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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
2章 次なる町ゲンガル

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依頼と魔物

「アスカどうしたの?」


「うん、多分魔物。小さいからブルーバードだと思う」


「位置も分かるかい?」


「はい。あっちの川岸です。数は…3羽ですね」


「あたし達が動くとばれそうだね。前みたいにひとりで行けるかい?」


「やってみます」


私は弓に持ち替えると矢を三本つがえる。風の魔力を付与して空から一気に狙うつもりだ。ある程度近づいたところで、ジャネットさんとリュートには撃ち漏らしの対応を任せ、私は矢に集中する。


「まずは空へ…」


ヒュン


空に向けて矢を放つ。このまま上空から一気に急降下させて狙う算段だ。


「風よ」


矢に魔力を送り、ブルーバードを狙う。でも、離れているから細かい狙いまでは付けられない。


トスッ


3羽のうち2羽には当たったものの、1羽は羽根の近くで当たってはいないようだ。


「リュート!」


「はい!」


岩陰にいたジャネットさんたちが岩に乗ってすぐさま投擲する。しかし、一足早く無傷のブルーバードが空を飛んでこっちに魔法を放って来る。


「ウィンドウォール」


相手の魔法を風の壁で防ぐ。しかし、向こうも必死で連続して攻撃してくるので反撃できない。


「リュート!」


「分かってる!」


こっちに攻撃が集中している間に、リュートたちに攻撃してもらう。標的がいつもより小さいので手間取ったけど、何とか倒すことが出来た。


「ふぅ、やっぱり小型の魔物は面倒だね」


「ですね。リュートそっちは?」


「魔石が1つだね。でも、ちょっと大き目かも」


「良かった。大きいのは街でも買うと倍ぐらいしちゃうからね」


「こっちは普通のが1つだね。後は肉か、リュートやるよ」


「はい」


結局2羽から魔石が取れたので成果は上々だ。川も近いし、直ぐに解体をしてマジックバッグに入れる。


「よし、んじゃまた出発だね」


河原をそのまま南下していくと、西側に川が見えた。


「ほんとにこっちの方が川幅広いんですね」


「みたいだね。どうする?北側か南側か」


「折角ですし、南側に行きましょう!」


合流しているのかと思いきや、別の水源があるみたいで川は繋がってはいない。でも、川幅が広いので魚とかもたくさんいそうだ。


「アルナもこれたらよかったのにね」


釣り好きのアルナのことだから張りきっただろうな。そんなことを思いながら進んでいく。


「お~い、そっちはどんな感じだ?」


「こっちも群生してますね。あんまりここまでは来てないみたいです」


「まあ、リラ草のためにここまで来ることもないのかね。見張りは任せときな」


ジャネットさんが見張りを買って出てくれたので、私とリュートが川に沿ってリラ草を摘んでいく。途中にはシュウ草も生えていたので、ついでにそちらも採取する。順調に採取していたが、やはりここまでくると魔物も見逃してくれないみたいだ。


ゴフッ


「うげっ、見つかっちゃったか」


「どうやら南にある森から来たみたいだね。すぐに迎撃するよ。最初はあたしが突っ込むから、直ぐに用意しな」


こっちに目を付けたのは2匹のゴブリンだ。でも、アルバ周辺では3匹1組だったから恐らくすぐに増援が来るだろう。私とリュートは採取をすぐに中断して、装備を整える。こっちが平地で向こうが森なので弓ではなく杖に持ち替える。こっちを見てるゴブリンはこん棒持ちが2匹だ。


「あっちも待ってくれてるみたいだし、こっちも準備はいいかい?」


「大丈夫です」


2分ほど待機すると、森の奥から増援のゴブリンがやって来た。予想通り、アーチャーやメイジなど後衛も引き連れている。


「あちらさんには悪いがさっさとやらせてもらうか」


「出口のすぐ先にウィンドウォールを張ります」


「了解。聞いたね、リュート。ヘマするんじゃないよ」


「はい!」


向こうが来るのに合わせてこっちも一気に距離をつめる。ただし、こちらは風の壁を張っているのでリュートとジャネットさんは左右に分かれて行動する。後は私が狙われた方へアシストに入るんだけど…。


