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オウギ、竜王と出逢う

 それは突然の事だった。辺りから光が消え、闇に包まれる。濃密なる魔力が周囲に漂い謎のプレッシャーが降りかかる。そのプレッシャーに耐えかねた人々は一様に頭を垂れる。移動する暗闇、跪く人々、まるでそれは大いなる存在の前に潰されるかの様であった。


「うわっ、凄い魔力。これは…」

 街道を歩く他の人々がプレッシャーに潰され膝をつく中オウギは空を見上げていた。この暗闇の本体は今から現れる、その確信があった。


『ギィアァァァァァァ‼︎』

 遂に姿を現した根源。空を覆い尽くすほどの巨体を誇るドラゴンだった。黒い体、全身を覆う棘、紅く鋭い眼光、そして全てを嘲笑うかのような魔力量。この世界最強種である竜種。その中でも最強の呼び声高い七頭の竜王、その一角『ガンガルディア』であった。


「恐ろしや。どうか通り過ぎてくだせー。」

 その圧倒的な存在感に祈りを捧げる人々。竜王は天災とも言えれる程に破壊的であった。気まぐれに街を破壊し、気まぐれに恵みを与える。一度その意識を向けられれば破滅すら現実となる。それ程の存在だった。


「…でかっ、こんな生物もいるのか。やっぱり面白いなぁ。」

 その中でもオウギはワクワクしたような表情でガンガルディアを見つめる。


『……ジッ……』


「あれ?。今…」

 そこで本来起こるはずのない事が起こった。オウギはガンガルディアと目線があったような気がしたのだ。絶対に起こるはずはない、しかしオウギは確信にも似た感情を抱いた。


「僕に、何か…言いたいことがあるのか?。」

 声に魔力を乗せるという器用なことをし、オウギがガンガルディアとコミニケーションをとろうとする。


『グギャァァァァア‼︎』

 オウギの言葉に応えるかのようにガンガルディアが吠える。そして辺りに雷鳴が鳴り響き始める。


「な、なんだぁ⁉︎。竜王様どうか怒りをお鎮めくだせぇ。」


「おい、兄ちゃんお前さんなんかしたんか?。どうなってるんだ?。」

 ガンガルディアが起こしたと思われる雷に怯える人々。1人佇むオウギに問いかける。


「…力を見せろ?。なんだか分からないけど…『無慈悲な空間』と『疾き光輪』。」

 オウギが魔法を唱える。黒い円が幾つも発生し一列に並び、円環を形成する。それを貫くように光の輪が通り過ぎる。黒い円を通るごとに光の輪は速度を増しいつしか目で追うこともできなくなっていた。


「…はぁはぁ、いくよ、『刹那なる真矢』。」

 循環し続ける光が上空に向かって放たれる。刹那の時で竜王の元に届いた光。


『…ギャァァァァァァァオ』

 その魔法は確かに竜王に傷をつけた。竜王に傷をつけた人間は有史以来記録には残っていない。


「お前さん⁉︎な、何をやっておるんだ!。竜王様のお怒りに触れるつもりか!。」

 ガンガルディアの叫び声を聞き、オウギとガンガルディアのやり取りを理解していない人々がオウギを咎めるが、


「大丈夫ですよ。えーと、何かを渡したいみたいなんですけど…」


『ゴルルル……』

 ガンガルディアが操る雷が収束し始め一筋の光となる。


「…これを僕に預ける?。え、ちょっと待ってこれって。」

 光が晴れた時そこには1つの球体が落ちていた。オウギはそれを手に取る。


『グルルルルル…グギャァ…』

 オウギが手に取ったのを見届けたガンガルディアは暗闇を引き連れ飛び去っていく。いつしか辺りには陽の光が戻ってきていた。


「…なんだろこれ。取り敢えず持っとかないとダメだよな。」

 オウギが拾ったのは楕円形の球体。大きさは直径10センチ程で色は黒、所々に紅い筋が入っている。


「お前さん、運が良かったな。竜王様にあんなことをして無事で済むとは。しかしこれからはあんな無茶はせんようにな。命がいくらあっても足らんぞ。」

 ガンガルディアが去ったことによりプレッシャーから解放され動けるようになった人々が生きていることに感謝しながら散り散りに去っていく。中にはオウギに忠告する者もいた。


「…あ、はい。気をつけます。」

 オウギは拾った物を見ながら返事を返す。当然上の空であったが忠告した人物は1つ息を吐き立ち去っていった。


「…硬いな。石か?。何か御守りになるかもしれないし…胸元に入れとくか。」


「ちょっと足止めくらっちゃったけど先に進みますか。」


『トクンッ………トクンッ』


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