氾濫対オウギ
「…ここが防衛ラインの最前線だ。…なぁ、俺は敬語なんて学のある喋り方ができねーからよ、悪い言い方になっちまうが…本当に1人で良いのか?。」
ガロウが自分の前にいる男に尋ねる。その男は突如現れ候翼の指輪を差し出した。そして自分を氾濫の最前線へと送れという。なんでも奴隷を1人助けたいのだという。明らかにふっかけられている、そんな取引それこそ指輪を見せれば問答無用で無しに出来る。しかしそれをしない。あくまで取引で解決しようとする。強い者は全てが許される、そんな世界。指輪を授かる程の男なら尚更の…はずだった。今までの常識が崩れる音がした気がした。
「…えぇ、ここで大丈夫。僕の戦いは一対多数には向いてるんですけど…多数対多数には向いてないんです。なので僕が討ちもらした魔物、そして僕が力尽きたら後はお願いします。あの街には沢山の人が居ます。」
振り返った男、オウギがそう言う。
「…Aランクの俺でもあんたの隣には居られないか。…悔しいな、色々と悔しい。…が、不思議と悪くない気分だ。…分かった俺があの街を守る。任せておけ。」
そう言いガロウは踵を返し街に戻る。オウギが託した任を全うするために。
「…今日は…ハズレだな。『拳闘士』と『鍛治師』。どちらも使えそうにない。」
カードを取り出し確認したオウギはため息をつく。日替わりである2つの項目、無手の接近職である拳闘士と武器を作る鍛治師。どちらも今回は役に立ちそうもなかった。
「…日が変われば新しい適性になる。それまで…剣聖をメインでいくか。」
剣聖。武器、それも刀及び剣を使う適性の最上位職に当たり近接戦での無双を可能にする。
「さぁて、いきますか。」
オウギは剣を両手に持ち目の前に迫る魔物の大群へと駆け出す。
『ズシャ!。スパァァァン!…』
「…とにかく囲まれないように…そしてそこから先へは進ませない!。」
目の前の魔物を斬り捨てて進むオウギ。一太刀で何体もの魔物の首を刈り取る。そして防衛ラインを越えようとする魔物には剣から風の剣撃を飛ばし切断する。
「…数が多い!。…使うか。『虚空』。」
オウギが魔物を斬った勢いで上空に浮かび上がる。オウギが唱えるとオウギの視線の先の空間がひび割れ穴が開く。
『グオォォォォォォォォォ…』
その穴から引力が発生。魔物が次々と吸い込まれ断末魔の叫びをあげる。
「…っ。長くは続かないか。」
オウギのまばたきと同じタイミングで虚空は閉じてしまう。その半径50メートルには魔物の姿はなくなっていた。しかしその空いた空間にもすぐさま魔物が押し寄せる。
「…上等だ。僕とどっちが長く保つか勝負だ。」
まる1日の時が流れた。荒れる大地の上には服をボロボロにしたオウギ。そして…魔物の姿があった。
「…はぁ、はぁ、…っ、『降り注ぐ雷轟』。」
息を切らせたオウギが上空に手を向け魔法を唱える。空に暗雲が立ち込め轟く。そしてオウギに導かれるように稲妻が魔物に降り注ぐ。
『ドオーーーーーーンッ‼︎』
辺りに地響きを起こしながら降り注いだ電撃は魔物達を消し飛ばし、欠損させ、行動不能にする。
「…これで最後だ。『剣乱』。」
オウギが動けない魔物達に向かって駆ける。その背に魔法で操る剣を6本携え斬り刻んでいく。
『グォォォォ………』
魔物達からの声が小さくなり、そして最後には無音になる。
「…終わった。…くはっ、はぁ、はぁ、血が……、魔力が足りないな。」
血が滲む腹部に手を当て魔法を使おうとするオウギ。しかし魔法は発動しない。
『ドサッ!』
オウギはその場に倒れこんでしまう。みるみる血溜まりが出来る。回復に当てる魔力を魔物の討伐に充ててしまったためであった。
「…行かないと。約束…したのに。…ぐっ…」
それでもなんとか立ち上がろうとするオウギ。その時懐から何かが転がり出る。
「これは…あの時の…」
オウギの視線の先には楕円形の物。以前ガンガルディアから預かった物であった。
『パアァァァァァァア…』
その黒い球体から光が漏れだす。それがオウギを包み込むと不思議と体に力、魔力が湧いてくるのがわかった。
「…魔力が…回復した?。…なんだか分からないけど…ありがとう。これなら…」
回復した魔力を使い傷を閉じるオウギ。
「…今から約束を果たしにいくよ。」
こうしてオウギは少女の元へと向かったのだった。
インフルエンザに罹ってしまいました。
次回の更新はお休みさせていただきます。
申し訳ありません。




