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再びゲンガルでの依頼受注

無事に夕ご飯も食べ終わった私は部屋に戻って着替える。


「今日はお風呂に行かないとね。今は食事中の人も多いだろうから早く行かないと」


ジャネットさんに教えてもらった道を通ってお風呂屋さんに着いた。


「いらっしゃい。1回銅貨7枚だよ」


「はい」


私は大銅貨1枚を渡してお釣りをもらって入る。中は簡単なロッカーが並んでいてここで着替えるみたいだ。


「あれ?アスカさん」


「えっと、ミレーさんだっけ」


「そうです!今日のお昼はありがとうございました」


「いいえ、ミレーさんもお風呂に?」


「はい!ほんとは毎日でも入りたいんですけど、そこそこかかるので週に2度来てます。体のお洗濯ですよ」


「まあ、そういう感じもあるよね」


「というより、接客するのでそれぐらいは最低でもやらないといけないんです」


そんな話をしながら2人で体を洗って湯船につかる。


「ふ~、やっぱりいいですね」


「そうですねぇ~。はふ~」


お湯はちょっとぬるいぐらいだけど、気持ちよかった。


「ほんとはもうちょっと熱い方が好みなんですけど、早い時間には来れないんですよ~」


「そうなんですね。私の住んでた街にも熱いのが好きな人いましたよ。毎回最初に入ってもらうんです。他の人が熱くて入れないので助かってました」


「これぐらい広かったですか?」


「いいえ、宿だから1人用ですよ」


「えっ!?貴族宿とかですか?」


「違いますよ。魔石を使って作ってあるので魔力を込めたらいいだけなんです。まあ、私は火魔法とか使ってましたけど」


「じゃあ、この湯も熱くできたりします?」


「多分…」


「お願いしていいですか?」


「でも、店の人に怒られますよ?」


「ちょっとだったら大丈夫です。店もぬるくなって火を焚いたりするのってお金かかりますから」


「ああ~、薪代ですね。あれ、結構するんですよね」


「ですよね~、私も宿で働いてる時に帳簿見てびっくりしました」


とりあえず、後で何か言われても厄介なので店の人に事情を説明する。


「お湯の温度を上げる?いいよ、たまに魔法使いの人がやるんだよね。助かるよ」


どうやらこの銭湯でも薪代がかかるからやり過ぎなければ歓迎されるらしい。


「それじゃあ、皆さん。ちょっと湯の温度上げますね」


他のお客さんがびっくりしないように声をかけてから魔法を使う。中央部分を空けてもらってそこにファイアボールをいくつか放り込むのだ。しばらくすると湯の温度が上がったことを確認したので今度はウィンドボールを打ち込んで、湯をかき混ぜる。


「あんた派手だねぇ」


「どうも」


「いっつもこの時間でぬるいから助かるよ」


湯の温度を上げるのはおおむね好評だったようだ。


「はわ~、そんなにすぐに出来るんですね」


「まあ、慣れてるので」


改めて湯船につかった私は数日間の疲れを落とすようにゆっくりしたのだった。


「アスカ、風呂はどうだった?」


「いいお湯でした」


「へぇ~、この時間だとぬるいと思ったけどね」


「そこは魔法で調節しました。皆さんにも好評でしたよ」


「ちっ、そっちがあったか。今度一緒に行く時は頼むよ」


「はい。次は一緒に行きましょうね」


そんな話をして眠りにつく。寝ようと思ったところで窓からアルナが帰ってきた。


ピィ


「もういいの?」


大変満足だと言わんばかりに巣箱に入るアルナ。一緒に旅に出るということで作ったちょっと小さめの巣箱だ。


「アルナは明日一緒に冒険に行く?」


ピィ


ちょっと疲れているようで、明日は留守番するというアルナ。


「それじゃ、ティタと一緒に留守番お願いね。お昼とかは宿の人に頼んでおくから。それじゃあ、おやすみなさい」


アルナに声をかけてから眠る。お風呂に入ってスッキリしたし、いい夢が見られそうだ。



---


「アスカ、朝だよ」


「ん、ん~」


ジャネットさんに起こされる。


「あれ?アルナは」


「今日は冒険に行かないからまだ寝てるよ。他人に頼ってないで自分で起きなよ」


「は~い」


よく見るとティタもお留守番だからかこっちを見るものの特に起こす気はないみたいだ。まあ、前みたいに乗っかられてもつらいからいいんだけどね。なんだか、学校へ行く子どもを見守るお母さんみたいにも見える。


