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終話

終話


「先輩、ジャッキーを尊敬してるんですか?」

「ええ、ウチは親子二代でジャッキーファンよ。だから私は生まれる前からジャッキーファンって事になるわね」

 ならねーよ、と本気は思うがそこはあえて言葉にしない。

「ところで、何でサッカー部員がここにいるんだ?」

「いいじゃん、俺、けっこう良いトコで助けに来だろ?」

「友達くん金魚とも仲良いみたいだし、面白いから特別に許してあげる。」

「マジっすか?ほら、部長のお墨付きだ」

「元だからな。その人、卒業生だからな」

「現部長も良いって言ってくれるはず。俺は竹取を信じてる!」

 何故かUMA研究部にいる隼人が拳を振り上げている。

「友達くん、竹取さんの事好きなんでしょ?」

「はい、好きです!でも先輩の事も大好きです!」

 そう答えられるってスゲーな。

 即答する隼人を本気はそう思って見た。

「でも竹取さん、ガチャピンにしか興味無いわよ?」

「そうなんですよね。だから俺なりにガチャピンにはなれないけど、ガチャピンに近づくためにまずはあの運動神経から身に付けようと思いまして、色々努力をしているわけです。でも最近だとバハムートとも戦う必要があるんですよね」

 そこと戦ってるのか?お前はそれでいいのか、桂城隼人。

「友達くん、あんたイイわ。ここに下級生から『なんか、隔離施設にもカッコイイ先輩がいるみたいよ』とか言われていい気になってる奴とは違うわね」

 かすみが呆れる様な目を本気に向ける。

 いい気になってないし。って言うかそんな風に言われてるとか、初めて知ったんだけど。

「ほら、友達くん、何か言ってやりな」

「本気はどうなんだ?本気の周りには年上、同い年、後輩と各ジャンルにそれぞれ美少女がいるわけだが、誰が本命なんだよ」

「それは是非私も知りたいわね」

「何で先輩とまったく同じ質問なんだよ?UMA研究部なんだから、UMA研究しましょうよ。俺はデメキンから一回離れて、ツチノコ辺りの研究をするべきだと思うんですけど。だってツチノコって何億って稼げるんでしょ?狙っていきましょう」

「あー、無理無理。大体高校生がちょっと探したからってツチノコなんて見つけてたら、生涯を賭けて追い求めてる人に失礼よ」

 かすみが平然と言うが、だとするとその否定の仕方も大概失礼な気がする。

「ていうか、あのサキュバスとかデメキンはツチノコどころの騒ぎじゃないくらいUMAじゃなかったんですか?あのネーさん、コスプレ露出痴女じゃなかったんスね」

「正真正銘の悪魔だったらしいわね。残念なのは証明のしようが無いって事かしら」

 三人で話していると、部室の扉がバーンと開く。

「ぬははははは、皆の者聞けい!」

「ああ、先生こんちわ」

「おおっと、ノーマルテンションで来たか、明日唐君。しかし、これを見てもそのテンションのままでいられるかな?さあ、入ってきたまえ!」

 異様にテンションの高い矢追が言うと、恥ずかしそうに淫子が入ってくる。

「ああ、インコちゃん。大丈夫そうだね」

「明日唐先輩、ご迷惑お掛けしました。鴨音先輩も、桂城先輩もありがとうございます」

「あ、アレ?君達、テンション低くない?彼女は『色欲淫子 改』なんだよ?」

 矢追は慌てていう。

「改?インコちゃん、変態眼鏡に何かされたの?」

「あんたがやりかねないだろ」

 飛びかかりそうな勢いのかすみを、本気は止める。

「え?いえ、数日休んでしまったのでマスターがそう言う風に」

「違う!よく見ろ、制服が新しくなっているだろう!つまりは新装備。ニュー淫子ちゃんというわけだ」

「眼鏡割った方が良いわね」

「先生、不審人物見つけました!」

 と言って窓から入ってきたのは、神楽である。

「やあ竹取君。今僕の目の前にも窓から入ってきた不審人物がいるよ。しかもココ二階だからね」

「捕獲した場所も場所なんで、入れて下さい。よっこらしょ」

 と言うと、神楽はデメキン風船の他にす巻きを肩に担いで入ってくる。

 具体的にどうやったんだ?どう見てもこいつが不審人物だし、魔法使いの類は矢追よりこいつらだろう。デメキンの能力か?

