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オウギ、約束する

 1人宿に帰ったオウギ。騒動のことは気にはなるが自分の出る幕はないと思い気持ちは早くも本日の昼食に向いていた。


「ただいま戻りましたぁ‼︎。お腹が…」

 勢いよく宿に入ったオウギだがその言葉は途中で途切れることになる。


「…ここもか。騒ぎはギルドの前だけじゃなかったんだ。」

 荒らされた宿内。抵抗した者達の血痕も飛び散っている。


「…ひょっとしてこの街全体から人を攫っているのか?。『共鳴』。」

 オウギが床に手を当て魔力を流し込む。流し込まれた魔力はオウギの手を中心に広がっていき反応を返す。


「…ん?。微かだけどこの宿から反応が…」

 反応が返ってきたところへオウギが向かうがそこには何もない。


「…(共鳴には確かに反応があった。だけどそこには何もない。…魔道具で隠れている?。いや、隠されている。この宿でそうされるべき存在は1人。)…僕だ。出ておいで。怖かったね。大丈夫、僕が君を守るから。」

 何もないはずの空間に向かってオウギが喋りかける。しかし返事はない。


「…お父さんに隠れるように言われたんだよね。」

 それでもオウギは空間に語りかけ続ける。すると空間にヒビが入る。


「うぅ……、ぐすっ、…お父さんが…おとうさんが…黒い霧みたいなのに連れていかれちゃったよぉ、おにいさん、おとうさんをたすけてぇ、」

 顔に涙を流した女の子が現れる。その手には小さな白い十字架が握られていた。


「それはお父さんに渡されたのかい?。」

 膝をつき女の子と視線を合わせオウギが尋ねる。


「…うんっ、おとうさんがこれを持ってなさいって。誰かが助けてくれるって。これを渡したらおとうさんは…自分から霧に飛び込んでいって…わたし…1人に…もうおとうさん返ってこなかったら…ぐすっ、…うわぁぁぁぁん!。」

 その時のことを思い出したのか声をあげて泣き出す女の子。


「…落ちついて。涙は止めなくていい。一杯流せばいい。」

 そんな女の子をオウギは抱き寄せ胸をかす。そして背中に手を回しゆっくり背中を叩く。一定のリズムで行われるそれは女の子を平常に導いていく。


「君はここにいて。…出来ればご飯の用意をしてて欲しいな。晩御飯までには戻ってくるよ。もちろんお父さんも、街中の人も一緒にね。約束だ。」

女の子の目を見てオウギが言う。


「…分かりました。おにいさん…頑張ってください。おとうさんを…お願いします。」


「任せて、あ、そうだ一応言っておくね…もし…」




 ーーーーーーーーーーーーーーーーー



 街から離れたある場所。ギルドマスターとコールのチームはアルクの探索の魔法によって場所を割り出していた。


「アルク、気配がするのはここか。」

 ギルドマスターが魔法使いであるアルクに尋ねる。


「…はぁはぁ、そうです。ここから沢山の人の気配がします。ちょっと待ってください。…うぐっ…んぐっ、ごくっ。」

 アルクが息を乱しながら答える。そして腰のポーチから筒を取り出しその中に入っている液体を飲み干す。


「なんだもう魔力が切れそうなのか。情けないな。」


「そんなこと言わないでくださいよ。探索の魔法は範囲を広げるだけ魔力を持っていかれるんですよ。…ふぅ、一応回復はしましたけど援護が限界ですね。」


「ふん、そこは任せておけ。久し振りに腕が鳴るわい。」

 マスターが首を回しながら言う。その肩には大きな斧が置かれていた。


「メインは儂とコールが出る。あとの3人はサポートと街の住人の保護をしておいてくれ。」


「…マスター、そんで勝率はどんぐらいだと思う?。」


「さぁな、勝率なんざ考えたことねーよ。…ただ儂ら2人の命はかけねばならんぞ。」

 勝率については考えなくても街中の人を一瞬のうちに誘拐したことは脅威だと感じていた。


「分かってる、俺もあの街は好きだ。それに元々オウギとの戦いで差し出すはずだった首だ。役立ててくれ。」


「そんか…なら覚悟を決めろよ。」


「「おう‼︎」」

 勇敢な冒険者たちは進む。例え自分達の命をかけることになろうとも。

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