「う~ん、半分ずつぐらいかぁ。もっと、目に見えて別れて欲しかったな」


そうすれば片方に支援の魔法を集中させられるから楽だったのに。これだと、双方に援護をしないといけないから細かいことが出来ない。


「ま、しょうがないよね。ウィンドカッター!」


ひとまずどちらにも援護できるように風の刃を作り出して空中に留める。こういう時に魔力操作のスキルは便利だ。リュートに聞いたら、普通は魔法を使ったらそのまま滞空させたりするのはかなり難しいとのこと。滞空させるにしてもその場で留まるのではなく、常に動かしていないと駄目らしい。


「アスカ、援護を!」


「オッケー、リュート」


そうこうしている間にもゴブリンたちは攻撃を仕掛けてきている。リュートの方はアーチャーが4体と、こん棒や剣を持ったものが5体。ジャネットさんの方はメイジが4体と槍を持ったものが5体だ。


「行くよ!風の刃よ、舞え!」


滞空させていた3本の刃をアーチャーに向かって放つ。遠距離さえどうにかしてしまえば、槍を使うリュートが近接で手間取る理由はないからだ。


ザシュ


森に隠れている2匹は足を、出ていたものは首を落とし倒す。これで、次の矢を射るまでは時間を稼いだのでもう大丈夫だろう。


「ジャネットさん、そっちは?」


「ん~。まあ、あったらうれしいかね」


そういうジャネットさんはメイジの攻撃を近接戦を挑むゴブリンを射線上に誘導することで防ぎ、優位に進めていた。


「はっ!」


スパッ


そうして、残りの近接は1匹となったところで、私はメイジを攻撃する。ゴブリンメイジは魔力が低いため直線にしか魔法を放てないので、アーチャーみたいに上手く木の裏からなんてことはできない。間に守る存在がいなければ簡単に狙えるのだ。


ザシュ


身を乗り出していた3匹を倒し、残るは近接1匹とメイジが1匹だ。


「後はこっちでやるよ」


ジャネットさんはそういうと残っていた槍を持ったゴブリンを両断し、剣を左手で持つとすぐさま右手でナイフを投擲してメイジの頭に突き刺した。


「終わりましたね」


リュートも最後のゴブリンにとどめを刺してこっちに来る。


「怪我はないかい?」


「大丈夫です。矢が1本近くを通りましたけど…」


「ん?」


よく見ると、防具の隙間からちょっとだけ血が見える。運悪く矢羽根か矢の先端がかすめたみたいだ。戦闘中ということもあり、リュートも気付かなかったみたいだ。


「ほら、ケガしてるよ。ウォームヒール」


「これぐらい、いいのに」


「ま、ゴブリンに怪我したなんて不名誉だろ。治してもらっておいて損はないよ」


いくら下位の魔物でもケガをする可能性が無いとは言えない。しかし、いくら相手が18匹もいたとはいえCランクの冒険者がゴブリンにケガを負わされるというのはあまり良いことではない。回復魔法が使えないパーティーではわざわざそのためにポーションを使うこともあるらしい。


「それにしても気付かなかったよ。良くアスカは気づいたね?」


「まあ、目線の先だったし」


腕の上の方だったけど、出会ったころは私とほとんど変わらなかったリュートは今や頭一つ分位、私より背が高い。なので気付いたのだけど、これを言葉にするのはちょっと悔しい。この世界は女性でも170cmぐらいが普通なのに私はまだ155cmぐらいなのだ。もうほとんど伸びないって言われたし、コンプレックスなんだよね。


「でも、リュートも気を付けなよ。矢傷は毒とか塗られてると後々大変だよ」


「そうですね。今後は気を付けます」


「それじゃあ、埋めちゃいましょうか」


ゴブリンが持っていた武器は捨てられたり、冒険者を倒して手に入れたものだ。錆も多いし、売れるものも少ない。剣や斧は売れるけど、それも武器としてではなく鉄を得るためだ。細工の材料としても使えないことはないんだけど、ちょっと面倒だ。結局、錆の部分とかは捨てないといけないからそこが大変なんだよね。


