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最強の遺伝子を継ぐ者

「キュアァァァァ…」

 一声鳴くと龍の子供は殻に齧り付く。


『バリ…バリリ…』

 小さな口で懸命に齧り付く子龍。しかしまだ体を動かすのに慣れていないのかバランスを崩してコロッと転んでしまう。


「「…っ…!。」」

 その姿を見たユーリとエリザベスは身悶える。


「あ、これ…」

 ユーリが飛び散る卵の欠片を子龍の口元に運ぶ。


「…パクっ!。」

 差し出された欠片をユーリの指ごと口に入れる子龍。そのままユーリの指に吸い付く。


「お、オオオオオオオ、オウギ様!。食べました、食べましたよ!。」

 嬉しさを爆発させたユーリ。


「エリック、私も、私もあれやりたいわ。」

 エリックの服を掴みながらエリザベスが言う。


「お嬢様、殻を口元運べば食べてくれますよ。そっとお願いしますよ。」

 欠片をエリザベスの手に置きエリックが言う。


「…ごくっ。分かったわ。そぉーと、えいっ!。…きゃあぁぁぁぁぁ!。可愛い。」

 そっと手を差し出したエリザベスの掌にある欠片を舐めるように子龍が食べる。その瞬間エリザベスは歓喜の叫び声をあげる。そして隣にいたユーリと万歳をし合う。


「…わーい!…あぁ!す、すいません!、エリザベス様。」

 喜びの中で自分の前にいる少女の身分を思い出したユーリ。慌てた頭を下げようとする。


「いいのですよ、ユーリ。あの…私、貴女と友達になりたいの。」

 そんなユーリのユーリの下げようとする頭を胸に抱きエリザベスが言う。


「.え、と、友達ですか?。わ、私は…」

 エリザベスからの突然の申し出にあたふたするユーリ。オウギの方へ視線を向けるがオウギは微笑むだけである。


「…私もエリザベス様と仲良くしたいでふ。」

 意気込んで答えるユーリだが最後に噛んでしまい顔を赤く染める。


「良かったねユーリ。…さてと、エリックさん、この子どうすればいいですか?。」


「そうですね。私の知る限り前例が極端に少ないのです。龍種の子供…普通の魔物の場合は国の機関に登録という形になります。そしてその魔物が被害を出した際は使用者の責任となります。」


「…少ないということはゼロではないんですか?。」


「あることにあります。…ですがそれはレッドドラゴンやアースドラゴンといった龍種の中では比較的弱い龍です。と言ってもBランクの冒険者でも相手にならない程の強さはありますが。」


「成る程…。うーん、どうしようかなぁ。取り敢えず登録は…しとくか。えーと…まって。この子の種類わかんない。」

 今更ながらオウギが気づく。


「失礼ですがオウギ様はこの子をどこで手に入れたのですか?。」

 エリザベスが子龍を抱っこしながらオウギに尋ねる。ちなみに横にいるユーリは頭を撫でている。


「えーと、なんかでっかい龍に渡されたんですよね。黒くて、トゲトゲしてたんですけど…名前は…えーと…」

 懸命に思い出そうとするオウギ。思い出そうとしているのは魔王との会話。そこで魔王が何かを言っていた気がする。


「…ガルガンディア…、」

 オウギが記憶から絞り出し発した言葉。


「!。ガルガンディア⁉︎。…エリック!。」


「はい、ガルガンディアは七頭の龍王の一体で『黒雷の龍星』と呼ばれています。」

 その言葉に反応したのはエリザベスとエリック。語られるのはガルガンディアが龍王であるという事実。


「へぇ、あの龍、龍王だったんだ。それじゃあこの子も有望ですね。」


「えーと、オウギ様。その…有望とかそういうレベルの話ではないと思います。」

 ユーリが控えめに言う。龍王の存在は田舎に住むユーリですら知っている。逆らってはならない。人の介入できない領域の生物。


「…オウギ様。どうかこの事は内密に願います。この子の事は私が責任を持って処理します。エリック。」


「はい、そうですね。この色ですとスノードラゴンの幼生体ということで登録出来るとは思います。」


「そうですか。それじゃあお願いします。あとは…名前を決めた方がいいか。」


「…っていうか名前ってつけてもいいんですか?。偉い龍だったら自分の名前持ってたりするんじゃ。」


「龍王クラスになりますと…知恵を持ち名を持ちます。あくまで言い伝えですが龍に仕える適性があるらしくその者が名を伝えたとされています。」


「んー、呼び名がなかったらやり辛いしなぁ。龍だから…リュウちゃんとか…」


「カパッ…。…キュア!。」


『パリパリッ‼︎』

 オウギの発言を聞いた子龍が口を開けそこから電撃を放つ。


「うおっ⁉︎。危ない。…気に入らなかったのかな。」

 魔法で相殺したオウギ。しかしその表情には焦りが見える。


「……じーーーーー。」

 オウギから目線を離さない子龍。この中で名前の決定権を持つのが誰かを理解していたのだ。そしてプレッシャーをかける。


「待って待ってそんなに見ないで。えーと、考えてるから…!。」


「…えー、君の名前は…『カノン』。僕に生きる意味を教えてくれた人の名前アノンと雷のカを取ってカノンで…どうかな。」


「…じーー。キュアア!。」

 オウギの言葉を聞いていた子龍は良きに計らえと言わんばかりに頷く。こうして子龍カノンがオウギの仲間になった。

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