよ」


そんな町についての話をしながらまずは冒険者ギルドに向かう。滞在するなら依頼も受けるし、常時依頼も何か良いのがあるかもしれないしね。


「こんにちわ~」


「こんにちは。あら?若いパーティーね」


「そうですか?何かいい依頼ないですか?」


「いい依頼ねぇ…今、常設であるのはノースコアキャットかノースコアウルフの討伐ね」


「へ~、似た名前の魔物ですね。まとめて受けた方がいいんですか?」


「ああ、あなたたちはこの辺は初めてなのね。ノースコアキャットは草原や山で、ノースコアウルフは町の北東にある草原に住んでいるわ」


「同じ名前でも特徴も違うんだね」


「ええ。それに、氷魔法を使うノースコアウルフと違って、ノースコアキャットは氷魔法は使わないわ。氷好きだけどね」


「ええっ!?キャットの方は氷魔法使えないんですか?」


「そうよ。まあ、水魔法ぐらいは使うけれど。ウルフにちょっかいをかけては氷魔法を使わせて、それを食べているらしいわ」


「変わった生態ですね~。ってなんで2人ともこっちを見てるの?」


「い~や、何でも。で、どっちを受ける?」


「う~ん。受けるならまだろくに使われたことのない氷魔法を使う、ノースコアウルフですかね」


「確かに、氷魔法は人でも滅多に使えないし、その方がいいかもね」


「ちなみに依頼を受けられるならノースコアウルフの魔石は水魔法が使えれば、発動できるので魔道具としてそこそこ人気ですよ。買取は…今は金貨6枚ですね」


「分かりました。じゃあ、依頼の方はと…」


ノースコアウルフ討伐依頼…完了討伐数5匹、討伐報酬1匹銀貨5枚、素材部位は毛皮・爪・牙。珍しいな爪も対象なのか。


「へぇ~、爪も対象だなんて珍しいね」


「リュートも思った?」


「氷の上を歩いたりするせいか、爪が長い種類なんです。気を付けてくださいね。ガンドンの鎧でも劣化してるとばっさりやられることもありますから」


「ありがとうございます。早速、明日から受けてきますね。そうだ!お姉さん、料理のおいしい宿とか知りませんか?一応、この子も泊まれそうな宿だといいんですけど…」


「この子?ああ、小鳥ぐらいだったらどこでも大丈夫よ。そうね、氷雪っていう宿がいいかしら?ただ、大銅貨6枚からだからちょっと高いわよ」


「大銅貨6枚…う~ん、折角だしそれぐらいなら…」


「ま、行ってみたらいいじゃないか。食べた後で連泊するか決めればいい」


「そうですね。行ってみます」


「ええ、よろしく~」


何がよろしくなのか分からなかったけど、お姉さんに道も聞いて早速宿に向かう。


「いらっしゃいませ!お泊まりですか?」


「はい、とりあえず1泊ですが…」


「お一人、大銅貨7枚で食事つき。2人部屋なら食事付きで大銅貨6枚。4人部屋なら1部屋食事付きで銀貨2枚です」


「へ~、人数増えるとちょっと安くなるんだね」


「パーティー向けの宿ですからね。残念ながら皆さんは3名のようですが」


「大銅貨1枚の差なら大部屋にするか」


「そうですね。1人分は物置に使えますし」


「分かりました。では、4人部屋を用意しますね。シーツや布団は3名分にしておきますから。それにしても初めてでよくこの宿を選ばれましたね」


「ギルドで食事がおいしい宿って教えてもらったんですよ」


「姉さんったら、また勝手に宣伝して…」


「受付の人ってお姉さんだったんですね。言われてみればちょっと似てますね」


「別にギルド推薦の宿って訳でもないのにもう…」


「推薦じゃないんですか?」


「それにしては1泊が高いでしょう?料理は頑張ってるつもりなんだけど、食材とか高くなっちゃうからね。この前も南で流行ってるって聞いて、2人風呂っていうのを導入したから余計にね。周りの宿だと1人大銅貨4枚から5枚位ね」


そんなお姉さんの話を聞いた後、部屋に入る。


「わっ、広い」


4人部屋ということでベッドをきつきつに並べたところを想像していたんだけど、それなりに間もあるし、スペースには小さいテーブルと丸椅子がある。この宿の間取りなら、しまっておいたテーブルと椅子を広げられそうだ。早速、お姉さんにテーブルと椅子をしまってもらうようにして、部屋にテーブルと椅子を置く。


「ふぅ~、落ち着きますね~」


「ああ、結構いい宿だね。値段もそれなりだけどこれぐらいなら許せる範囲だね」


「アルバの宿だともっと狭いですからね。3人っていうことを置いてもいい作りですよ」


「それに風呂もあるんだろ?一々、探しに行かなくてもいいし楽でいい」


「後は食事ですね。どんなのが出てくるか楽しみだな~」


うきうきしながら私は食事の時間までみんなで話しをして過ごしたのだった。




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