表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/571

砂漠と行軍

倒したデザートリザードの素材を回収する私たち。


「サンドリザードと比べて皮とかどうですか?」


「どっちかというと手触りが良くて柔らかいね。ただ、これで防具ってなると採算が合わないね。強さから言うと戦う場所も入れればCランク。でも、これだけ剣が入るんじゃ、精々Dランクの防具が精いっぱいだ。一般向けならある程度需要があるかもしれないけどね」


固い皮で知られるガンドンやサンドリザードと違って、そんなに冒険者ギルド的には不要なようだ。まあでも、買取価格は分からないし、高いかもしれないよね。肉に関してはサンドリザードよりも柔らかいし、かなり期待できそうだ。


「リュートそっちはどう?」


「僕も同じ感想かな?ただ、内臓がちょっと気になるね。砂漠には毒持ちのも居るって聞いたからあんまりその辺は持って帰らない方がいいかも」


「そっかぁ。まあ、元々あんまり内臓は人気もないししょうがないね。数も多いから全部は持って帰られないかもしれないし」


まだ、お昼前。これからも魔物の襲撃があると考えれば、今の時点でマジックバッグが一杯になるのは避けたい。なので解体するのだ。これが1日程度の町への移動ぐらいなら、そのままでもいいんだけどね。


「ふわぁ~、ちょっと座っとこう」


近くにあった小さい岩に腰掛けて休む。砂漠といっても砂だけではなくところどころにこうした岩や、植物も生えている。


ガサッ


その時、近くで物音がした。慌てて探知を使うとなんと反応がある。でも、見た目にはわからないんだけど…。


「しょうがない。ウィンドバリア」


反応がある以上は危険があるので風のバリアを張って様子を見る。


バチッ


すると足元で何か衝撃が走った。


「わっ!」


「アスカどうしたんだ?」


「足元に何かいるみたいで…ウィンド!」


風魔法を使って砂を弾き飛ばしてみる。この辺は岩もあって砂が少ないのも幸いした。その中から出てきたのはポイズンスコーピオンだった。


「ひゃ!」


「アスカ!」


とっさに解体用のナイフをリュートが投げる。ポイズンスコーピオンはそこまで大きくなく30cmほどだ。うまく頭に刺さり動きを止めたサソリにジャネットさんが近づいてとどめを刺す。


「ふぅ、アスカ。よく気づいたね。こいつは刺して来るまでなかなか気づかないんだよ」


「何か音がした気がしたので…」


「そうかい。良かったね、何事もなくて。リュート、回収してくれ」


「はい」


直ぐにリュートはサソリをマジックバッグに仕舞う。私たちはその後、ポイズンスコーピオンがどうやって移動していたかを確認していた。デザートリザードがいくら地中を移動できるといっても、数がいれば振動で分かるし、何よりサンドリザードで鍛えた感覚がある。しかし、ポイズンスコーピオンは小さく単独行動のため、その知識を身に付けようとしたのだ。


「うう~ん、地中を動いている間はこれ判りませんね」


「通って来た道もほとんど凸凹もないし、こう砂だらけの土地じゃあね」


多少盛り上がったところで、砂では見えにくいし風か吹いたらすぐに違和感もなくなってしまう。それに気づけるといっても地面に近いところを通っている時だけで、ある程度の深さにいると全く分からなかった。


「まあ、無いと思うけど野営をすることになったら絶対に見張りは要注意だね。ちょっとうとうとしていたら…なんてことになっちまうよ」


「そうですね。僕も気を付けます。アスカの作ったバリアの魔道具を使うとか考えます」


「ジャネットさんはどうします?」


「あたしは魔力も低いしどうしようもないね。精々ティタに協力してもらうぐらいかね?」


「じゃあ、ちょうど今魔道具を作ってますからそれっぽいのが出来ないか相談してみます」


「頼むよ。こりゃ、思ってたより面倒だね」


再び砂漠を私たちは慎重に進みだす。とはいえ足場もよくなく、先も見通しが良すぎて進む距離はそこそこだ。代わりに周りの地形を確認しながら南へ行ったり、東へ進んだりと足場固めを行った。ある程度進んだところで私がスケッチをして地図を作る。そんなに滞在する気はないけど、危険度の高いところはこうして地図を作って休憩とかの目安を作って行こう。


「描けました」


「よし、次だね。えっと、北西か…」


こうしてお昼も過ぎてちょっと進んでいると再び魔物の反応があった。


「アスカ、敵かい?」


「みたいです。4体で、サイズは1mちょっとですかね?リザード系とは違うみたいです」


「じゃあ…トレランスキャットだね。大した儲けにもならないし適当にあしらうか」


「倒さないんですか?」


「倒してもいいんだけどねぇ。あいつ、ポイズンスコーピオンが主食だから出来たら生かしておきたいかな?この辺が平和になる」


「それなら納得です。寄り付かないように半分ぐらいにしておきましょう」


リュートの意見でこのまま気付かれないうちに奇襲で半分だけ倒すことになった。ただし、猫系は反応が早いので弓や風の魔法で先攻は取れない。あくまで気配を消して不意打ちだ。なので私もリュートもジャネットさんもぎりぎりまで近づいて、遠距離で同時に仕掛ける。


