ザラスの執事モラン
「…この馬車は凄いですね。揺れがかなり少ない。」
「はい!わたし馬車ってお尻が痛くなっちゃうって聞いていたので心配だったんですけど…これなら大丈夫です!。」
馬車の中にいるオウギとユーリ。通常の馬車では地面の揺れを軽減する機構が付いていない為凹凸が直に伝わるがノードルマン家が用意した場所は揺れが少なく負担もない。その為カノンとグーちゃんは眠っていた。
「…いやいや、オウギ様の魔法のお陰で御座いますよ。私それなりに長く生きておりますがこれ程巧みな魔法は見たことが御座いません。」
馬の手綱を握りながらもオウギ達の会話を聞いていたモランがそのままの姿勢で会話に入ってくる。実はオウギが馬車の前に風の魔法を使い地面の砂利などを飛ばしていたのだ。勿論馬車自体の性能も高くお互いに相まってこの快適さを実現していた。
「…バレてましたか。モランさんはもしや…」
「はい、昔のことですが冒険者等をしておりました。そして大怪我を負った際に今のノードルマン家当主ザラス様に拾っていただきました。」
モランが懐かしむように言う。
「…とは言ってもそこまで強い冒険者であった訳では御座いませんので。もしも魔物が現れた際には申し訳ないのですがお二人にお願いすることになるやもしれません。是非にお願い致します。」
「…(でもこの薄さの魔力を感知できている。適性にもよるだろうけど…Aランク以下ってことはないかな。)…ん?これは…」
モランの言葉に対し疑問を抱いていたオウギだがオウギの索敵に魔物が引っかかる。それをモランに伝えようとするが、
「む!前方に魔物がいますな。…これは…トリホーンですかな?。これならば問題はございません。近くに村もあるので狩っておきましょう。」
モランが馬を止め馬車から降りる。その際馬車の車体に備え付けられていたレイピアを手に取る。
トリホーンはサイのような体に翼が生えておりBランクに相当するとされる。
「オウギ様、ユーリ様、しばらくお待ちください。道を…開けて頂きます。」
そう言い残しモランは駆けていく。その勢いは凄まじく直ぐに姿は見えなくなる。
(やはり…強い。魔力による探知か経験かは分からないけど…種類まで。それにあの武器、かなり使い込まれている。しかも魔法剣だ。)
モランが携えたレイピアは刀身に薄っすらと魔力を纏っていた。魔法剣は使用者によってその効果、規模を異する剣で使う者の力量に依存する。弱き者が使えばただの鉄の剣如何にもなり得る。
「オウギ様…お手伝いしなくても良いのでしょうか?。」
「うん?あぁ、大丈夫だよ。モランさんはAランクの冒険者より強いと思う。」
「え、えぇ‼︎。…す、凄いです!。」
『キュ?。………ポフッ…』
ユーリの叫び声に驚いたカノンが一瞬顔を上げるが何もないと判断し再び眠りにつく。
「お待たせ致しました。それでは参りましょう。もうじき日が暮れます。」
オウギとユーリが少し雑談している間にモランが馬車に戻って来る。服装には一切の乱れもなく呼吸も正常だ。何もなかったかのように馬車に乗り込み馬の手綱を握り馬車を動かす。
「今晩の夕食にはトリホーンの肉を使った料理がだせますよ。期待して下さい。」
モランがオウギとユーリに成果について話す。既に討伐したトリホーンは解体を済ませ荷台の部分に収納していた。
「…ジュル…はっ!。」
モランの言葉を聞きユーリがよだれをこぼす。トリホーンは体の部位によって油量、食感が変わる高級食材である。
「ははっ、そのような様子を見せられると腕がなりますな。」
オウギ達を乗せた馬車は街道をひた走る。