「武器はどうする?」


「こん棒とかは埋めて、剣ぐらいかね。弓は?」


「ダメですね。こんなの引かせたら変な癖がついちゃいます」


「まあ、見た目から期待してなかったけどそれなら一緒に埋めとくか」


武器も埋めておけば安全になるからね。錆びついた武器とはいえないよりはまし、それどころか錆が体に入って悪くなることもある。いらないけど処理は必要なんだ。


「それじゃあ、パパッとやっちゃいますね」


穴を風魔法で掘ってそこに風魔法でゴブリンと不要な武器を入れていく。リュートも手伝ってくれて直ぐに終わった。


「ふぅ~、これで終わりかな~。ん?」


「どうしたんだいアスカ?」


「来ちゃったみたいです」


「はぁ~、相手は?」


「大きいのでオーガだと思います」


「押し返してやりたいけど、そういう訳にもいかないか」


せめて、森に押し返すのが最低で、出来れば出てきた奴は倒しておきたい。そうすることで行動範囲を限定させ、近くに来る冒険者の安全が確保できるのだ。


「アスカ、数は5体で合ってる?」


「うん。どうする?入り口に行く?」


「いや、平地の方が…でも、アーチャーがいたらどうしよう」


「あいつらは好戦的だから前衛が出てくる。そうなったらアーチャーも出ざるを得ないだろう。そこを側面からリュートが叩く!いいね?」


「分かりました。それじゃあ、リュートはこっちね」


リュートを後ろに下げると、装備している土の魔道具を使って穴を掘る。リュートにはここに入ってもらって、急襲してもらうのだ。


「合図するまでそこにいてよ」


「合図は?」


「ファイアボールで!」


「分かったよ」


リュートを隠して私たちはオーガの集団に立ち向かう。向こうはゴブリンの血の匂いに引き付けられたので、真っ直ぐこっちに向かってくる。そこで私たちを見つけると、これ幸いと一気になだれ込んできた。


「はんっ!体が丈夫だからって頭を使わないとね」


ジャネットさんが余裕をもってオーガを迎える。相手はこん棒と素手と剣を持っている。前の2体は恐らく普通のオーガかウォーオーガでその後ろがオーガバトラーだろう。ゴブリンが多いのかと思いきや、これだけの上位種や亜種がいるのは初心者には危機的状況だ。


「そらっ」


ジャネットさんが1体のオーガの腕を落とし、剣使いと切り結ぶ。そこへ私が魔法で援護する。


「ウィンドカッター!」


まずは手負いの1体と切り結んでいるオーガに攻撃を加える。しかし、やはり剣を持っている方は上位種。ジャネットさんと距離を取ると、風の刃を剣で薙ぎ払う。普通の人間なら力が足りないか、切った刃が体に当たって大けがをするのだけど、皮膚の硬いオーガはその程度の刃では致命傷にならないから出来ることだ。


「アスカ!」


「はい!ウィンドウォール」


ジャネットさんからの合図ですぐに風の壁を作る。後ろに控えていたうちの1体が少なくともアーチャーの様だった。壁に阻まれものすごい威力の矢は何とか地面に落ちた。


「行くよ、リュート。ファイアボール」


リュートへの合図も兼ねて、後ろに下がったオーガに火の玉をぶつける。これもさっきと同様に切られてしまうのだけど風の刃と違って、火が顔付近に当たり視界を遮る。


「もらった!」


ザシュ


その隙を逃さず、ジャネットさんがオーガを斬り捨てる。そして、それに反応したオーガの隙をついて、リュートが穴から飛び出しアーチャーに向かっていく。魔槍を投げる手もあるのだけど、皮膚が丈夫でそこそこ動きも早いオーガには防がれる可能性もあるからだ。


「ここっ!」


アーチャーが距離を取ろうとしたところで、リュートは風魔法で一気に距離をつめて魔槍を突き出す。予想外の行動に相手はろくに反応できず、そのまま胸を貫かれる。しかし、護衛役だったもう1体のオーガがすぐに反撃に出る。


「ケノンブレス!」


すかさず、そのオーガに向けて風の魔法を放つ。かたい皮膚を貫き腹に穴をあけるとオーガは倒れた。


「ナイス、アスカ」


そういうとジャネットさんは最後のオーガにとどめを刺す。


「ようやくですね」


「これ以上襲われないようにとっとと処理しちまおう」


そうはいっても素材もあるので、埋めるのはその後だ。討伐依頼も受けていないから素材を売らないとお金にならないしね。



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