「3,2,1,行くよ」


「はい」


「僕も続くよ」


私は5本の矢を一気に空に向けて放つ。当然、トレランスキャットたちは気づき空に一瞬注意が向く。そこをジャネットさんとリュートの投擲が狙うわけだ。


ニャウ


一応狙いは付けたけど、とどめまでもっていく必要はないので相手の反応を確認する。


「フライ!えっと、当たったのは1頭で他はかすり傷ぐらいだね。当たったのも致命傷とは程遠いしこれで逃げてくれないかなぁ」


魔物だし倒そうと思ったけど、毒サソリよりはよっぽど対応しやすいからね。ギルドにもらった依頼票にも魔力が低く魔法は使わないってあるし。


「まあ、そんな簡単にはいかないよね…」


ケガをして獲物の1体も取れないのが気に入らないのか、戦意を失わないトレランスキャットたち。しょうがないので私たちも応戦する。といっても相手は空を飛べないので主に私とリュートが空から攻撃で、ジャネットさんはそれでも近づいて来た相手に切り結ぶ。まあ、私の手数が多いお陰でまだ接近はさせてないけどね。


「これで諦めてくれるといいんだけどね」


「リュートもそう思う?だけど、このまま返すのも微妙かも。思ったより当たらないし」


「そうだね。小さい分身軽で厄介だね。なら、ちょっと狙おうかな?とどめは任せるよ」


「分かった」


そういうとリュートは懐から3本のナイフを取り出す。それを片手で2本、反対の手で1本投げつける。と、思っていたら投げた反動で追加で魔槍も投げた。これには相手も予想外のようで慌てて避ける。


「今だ!嵐よ、敵を切り刻め、ストーム」


体勢が崩れた2体に照準を合わせて範囲魔法を放つ。普段なら素材が痛むこの魔法ではとどめは刺さないんだけど、今回は相手に帰ってもらうことも必要なので、私たちが危険だと分かるようにするためだ。


スパッ スパッ


2体を巻き込み仕留めると予想通り、トレランスキャットたちは逃げ出していく。


「ふぅ、これでこの辺にはしばらく近寄らないだろうね。面倒だけど砂漠がサソリだらけになるよりはましだね」


「ですね。それにしても素早かったですね」


「本当だよ。足は取られるし、動きも早くて苦手だなぁ」


「リュートはまだいいだろ?空飛んでんだし。あたしなんてずっと下で戦ってるんだから」


ジャネットさんは1人地上で戦っていたので、一番大変だっただろうな。


「素材といっても皮と牙だよね。うわっ、皮は継ぎ当てたりしないと難しいな」


首周りだけでなく、全体に切った跡があるので買取は安そうだな。これなら買取は諦めて子ども服でも作って孤児院に寄付した方がいいかもしれない。羽織る感じにすれば4着ぐらいはできそうだ。


「どうしたのアスカ?考え事してるみたいだけど」


「うん。これだけ皮の状態が悪いなら孤児院に寄付しようかと思って」


「寄付?これをかい」


「もちろん、仕立ててからですよ」


「なるほどね。それならあたしは構わないよ。適当な素材を納品してもギルドは良い顔しないからね」


「それじゃ決まりですね。もうちょっと行ったら帰って準備しますね」


確か、入り口のちょっと奥に孤児院があったはずだ。折角だしこの町で作って渡そう。その後1時間半ほどさらに進んでから私たちは町へと戻り始めた。


「それにしても、やっぱり環境が変わると魔物も全く違いますね」


「ああ。特に毒持ちは気を付けないとね。普通の毒消しじゃ効かないのもあるから準備が大切だよ。よっと」


いきなりジャネットさんは剣を抜くと地面に突き刺す。そのまま剣をゆっくり上げるとそこにはポイズンスコーピオンが。


「はぁ、油断も隙もあったもんじゃない。折角だし、もうちょっとたまったらジェーンにでも送ってやるかな」


「ジェーンさんこういう珍しいの好きそうですもんね」


ジェーンさんはアルバで薬屋さんを開いてるんだけど、研究に余念がない。誰も取らないオーガの内臓とかも欲しがったりして、日夜新しい配合を研究している。こういう地方性のある魔物はきっと大歓迎だろう。


「毒とか危なくないですか?」


「まあ、血清を作るのにも使うしこれ系はフィアルも好きだからねぇ」


「フィアルさんがですか?意外です」


「料理と調合は似てるだろ?それに弓使いの弱点である物理に強い相手にも有効ってことで、こういうのには詳しいんだよ。薄めて自分で試すって言い出しかねないぐらいにはね」


「そういえばあの人、前に盗賊相手に麻痺毒使ってましたね」


「あれは久しぶりでちょっと強めだったから失敗したって言ってたね」


「後遺症とか大丈夫だったんですか?」


「さてね。盗賊相手だし、何か言われる筋合いもないし」


それから特に魔物と出会うことなくギルドに着いたのだった。


「依頼の確認お願いします」


「分かりました。えっと、ブルーバードは討伐数に達していないからそのままね。砂漠の方はと…結構倒したのね。けがはない?」


「大丈夫です」


「凄腕なのね。これぐらいと戦ったら普通は誰かケガをしてるものだけど…」


「運が良かったんですよ」


「じゃあ、討伐報酬は金貨1枚と銀貨2枚ね。後は町への貢献として10体以上倒したので金貨1枚ね。素材の方は?」


「デザートリザードはきれいなんですけど、残りはちょっと状態が悪くて。ブルーバードは一応大丈夫ですけど」


「ならブルーバートの羽とかが1羽で銀貨3枚。デザートリザードは…大きいから向こうでお願いね」


討伐報酬をもらった私たちは今度は解体場へ向かうためギルドを出た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