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大公が集う街

「…大きい…。これが…」


「ええ、そうです。ノードルマン領の最大の都市、『ホーランジア』です。」

 オウギ達は馬車に揺られついにノードルマン領での首都と言える都市に辿り着いた。街を囲むようにそびえる外壁にはノードルマン家の紋章が描かれた旗がいくつも揺らめいている。民の自由と世界の平和を意味する二対の翼はノードルマン家の証である。そしてそれらの旗に混じり他の旗も見える。現在ホーランジアには7人の大公が揃っているのでそれぞれの家の紋章も飾られているのだ。


 交差する剣 バーンスカーク家

 猛る暴牛 カルスホルン家

 大空を舞う大鷲 ハルザーク家

 二対の翼 ノードルマン家

 掲げられた書物 コフィン家

 逆さ向けの盃 イシュタル家

 輝く日輪 ライオルト家


 7つの大公家の紋章が勇壮に風にたなびく。それぞれに意味を持つ大公家の紋章。それぞれが民に対してのあり方を示している。


「僭越ながらホーランジアでも滞在して頂く宿は既にこちらで押さえさせていただいております。馬車は直接そちらに向かわせていただきます。」

 モランが馬車の速度を落とし門を潜りながらオウギ達に言う。


「はい、分かりました。ユーリ、何か忘れ物がないか確認してくれるかい?。カノンそろそろ着くから起きなよ。グーちゃんはユーリを手伝ってあげてね。」

 モランの言葉を聞きオウギが指示を出す。馬車には3日間寝る時以外滞在した為私物が置いてあったので片付けさせる。そして基本的に寝ているカノンを起こし頭の上に乗せる。そうして支度をしていると馬車が止まった。


「お疲れ様でした。此方が滞在して頂く宿となります。この宿には客室が50ありますが使われているのは半数にも満たない数で御座います。部屋は一応2つお取りしておりますが…如何されますか?。」

 馬車が止まった場所の前には青い大きな宿がそびえていた。


「…そうですね、んー、…この宿に泊まっているのは…僕と同じ理由の人ってことで良いんですよね。」

 モランの質問にオウギがすこし考える素振りを見せる。


「流石察しが宜しいですな。そうです、この宿には指輪の所持者の方々が宿泊なさっております。」


「それなら1つで良いです。別々にいると来訪者があった時に困るかもしれませんから。」


「畏まりました。そのようにさせていただきます。この後なのですが…夕食はザラス様並びにエリザベス様からの招待が届いております。旅の疲れはあるでしょうが宜しければ是非にとのことでございます。」


「分かりました。その招待謹んでお受けいたします。」


「それでは夕刻5時になりましたらお迎えにあがります。それまでは旅のお疲れを癒してください。…失礼致します。」

 オウギ達に一礼してモランは馬車を走らせ立ち去る。


「…あの、オウギ様何故一部屋になされたのですか?。いや、あの嫌とかではないんですけど。」


「あぁ、それは指輪の所持者を警戒してかな。どんな人か分からないけど強い人が多いかもしれない。そういう人は我が強いからね。トラブルを避けるためにもユーリには一緒の部屋にいて欲しかったんだ。」


「そうなんですね…分かりました。」

 納得してように頷くユーリ。


「じゃ、中に入ろうか。」

 オウギ達の荷物は既に場所から部屋に運び込まれている。手ぶらで宿の中に入っていく。


「うっ⁉︎…この匂いは…」

 中に入るとすぐに食堂があったのだがそこから異臭がする。異臭といってもある飲み物、酒の匂いだった。食堂の床の上には空になった樽が転がっている。


「…オウギ様、この匂いは…」


「酒だね。それにしてもこの階中に匂いがするって…どれだけ飲んでいるんだ。」

 ユーリにその場で待っているように合図をして中の様子を伺う。


「…ぷはぁ!。美味い酒に美味い料理。これだけあれば人生は薔薇色だわ。あ、お酒お代わり!。」

 食堂にいたのは1人の女だった。その見た目はかなり衝撃的だった。色白の肌、輝く金髪、涼やかな目元、豊満な身体。こんな状況でなければ絶世の美女といっても過言ではない美貌だった。


「…ふんふんふーん。ん?何あんた…私に見惚れたの?。ごめんねぇ、お姉さん自分より弱い人とは付き合えないの!。でもでもなんでもいいのよ?。お酒でも、大食いでも、…力でも!。挑戦してみる?。今なら酔ってるから勝てるかもよ?。」


「いいえ、やめておきます。無事にはすみそうもありませんから。どちらもね。」

 女の誘いをことわるオウギ。オウギの魔導師としての智と剣聖としても力が警告していた。目の前の女は只者ではないと。


「そう?楽しそうなのになぁ。まぁいいや、それじゃあまた今度〜。」

 オウギに向かってそう言うと女はまた酒を飲み始める。オウギとユーリはノードルマン家に用意された部屋へと向かう。その後ろ姿を女が見ている事には気付かずに。


「…あれがノードルマン家の所持者か。私より…強いかも。うしし、楽しいなぁ。」

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