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信じていたもの

(…成る程…確かに人攫いだ。だけど…これは…まさか。…だめだ、確実にあの人はその場にいる。…どちらの立場かだな。クリーナさんには辛いことになるかもしれない。)

 クリーナの後を追いながらオウギは魔術によって気配を探っていた。その結果確かに子供と思わしき気配とそれを囲むように立ち並ぶ悪意を持った大人の気配。そして覚えのある人物の気配もそこにあった。しかしその場にいる理由はまだこの段階では判明していない。


「…なぁ、オウギさん。ガードルはどうしたんだ?。確か…一緒にいたよな。」


「…彼とはスラムを出た時に別れました。その後は…」

 そこで言葉に詰まるオウギ。それは今まさにオウギが危惧している内容に関わることだったからである。


「そうか…そこにいるのか。精霊が教えてくれた、オウギさんが魔法を使って探ってるって。…ガードルは…どっちなんだ?。その場に居合わせただけか?それとも…」


「この場では判断出来ません。僕達に出来ることは一刻も早くその場に辿り着くこと。そして…どうであれ現実から目を背けないこと。」


「…あぁ、そうだな。」

 クリーナも心の中では分かっている。オウギと別れたガードルが偶々人攫いと一緒にいる。そんな可能性は限りなく少ないと。それでも自分に生きる術を与えてくれた人を信じたい一心でクリーナは速度を上げたのだった。






「…いた!そこを曲がった所に人がいる。」

 走りながらクリーナが言う。無意識だろうが精霊の力を借りていて呼吸は乱れておらずかなりの速度で走ってきた。


「…ユーリ、武器を出しておいて。そして…害意を感じたら迷いなくその刃を振るいなさい。例えそれが人でもね。」


「…分かりました。」

 オウギの言葉に頷くとユーリは剣を抜きいつでも振るえるように持つ。場合によってはその刃で人を殺すことになる。それでも自分の大切な人を守る為に覚悟を決める。


「…いくぞ、…お前ら止まれ!。そしてその子達から手を離せ!。」

 クリーナが飛び出していく。その前には十数人の子供達とそれを囲むようにいる大人。そして…ガードルがいた。


「…クリーナ。…どうしてここに?。」


「それはこっちのセリフだ。あんたは…そこで何をしている!。」


「…おいおい、何を言ってる俺は今この場に居合わせただけだ。お前が大事にしているこいつらが攫われそうになっていたからな。待ってろ俺がこいつらを…」


「…何でそんな嘘をつくんだ?。…今この場に居合わせた?。違うだろ!ずっとここにいたじゃねーか!。」


「…お前にそんなことが…」


「オウギさんが教えてくれたんだ。」


「…そんな会ったばかりの奴を信じるのか?。俺とお前の仲じゃねーか。今まで色々あったじゃねーか。」

 ガードルがクリーナに諭すように言う。


「…こいつらを、精霊を介して見ると良くわかる。ガードルあんたの言葉には重みがない。薄っぺらい紙切れみたいだ。私はそれを…信じることは…出来ない。」


「…はっ!、…それが精霊術師の力か。余計なもんに目覚めやがって。テメェが作る服の金欲しさに…余計なことをしちまったか。」

 ガードルの口調が変わる。それと同時に纏う雰囲気も変わり周りを威圧するような空気を醸し出す。


「…おい、お前ら!作業を続けな。この餓鬼どもを袋詰めしてろ。俺はこいつを…殺すとしよう。あーあ、折角の金づるだったのにな。」


「…何であの時私を救ってくれたんだよ!。」


「あんなの偶々だ。冒険者ギルドを規約違反で出禁になってどう稼ぐが悩んでた。そこで思いついたんだよ。スラムの餓鬼どもを売っちまえばいいってな。そんでうろついてたらお前を会っただけ。」


「そしてお前のセンスを見て、周りの餓鬼共を捨てれない甘さを見て思ったよ。こいつに周りの餓鬼どもの世話をさせればいい。その方が少しでも高く売れる餓鬼になるからな。」


「…さてもうおしゃべりはいいだろ。お前を殺して俺は一介の商人に戻るとしよう。扱うのは…クソ餓鬼だけどな。はっはっはっ!。」

 最後に大きく笑うとガードルは腰につけて剣を抜きクリーナに向ける。


「…なんだよ、ちくしょう…。…信じたかったのに!…待ってろ今助けてやる。私の…家族に手を出すな!。」

 クリーナが叫び声をあげると色取り取りの精霊が飛び立ち子供達を袋に入れている人攫いに襲いかかる。ある者は燃え、ある者は凍り、ある者は風に切り裂かれる。


「…ガードル!。私はお前を許さない。…殺してやる。」


「はんっ、元Bランクの冒険者を甘く見るなよ!、クソ餓鬼が。」


「そこまでです。クリーナさん、怒りに身を任せてはいけない。精霊を見てください。…辛そうだ。」


「ここからは僕とユーリがやります。」


「おいおい兄ちゃん、そいつは無理だ。確かに少しは腕利きかもしれんが…こいつでどうだ?。」

 ガードルが合図をすると周囲の道を塞ぐように男達が現れる。荒事を生業とする者の雰囲気を漂わせている。


「こいつらは全員がBランクに相当する実力だ。いくら兄ちゃんでも無理だろ。分かったら…大人しく殺されてくれや。」


「…『猛き自然の猛威を我が眼前に立つ許し難き者共へ。我の体を伝いで罰を執行せよ。』『雷神の撃鉄』。」

 オウギが右手を前に掲げ詠唱する。


『バリバリバリ‼︎』

 オウギの右手から白い光が放たれそれは周囲にいる男達を悉く撃ち倒す。


「僕は今怒っています。それ以上は口を開かないでください。」


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