フランシス推参
「オウギ様、本日はありがとうございます。オウギ様のお陰でこの街ホーランジアを守ることが出来ました!。」
「僕は自分にできることを精一杯にこなしただけですよ。怪我人がいなかったのはエリーのおかげだし、混乱が少なかったのはユーリのおかげだ。つまり、みんなの努力の成果ってことです。」
ノードルマン邸では魔力を使い果たしたオウギがソファに座りその左右の椅子にエリザベスとユーリが座っている。オウギの頭の上ではカノンが眠っている。カノンは上空からのブレスで危機の芽を刈り取っていた。
「そ、そんな私はほとんど何も…。アルタイル様が助太刀に来てくださらなければ…多分パニックを起こしていたと思います。」
「アルタイルさん?…それは一体…」
「アルタイル・カルスホルン様です、オウギ様。アルタイル様は現大公当主でその大槌を用いた戦いは竜巻きのようだと言われています。」
「戦いの場に当主自身が出るのですか?。…それは凄いですね。」
「それがそうではないのですよ。大公家の内3つの家は武勇によってとりたてられた家になります。カルスホルン家、バーンスターク家、そして今回反乱を起こしたハルザーク家がそれにあたります。それらの家は常に自己の研鑽に努め戦いがあれば先陣を切ってこの国の剣となることを役目としています。」
「成る程…、…あれ?でも今回のハルザークの人は…」
「えぇ、ハルザーク家は数代前からその才の煌めきが影を潜めそれに伴い影響力も低下させていきました。それが今回の事件の原因とお父様は考えています。」
「…そうですか。…あの、他の大公家の起源をお聞きしても良いですか?。」
「勿論構いません。まずは我がノードルマン家です。ノードルマン家は民を第一に考えその為なら国の縛りさえ振り解く覚悟を2対の翼に込めています。日輪を抱くライオルト家はその魔法の力を継承しこの国を照らし恵をもたらすを意味しています。力ではなく智を尊び優秀な文官を多数輩出、学びの領地とまで呼ばれるコフィン家は家紋に書物を起用しています。そしてイシュタル家の逆さの杯はどこにも与することは無く、真理を求めることを由来としています。」
「…ですがイシュタル家は真理では無く利益を求めていたみたいですけどね。」
最後に自身の母を誘拐したイシュタル家への嫌味を言ってエリザベスの大公家紹介は終わる。オウギとユーリは興味深く聞いていた。そこへ、
「お嬢様、お客様がおいでです。」
ノードルマン家に使えるエリックが来客を伝える。
「…お客様?私にですか?、それは…一体誰…」
「はーぁい、エリー!。久しぶりね。」
エリザベスの声を遮るように少女が入って来る。金髪を靡かせて現れた少女は誰にも止められることなくエリザベスの前まで歩いて来る。
「っ⁉︎フラン⁉︎。なんでここに!。…」
その姿を見たエリザベスは驚きの声を上げる。
「王家の代表で来たんだよ。でも会議の前にエリーに会いたかったから…来ちゃった。」
「そんな、来ちゃったって。…え、でも会議はもう始まってるはず。」
「大丈夫、大丈夫。要点だけ聞けば分かるって。それより、私はこの目で確認したいことがあったんだよね。…その人がノードルマンの守護者?。」
「え、えぇ、そうだけど…。」
「あの、エリー、すいませんが此方の方は…」
「あ、すいませんオウギ様。えーと…」
「ふーん、エリーって呼んでるんだ。…私の名前はフランシス。この国の第二王女よ。あなたのことを知りたいわ。」