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エリザベスの護衛

「重傷の方からこちらに運んでください!。」

 ホーランジアの街の中心部。住人達を守る最深部でエリザベスの声が響く。額に汗して横たわる怪我人の治療にあたっている。そしてエリザベスに及ばないが治癒魔法の適性がある者たちも懸命に魔法を使っている。


「おい!こっちを先にしてくれ!。俺の親友なんだ!。」


「ふざけるな!。そいつは自分の足で歩けているだろ!。それにエリザベス様はノードルマン家のお方だ!。俺たちに優先権がある!。エリザベスどうかお願いします!。」

 救護所の中は怪我人で溢れていた。次々に運び込まれる怪我人達。各々が自分が重傷だと口にする。その為効率的とはとても言えない状況になっていた。


「…落ち着いてください!。必ず助けます!。落ち着いてください!。」

 荒れる兵士達を見たエリザベスは取り乱しながらも気丈に振る舞う。もしここで自分が取り乱せばこの場は崩壊する。それが分かっていた。オウギに任された以上それは避けなければならない。


「…こっちは本当に危ないんだ!。頼む、手を貸してくれ!。」


「お前!俺たちはずっと並んでいるんだ!。ふざけるなよ!。」

 しかし1人の少女でしかないエリザベスの声は戦場ではあまりに無力だった。収まらない騒乱、消え逝く命。場は終焉へと向かいかけていた。


「喧しいぞ!、お前ら‼︎。」

 その場にど迫力の声が響き渡る。低くそして驚くほど通る声質。兵士たちが息を飲むのが分かった。


「お前らは本当に兵士なのか。この状況でこそ落ち着くべきであろう。命の関わるこの状況でなぜ取り乱す。」

 現れたのは頬に傷を持つ白髪の老人だった。


「だ、誰だ!。…お前に一体何がわかる。」


「何もわからんわ!。なにせ儂は死にそうになったことはない。お前らもそうであろう。ならば!この中で最も治療に理解のある者の意見を聞くのが道理であろうが!。」

 朗々と響くその言葉に声を失う兵士たち。


「もしそれでもまだ騒ぎ立てる者がいるのなら儂の元へ来い。瀕死にしてやろうぞ。さすれば早く治療が受けれるぞ?。」

 そう言いその背に背負うふた振りの大剣に手を伸ばす。その体からプレッシャーが放たれ今の言葉が偽りではないと証明していた。


「…おい、お前こっちに来いよ。死にそうなんだろ。」


「あ、あぁ、すまない。」


「手を貸そう。おい、そいつの足を持ってやれ。」

 その老人によって落ち着きを取り戻した兵士たちは自分達の醜い行いを恥じる。そして本当に重傷な者に手を貸しエリザベスの元へ運ぶ。


「…ありがとうございます、ハイヘルム様。」

 エリザベスが白髪の男に頭を下げる。男の正体はハイヘルム・バーンスターク。ザラスと同じ大公にしてこの国の剣。


「良い良い、エリザベス嬢の言葉を聞かんかったこいつらが馬鹿なのじゃ。これで後陣も安定するじゃろ。そうすれば中陣も均衡に持ち込めるはずじゃ。カルスホルンの若造も向かっておるしの。」


「…ハイヘルム様は戦さ場に出られないのですか?。」


「出ても良かったのじゃがのぉ。今回は生命線であるこの場所を守護することにした。中陣が撃ち漏らした敵は儂が悉く斬りきざんでくれるわ。がっははは!。」


「それでは私は安心して治療に集中できますね。」


「頼んだぞエリザベス嬢。儂らは敵を屠れても見方を癒すことはできんのじゃ。」


「任せて下さい。私の手の届く範囲で誰も死なせません。聖女の名にかけて。」


「よく言った!。では儂もでる。バーンスタークの双剣の力、見せてやるわ。」

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