災厄の正体
「…ここか。うん、人の気配がするな。…【我が身を護る聖天の守護者よ、その力を我に与えよ。『聖剣・誓約の剣】。くぅ〜重いなぁ、所詮レベル3の勇者だしな。閉まっとこ。『比類なき穴』」
洞窟の中に現れたオウギは呪文を唱える。その言葉に反応するようにオウギの右手には神々しい剣が握られてるいた。しかし移動の邪魔だと思ったのか穴にしまいこんでしまう。
「街中の人を攫ったってことは結構強いかもしれないもんな。」
オウギは気を引き締めて歩みを進める。手ぶらだが。
「この先だな。…中を見れればいいけど。」
洞窟の中で広い場所を見つけたオウギ。その中から街の人々の気配を感じとる。
「ダレダ?。ソコニイルノハ、ワカッテイルゾ。」
「あれ?バレましたか。どうも、僕はオウギといいます。そこにいる…街の人々を返してもらいにきました。」
見つかったオウギは特に気にすることもなく岩陰から姿を見せる。
「…やっぱり魔族でしたか。人間離れしてる思ってたんですよ。」
オウギの前には気絶した街の人々。そして青い肌、頭に生えた角、全長3メートルほどの人型の生物がいた。『魔族』…魔力を帯びた魔物がある時変異して生まれた存在。特徴的な青い肌を持ち、人語を理解する。また魔法を使うことが出来、目下のところ人類の最大の敵といっても良い存在であった。
「キサマヒトリカ?。ニンゲンガヒトリデナニヲデキル?。ハッハッハー!バカナオトコダ。」
「ダガソノユウキ二メンジテスグ二コロシテヤロウ。『ゲート』。」
瞬間魔族の姿が消える。
「オワリダ。」
オウギの真後ろに現れた魔族はその発達した右腕をオウギに振り下ろす。
「…ナンダ?ドコヘイッタ?。」
しかしその腕は空を切る。あたりを見渡す魔族。その目当ての男は人質達の近くにいた。
「…キサマ、テンイノマホウガツカエタノカ。ダガヒトノマホウハヨワイ。」
そう言いまた魔族は姿を消す。
「…コレデオワリダ。ツラヌイテヤル。」
オウギの上空に転移した魔族は貫手を振り下ろす。
「あの…すいません、時間の無駄なんで…消えてください。」
オウギは魔族に目も向けずに腰に手を当てる。そこに開いた穴から取り出したのは先ほどの聖剣だった。
「グギァァァァァァア‼︎。キサマ、ヨクモ…ソノケンハセイケンカッ‼︎。」
オウギの振り上げた剣で腕を縦に切られた魔族は叫び声をあげる。
「セイケンヲツカウトイウコトハオマエハユウシャカ。ナラバサシチガエテデモ…」
魔族が身を丸める。すると魔族のからだ中から棘が突き出してくる。
「うわっ、痛そうな体になったな。」
「…イクゾ…」
魔族は丸まったまま姿を消す。
「…さて、何処に…くそっ、そっちを狙うか。」
「シュダンハエラバンゾ。」
魔族が現れたのは街の人々が集められている目の前。丸まり回転しながら踏みつぶそうとする。
『ズザザザザザッ……』
「……ごふっ…。なんとか間に合った…。あ、ダメだ血が足りな…」
寸前で駆けつけたオウギ。その身を切り裂かれながらも魔族の回転を止め人々を守る。しかしその身からは力が抜け倒れてしまう。
「お、オウギ殿‼︎」
オウギを呼ぶ声が聞こえるが答える者は誰もいなかった。
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「お前達気をつけろよ。」
マスターがコール達に指示を飛ばしながら洞窟の中を進む。
「先程から魔力の波動を感じます。この感じ空間系の魔法のようです。」
魔法使いのアルクがパーティに告げる。
「転移魔法か…厄介だな。アルクなんとか出来るか?。」
コールがアルクに尋ねる。この中で一番魔法に精通しているのはアルクだった為である。
「馬鹿言うなよ、転移魔法なんて魔道士以上じゃないと使えない。」
「だよな、マスターどうしますか?。」
「…ふむ、これを使うか。」
マスターが胸元からビンを取り出す。その中には赤い液体が満たされていた。
「これは『悪戯な運命』と言って人の命と引き換えに相手の魔力をからにする魔道具じゃ。これなら魔法は封じられる。」
「なんつーもんを持ってきてるんですか。…でもまぁそれしかやりようがないですかね。なら…俺が…」
「無論儂が使う。その後のことは頼んだぞ。」
コールの言葉をマスターが遮る。
「儂ももう歳だ。これぐらいで人生はいいんだよ。」
「…マスター。…分かりました。お前ら気合を入れろよ。絶対に街の人たちを助け出してみせる。」
「マスター、コールこの先だ。」
「儂が先陣で出るぞ。」
マスターが斧を構えながら中に躍り出る。
「お、オウギ殿‼︎。」
その眼前には血にまみれたオウギと針だらけの魔族の姿があった。




