想いのこもった服
次回更新はお休みさせていただきます。
次の更新は7月22日になります。
マチリアの街を去る日がきた。エリックに伝えられていた場所に向かうと豪華な装飾を施した馬車が待機していた。
「オウギ様、ユーリ様、カノン様、グーちゃん様で御座いますね。私ザラス様より皆様をお連れするように仰せつかっております御者のモランと言います。これより3日の間よろしくお願い致します。」
オウギ達に恭しく頭を下げるのは壮年の男性だった。短い白髪、深い緑の眼、整った姿勢。どこを取っても完璧と言える執事であった。
「あ、はい、モランさんお願いします。」
モランがグーちゃんにも様を付けたことに驚きながらも流石一流は違うな感心するオウギ。
「うわーぁ、凄い大っきな馬車です。お馬さんは大丈夫なんでしょうか?。」
馬車を見ていたユーリがそれを引く馬の方へ視線を向けながら言う。
「はい、馬が付けているのは魔道具でして疲労回復と持久力増加の効果が付与されております。また、行程も日中だけの移動となりますので馬への負担は最小限にとどめていると自負しております。」
「そうなんですね!良かったです。…この街でちょっと体重が増えちゃったのでお馬さんが心配でした。…よろしくお願いしますです。」
ユーリが馬を撫でながら言う。馬もユーリに撫でられて気持ちいいのか嘶く。
「それでは準備がよろしいようでしたら…」
「あ‼︎いた!。ちょっと待ってくれぇ‼︎。」
出発を告げようとするモランの声を遮る叫び声が響く。
「…はぁ…はぁ…何とか…間に合った…。」
膝に手を当て大きく息をするのはクリーナであった。背中にリュックを背負っている。
「クリーナさん?.どうかなさったんですか?。まさかまた何か…」
「いやいや違うって。…これ…、オウギさんの為に作ったんだ。…貰ってくれるか?。」
オウギの言葉を否定した後クリーナが背中のリュックから物を取り出す。それは服だった。普段着として使え尚且つピンポイントで魅力的な刺繍がされている。全体的な雰囲気が考えられた逸品だった。そしてそれは今までのクリーナ作品とは明確に一線を画す品だった。
「あのさ…これ…初めて着る人のことを想って作ったんだ。オウギさんが着てるところとか考えて…さ。…えへへ、なんか恥ずかしいな。」
今までは作品には向き合っていたがそれを着るのが誰であろうと関係なかった。でもこの服は違う。オウギの為だけに、オウギ体に合うように仕立てた一点物。
「あ、も、勿論ユーリの分もあるよ!。はい!。」
照れた表情を浮かべた後慌てたユーリの分の服も渡すクリーナ。
「わぁ!、ありがとうございます!。大事にしますね。」
「クリーナさん、ありがとうございます。…これ…って…」
「うん、なんかさこの子達が力を貸してくれたんだ。復元の機能がついてるって。切れちゃたりしても魔力を流せば元に戻るんだって!。だから…大事になんて言わないで一杯着て欲しい。」
クリーナの肩や頭の上に座る精霊達がオウギ達に手を振っている。彼らの力が込められたこの服は特殊な糸で出来ており魔力で修復が効く。
「…絶対に追いかけるから!。…それじゃ!。」
最後に大きな声でそう言うとクリーナは走り去って行く。
「若いですな。…今や羨ましくもありますな。」
モランが顎を撫でつけながら呟いた。




