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奴隷の少女との約束

「さてと…しばらくここにいるつもりだし…何か狩りに行くか。」

 翌朝目が覚めたオウギ。滞在費や旅費を稼ぐために魔物の討伐に向かおうとする。


「この辺には何かいるかな。『共鳴』。」

 地面に当てたオウギの手のひらから魔力の波が放たれる。


「ん?やけに人が集まってる。それに…。これは大変だ。」

 それで感じ取ったのは一箇所に多く集まる人の気配と…


「魔物の氾濫か?。」

 魔物の氾濫。魔物が発生する原因は解明されていないが時たま多数の魔物が湧く時がある。


「…ってことはこの人がいっぱい居る所がギルドか。」

 魔物の氾濫が起こった場合第一陣として冒険者が派遣される。その勢力で討伐が難しいと判断された場合籠城に切り替え近隣の腕利き及び聖騎士の到着を待つことになる。


「…どうするかなぁ。一応行っとくか。なんか分かるかもしれないし。」

 魔物の氾濫の場合個としての戦いだけでなく大規模な魔法による殲滅も行われることがあるためその説明は大事である。オウギは反応のあった地点に向かって歩き出す。


「たったこれっぽっちか‼︎。これだから獣人は使えない!。」

 オウギが少し行くと大きな声が聞こえてきた。それに伴い机を強く叩いたような音が聞こえる。


「…す、すいません!。すい…ません、すいません。…」

 ひたすらに謝る少女の声が聞こえる。怯えているのかかなり吃っている。


「この500ギルは借金の返済に充てさせてもらう。お前はまた飯抜きだな。…ん?なんだお前いつもみたいに薄汚れてないじゃないか。」


「…それは…そのいい人がお風呂に入れてくれて。」


「お前…洗髪料がある程の宿の者の所にいたのか。…馬鹿が!、何故それ程の客から毟り取らない!。寝首を掻いてでも金を稼ぐんだ!。明日もその客の所へ行けそして取れるだけ取ってくるんだ!。」


「そ、そんな…私は。それにあの人は…」


「…なんだ?奴隷の分際で口答えをするのか?。お前は!借金奴隷なんだよ!。俺がお前を買った値段分は返してもらうぞ。」


「私が…買われた値段は既に…」


「世の中には利子があるんだよ。何も知らん獣人がゴタゴタ抜かすな。」


「分かったらさっさと出て行け!。忘れずに今夜も客を取れよ。そうしないと一生奴隷のままだぞ。」

 その言葉のあと少女が建物から追い出されてくる。


「きゃっ⁉︎。…そんなぁ…今から夜までどうすればいいの?。お腹…空いたよ。」

 その勢いに負けたのか足元がもつれ地面に倒れる少女。途方に暮れたように顔を上げる。


「…?。。あ、昨日の旦那様…!。あっ!。」

 その視線の先にいたのはオウギ。少女は咄嗟に両手で頬を隠す。しかし隠しきれておらず赤くなっているのが見える。


「……『恵の雫』。」

 それを見たオウギは何も言わず少女のそばにしゃがみ込み魔法を唱える。青い光が少女の頬に触れる。


「…あ、…あの、ありがとうございます。」

 突然の行動に驚く少女。その驚きはさらに加速する。先程まで感じていた頬の痛みが無くなっていく。


「………。」

 その少女にオウギは一つ笑みをこぼすとすっと立ち上がり少女が叩き出されてきたドアから中に入る。


「ん?なんだお前…。ここがどこだか分かってるのか?。ウチはあんたみたいな奴がくる所じゃねーんだよ。」


「…先程の少女を貰い受けたい。」


「は?あんた自分が何を言ってるのか分かってるのか?。それはウチで奴隷を買うってことだぞ?。」


「分かっています。もう一度言います。あの子を僕に売ってください。」


「…5000万ギルだ。ふん、あんたみたいな奴にこの額が払えるのか?。」


「ま、待ってください!。私が借りたのは200万ギルです!。それに…もう2年くらい働いています。その額は…」

 外から会話を聞いていた少女が中に入ってくる。


「煩いぞ!。さっきも言っただろ世の中には利子があるんだよ!。」


「そんな…。旦那様!、私のことは良いんです。もう…」


「その額を払えばいいんですね。」


「…払えるって言うのかい?。」


「2日後までに用意します。だから…その子に暴力を振るうのをやめてください。」


「あんたが2日後に払える保証がどこにある?。」


「…ならこれを。治癒の丸薬です。」


「ほぉ、かなり良い物だな。売れば100万にはなる。…いいだろう、その代わり間に合わなければこれをもらう。」

 見た所ただの青年であるオウギが5000万もの額を用意できるわけがないとタカを括っているのか醜悪な笑みを浮かべる男。


「それでは僕はこれで失礼します。」

 そう言いオウギが身を翻し建物をあとにする。


「あ、待って旦那様。」


「僕は旦那様じゃないよ。僕の名前はオウギ。」


「…オウギ様。…私は別にいいんです。だから…」


「そんな顔をしないで。約束だ。僕が君を自由にする。」


「だから帰ってきたら君の名前を聞かせてくれ。」

 その言葉を残しオウギは走り去って行った。

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