「な、何なのよ!私はこんな事では屈しないんだからね!」

 す巻きからは足と頭頂部しか見えていないのだが、金色の頭頂部と聞いてるだけで不快感を煽る語尾を聞く限りでは、これはす巻きのままにしておいた方が良さそうだった。

「竹取さん、何でも拾ってきたらダメだってお母さんから言われなかった?元あった所に返してきなさい」

「はーい」

 かすみに諭されると、神楽はす巻きを持ち上げると窓から投げ捨てようとする。

「ちょっと待った、竹取さん。下でメッサーさんが受け取ってくれるとか、そういうオチはあるのか?」

「まさか。ちゃんと地面に落とすわよ。私もやった事あるから、意外と大丈夫よ?」

「ダメだって!ていうかやった事あるのも問題あるから!良い子が真似しちゃ危ないだろ!隼人、竹取さんを殺人未遂にしたくなければ、そのす巻きを奪い取れ!」

「おう!いくらなんでもシャレにならないからな」

 隼人は神楽からす巻きを奪い取る。

「えー、ちゃんと高反発クッションで巻いてるから二階位からなら大丈夫なのに」

「安全性は我も保証しよう」

 自由に飛び回れるデメキンが、無責任な事を言う。

「そういうのは専門のスタントマンの仕事で、なんちゃって悪魔祓いにさせることじゃないって。そもそも学校のどこに人をす巻きにできるサイズの高反発クッションがあったんだ?ほら、インコちゃんも青ざめてるから。」

 本気が言うように、淫子は神楽のあまりの行動に言葉を失っている。

「新部長、面白そうだから私も手伝うわよ」

「ありがとうございます、先代部長。まずはす巻きを取り返しましょう」

「本気、俺はどうしたらいい?」

「まずは逃げてくれ。間違っても上には行くなよ。外に逃げれればひとまず安心だ」

「了解」

 隼人はす巻きを肩に担いで、逃げ出していく。

「友達くん、私からはそう簡単に逃げられないわよ!」

 かすみと神楽とデメキンが逃げ出した隼人を追って、部室を出て行く。

「先生も止めてくださいよ」

「いやー、斬新な遊びだと思ってね。ああ見えて竹取君も常識あるから、本当にはやらないよ。バハムートもいることだし」

 と矢追は笑う。

 しかし常識のある人間は、高反発クッションで少女をす巻きにして、それを担いで二階の窓から侵入したりしない。

 神楽一人でもやりかねないというのに、対象になったす巻きの態度や安全性を保証した無責任デメキン、さらにこの部屋にはかすみという危険分子もいるのだから実行する可能性は飛躍的に高まっている事を矢追は考えていないらしい。

「さて、僕は用事があるからまた来るよ。みんな仲良くやってくれ」

「それは先輩達にこそ言わないとダメでしょう」

「明日唐君さえ知っていてくれれば、後は上手く伝えてくれるからね」

 そう言って矢追は部室から出て行く。

 本気は溜息をつくと窓の外を見る。

 ちょうど隼人がす巻きを担いで校舎を出たが、瞬足のかすみに追いつかれたところだった。

 今年一年こんな調子かな?

 本気はうんざりしたようにそう思うが、意外と近くでオロオロしている淫子を見ると自然と笑みが浮かんだ。

 でもまあ、そんなに悪くないかな?

 終わりです。


 感想などをいただければ次回以降に活かせると思いますので、良ければよろしくお願いいたします。

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