「おはよう、アスカ」


「おはよう、リュート」


お互い挨拶をして食事をとる。そっか、アルナのことを頼もうかと思っていたけど、店員さんいないんだった。


「どうしよう」


「どうしたのアスカ?」


「今日はアルナもお留守番だからお昼ご飯とかお願いしたかったんだけど…」


「それなら、出かける時に言づけておくよ」


「大丈夫なの?」


「うん。厨房を使わせてもらう時に色々話したからね」


「じゃあ、お願いね」


アルナのことをリュートに任せて安心したので、残りの朝食を食べる。冒険に出る準備はできているのでリュートが帰ってくるのを待つだけだ。


「言ってきたよ」


「ありがとう。それじゃあ、出発だね」


皆でギルドに向かう。今はブルーバードの討伐依頼が残っているので、今日は砂漠ではなくて川沿いを行く予定だ。


「アスカどうだい。依頼の方は?」


「うう~ん、良いのがありませんね。ブルーバードの討伐依頼を完了させたいんですけど、その辺はゴブリンも出るみたいでその討伐依頼を受けるかこのリラ草の採取ですね」


「リラ草の採取?今更ねぇ」


「あの…出来たら受けて頂けないでしょうか?」


依頼をどうしようかと悩んでいると、ギルドの受付のお姉さんから声をかけられた。


「どういうことだい?」


「いえ、フロートの皆さんは依頼の達成が早いようでしたので余裕があればと。川沿いのリラ草は普段は低ランクの冒険者が採っていたのですが、最近けが人が多く採取自体が少ない上に逆にポーションの利用数が増えているのです」


「あ~、たまにある新人が多く出てくる時期なんだね。どうするアスカ?」


補足してくれたジャネットさんによると、ゴブリンなどの比較的相手にしやすい魔物が出る地方ではたまに新人のデビューが被る時期があるらしい。こういう時は未熟な冒険がけがをすることも多く、こういうことが起きるらしい。


「私は別に構いませんよ。どの道、今日は砂漠には行きませんし、ゆっくりできると思ってましたから。それにリラ草でも分布が分かるならありがたいです」


別にポーションを作るわけではないが、たまにアルナに飲ませている薬草入りの食事はリラ草を使用している。本人も気に入っているのでここで補充するのも一つの手だ。


「ありがとうございます!それではこちらもお願いします。一応ギルドからの要請ということで僅かですが、報酬に上乗せいたしますね」


「それじゃあ、お願いします」


お姉さんに依頼票をもらって受け付けてもらう。ついでに普段の分布を見せてもらう。


「町周辺はいつでも採れますし、ちょっと離れたところにしましょう。南にある川と西に延びている大きい川との合流地点とかどうですか?」


「その辺ありそうかい?」


「多分、これだけ水源があれば生えているかと」


「なら、そこに向かうとするか。この辺の魔物は?」


「えっと、ゴブリンとたまにオーガが出ますね。街から結構離れますので」


「了解。リュート、準備はいつも通りで良さそうだ」


「そうですね。このまま向かいましょう」


必要なものも確認したし、町を出て目的地に向かう。


「最初の採取場所は川の手前側ですね。そこからずっと南に延びてるみたいですから、私たちは川の向こう側を行きましょう」


川の西側に向かうにはそのまま濡れて渡るか、町の北側から出て西に行ってまた南に行かなくてはならない。初心者とか薬草専門に摘む人間ならあまり利用しないのではないかとの判断だ。


「流石にこの辺はぽつぽつとった跡があるね」


「そうみたいですね。僕でも見つけやすいところは軒並み取られてるみたいです」


「まあ、街から出てすぐだし、もう少し進むとするか」


そこからしばらく南に進む。河原の近くにはあまり見ないような薬草も生えているようなのでちょっとそっち側に寄る。


「アスカ何か見つけたのかい?」


「ん~、あまり見たことのない薬草っぽいのが。えっと…」


出発する時におばあさんの本屋で買った薬草教本を開く。季節性のものでも比較的多く生息するものなど、メジャーなものを網羅した本だ。挿絵もあるので初心者にも優しい構成になっている。


「シュウ草って言うらしいですね。採るのは夏ですけど、乾燥させるので薬としては秋ごろ使えるようになるからみたいです」


「ちなみに何に使えるの?」


「解熱剤だって。乾燥させるから瓶で保管も出来ると思う」


「なら、あたし達でも有用だし、一緒に採っておくか」


「そうですね」


近くに川もあるので採った後は洗ってしまう。この辺にはぽつぽつリラ草も生えているのでそっちも一緒に採る。


「アスカ、そっちはどう?」


「10本ぐらいだね。そっちは?」


「僕の方は7本ぐらい。ただ、最近在庫が少なくなってるのか多分、群生地は全部抜かれてるみたいだね」


薬草とかは通常、群生地は数本残して次の採取に回すのだけど、不足しているのか追加報酬があるからか、この辺のものは全部抜かれていた。数本ずつのところは流石に歩き回るので見逃されたか、見つけられなかったのだろう。


「この辺はまだ魔物も居なさそうだし、ちょっと蒔いとこう」


私はマジックバッグに入っているリラ草の種を取り出すと、ざっくりと蒔いて上から水をかけていく。もちろん手間なので川の水を風の魔法でかけるだけだけどね。アルバでもこうやってリラ草の育成をしていたのだ。リラ草は成長して花をつけると毒性が生まれるので、実は季節というか採るタイミングがある。なので種を取っておいて、数を増やしていたのだ。


「そろそろ出発するよ」


「は~い」


特に採れるものもないので場所を変える。しばらく進むと探知魔法に反応があった。リュートの方を見るとまだ感知していないようなので、ちょっと遠くみたいだ。

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