生まれる命
「あわわわわっ⁉︎お、オウギ様!。動いてます。動いてますよ!。」
動きの激しさを増した球体。ユーリが目に見えて取り乱す。
「落ち着いてユーリ。兎も角早く街に戻ろう。ここでは何も出来ない。『ゲート』。」
オウギが転移の為のゲートを開く。
「…え⁉︎これは…転移魔法ですか!。オウギ様は転移魔法までも使えるのですか!。」
「これでも賢者も持ってるからね。それよりユーリ、それを持って。」
「はい。これって…卵なんですかね?。リュウさんという方はなぜこれをオウギ様に?。」
未だ龍王のことをリュウさんと言う人だと勘違いしているユーリ。
「ん?リュウさん?。」
「え、リュウさん…。」
「…待ってユーリ。あのね、これを貰ったのは龍なんだ。わかる?あの空を飛んでる。」
「…ふぇ?。リュウさんではなく…龍?。…きゅうっ…」
「ユーリ!」
全てを理解し倒れるユーリ。自分が磨いたり、こっそり湯たんぽの代わりにしていたのが最強種である龍種の物、更には卵の可能性が高いことに耐えられなかったのだ。
「…んー、気絶してるだけか。なら、先に街に帰ろ。」
オウギがユーリと卵を抱き抱えゲートをくぐる。潜った先は滞在している宿の部屋であった。
「…僕じゃ詳しいことは分からない。誰か詳しそうな人を探さないと。」
ユーリをベットに寝かせたオウギは助けを呼びに部屋の外に出ていくのだった。
「ユーリー、起きてる?。」
ドアを開けオウギが入ってくる。後ろには森で別れたエリザベスとエリックもいた。結局の所オウギが知る中で1番知識がありそうなのはこの2人だったのだ。勿論自分達より先に街に着いていたことに驚かれはしたがエリザベスはオウギのことを崇拝しているしエリックはオウギの力に薄々感づいている。混乱はなく帯同することになった。
「あ、はい!オウギ様。え、エリザベス様!。わ、私こんな格好ですいません!。」
ベットに寝ていたユーリはエリザベスの姿を確認した途端慌てて起き上がる。
「大丈夫ですよ。慌てなくて。…それがオウギ様がお話になられていた物ですか。」
慌てるユーリを落ち着かせながらエリザベスが球体に触れる。
「これは…僅かですが魔力を吸われています。間違い無く生物の卵。恐らくオウギ様の推察通り…」
触れた瞬間から魔力を吸われている感覚を覚えたエリザベス。
「…っエリザベス様!ひびが!。」
エリックが卵にひびが入ったのに気付きエリザベスを遠ざける。竜種は生態が解明されていない。しかし生体は災厄を撒き散らすものだ。危険を回避させようとするのは当然であった。
「ユーリ、念の為に離れていて。」
オウギもユーリを庇うように立つ。
『ビキッ…ビキピキ…パララ…』
入った亀裂から順次殻が剥がれ落ちていく。
「「…可愛い。」」
出て来た物を見た瞬間エリザベスとユーリが揃って声を出す。
『キュアァァ…』
どうやって入ってたの?と訪ねたくなる子犬程の大きさ。あなたの親は真っ黒だったよ、と言いたくなる真っ白な体。しかし外殻には棘が無く所々模様のようなものが入っている。鋭さは全くなく垂れた瞳。純粋な瞳は全てを飲み込むかのような深い蒼色。
「お、オウギ様!。抱っこ、抱っこしても良いですか!。」
「エリック、産まれたばかりの生物は触れてもいいの?、食べ物を用意しないと。」
更に盛り上がる女性陣。ユーリとエリザベスは産まれたばかりの龍の前でワタワタしている。
「…本来龍種は災厄を撒き散らす存在なのですが…これは、」
「愛らしさを撒き散らしていますね。」
次回更新はお休みします。
次の更新は3月18日になります。




