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護る為の力

 オウギは翔ぶ。途中で何か壁のようなものを感じたがそれも弾く。その濃縮された転移の時間の中でオウギの隣のエリザベスは寒気を感じていた。


(…オウギ様。)

 オウギかは放たれている気配、魔力。そのどれをとっても常軌を逸している。その横顔を見た瞬間からエリザベスはオウギの方を見れない。そして遂に転移が止まる気配がする。


『ビュォォォーン』

 転移で着地したオウギは辺りを見渡す。その視界にあったのは服を引き裂かれたティーシャと気絶したユーリ。その瞬間オウギは自分の中で冷めていくいくのを感じた。それは隣のエリザベスも同様である。更に重く、冷たくなったオウギの気配に声も出ない。


「…お前は…‼︎。一体どうやって!。魔道具は機能しているはずだ!。」

 オウギの姿を見たリーダーの男は叫び声をあげながらも武器を構える。


「黙れ。」

 響くオウギの声は地に響く声だった。オウギの隣ではエリザベスが、ひっ⁉︎と声をあげる。


「…っち、ボスめ、しくじったな。…だが…ここで、殺しちまおう。どうやったか知らないがこの人数をなんとか出来ると思うなよ。」

 しかし周りの男たちは気づかない。あまりにも隔絶した実力差は死を招く。その点ではオウギの魔力を感じ取れるエリザベスは実力者といえるだろう。


「黙れ…と言っている。」


「…調子に乗るなよ。お前が会談の時にやった奴は俺の部下だ!。死ね!。」

 オウギの態度に腹を立てた男達はオウギに飛びかかろうとする。


「…僕は何も望まない。…だけど奪われることは耐えられない。奪う者を許さない!。」

 オウギの魔力が跳ね上がる。


「な、なんだそれは!。…お前はどんな適性を持っている!。魔法使い?闇魔導?…はぁ、はぁ…」

 オウギから溢れる禍々しい魔力に男達はたじろぎ気勢を削がれる。


「…『形なき絶望』。」


「あ、あぁ、うあぁぁぁ‼︎、なんなんだよこれは!。答えろ!やめろ!。近づくな!。こいつらがどうなってもいいのか!。」

 男達の目には地面から這い寄る何かが見えていた。死を連想されるさせるその存在のおぞましさに男達は後ずさる。それでもリーダーの男は踏みとどまりティーシャの首にナイフを当てる。


「…オウギさん!私に構わずやって…」


「煩いぞ!このクソ女が!。」

 ティーシャの顔を殴りつける男。それによってティーシャは口から血を流し気絶してしまう。


「さ、さぁ、大人しくしろよ。さもないとこの女とガキを殺すからな。」

 それを見たオウギの魔法の動きが止まったことに効果的だと感じたリーダーはオウギに脅しをかける。彼は気付いていない。


「殺してやる。」

 目の前の男が激昂していることに。そして周りの状況が変化していることに。


「…お、お前!。それ以上近づくんじゃねぇ!。こいつがどうなっても…」


「どうなるって言うんですか?。」


「…っち、こうなるん…は…?、え、あ、おい!。俺の、俺の腕をどこへやった!。」

 オウギの態度に腹を立てた男はティーシャの首を斬ろうとする。しかしそれは叶わなかった。ナイフを持っていた腕、その前腕がなくなっていた。


「探し物はこれですか?。」

 オウギの手には男の前腕。ナイフを握ったままの状態で保持されていた。


「おま…おい!……おい!…囲め!。…おい!、…」

 その時リーダーは気付く。いつの間にか辺りの音が消えていることに。見渡すが先程までいた自分の部下達の姿は1人もなかった。


「…な⁉︎…お前!あいつらをどこにやった!。」


「どこでもいいでしょう。どうせ…運命は変わらない。」

 ゾッとするような視線を向けるオウギにリーダーの男は遂に背を向け逃走を図る。


「…っ!…くっそ、…」


「死んで下さい。」

 そんな男に追撃を加えるオウギ。地面からいくつもの腕が出て男の体を絡め取る。


「…うわ、おい、待て…そんな…」


「待ってください!オウギ様!。私は大丈夫です!。」

 遂にその手が男の首にかかった時オウギの聞きたかった声が響く。


「…ユーリ?。」


「はい、貴方の奴隷のユーリです!。私はもう大丈夫ですから…オウギ様も落ち着いて下さい。」

 実はエリザベスはこの場所に到着してすぐに遠隔でユーリに回復魔法をかけていた。そのまま結果目を覚ましたユーリがオウギに抱きつき止める。


「…うっ…、あぁ、そうか僕は…少し飲まれていたのか。…ごめん、ユーリ、エリー。もう大丈夫。」

 ユーリに抱きつかれたオウギは頭を抑えると目に光が戻り落ち着きを取り戻す。


「…『光円』。…そこで大人しくしておいてください。そうすれば…この腕はお返しします。」

 オウギの様子を見て逃げ出そうとするリーダーに光の輪を放ち拘束するオウギ。今は無闇に傷つけようとする姿勢は無くなっていた。


「あの、オウギ様、先程の人達は…」


「あぁ、それなら大丈夫です。ザラスさんのところに送っています。当然全員気絶させて拘束もしていますが。」


「…良かったです。オウギ様がどこか遠くに行ってしまう気がして。…本当に…」


「すいません、エリー。取り乱してしまって。.まだまだですね。あ、ティーシャさんを…」


「それでしたら大丈夫です。既に治療は完了しております。時期に目を覚ますと思います。」


「…良かった。…ティーシャさんかユーリを庇ってくれていたのはわかりましたから。」


「お、お前らは…誰を相手にしているか分かっているのか!。俺を捕まえたところで何の意味もないぞ!。必ず…殺されることになる!。」


「それはありません。僕がさせません。僕は大切な者を絶対に守り抜く。二度と失わないと決めたんだ。」


「その為に…こちらから出向きます。『心眼』。」

 男の頭の中を覗き込んだオウギ。カノンに行った魔法との違いはこの魔法は強制的に頭の中を覗く。更にそれ相応の痛みを伴う点である。


「…犯人は…イシュタル家当主、ロイド・イシュタル。…そしてその護衛アネッサ。」

 その結果今回の犯行の犯人を特定するオウギ。


「…エリー、七大公家と言うのは手を出していいもの何ですか?。」


「…え、あの…それは…」


「構いません。オウギさん、貴方の正義を貫いてください。ノードルマン家が貴方の後ろ盾となりましょう。」

 オウギの問いに言い澱むエリザベス。そこに目を覚ましたティーシャが強い口調で言う。今回のイシュタル家の行為は明らかに許されない行為。この国のバランスを変えてしまう可能性もあるがそれに値する凶行だと言える。


「…エリーはここまでだ。…あとは僕が話をつける。…だから、みんなで待ってて。」

 その言葉を残しオウギは敵の本丸へと翔ぶ。

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