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狼少年の話  作者: 美橘
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12/17

ルカの最期

松明の火が辺りを明るくし、中心の処刑台を囲むように村人全員が集まった。

サラの両隣にはドクとサロメがそれぞれ寄り添っている。


「ルカ…」


誰かの声が聞こえ、場は一斉に騒がしくなった。

役人に連れられたルカが村人の間を通って歩いてくる。

口々に言葉を発する村人に、ルカはにっこりと笑ってみせた。

サラの後方からも声がした。


「気の毒だが、自業自得だろう」


「あぁ。あのガジェット所長が放っておくわけないもんなぁ」


…!

とっさに振り返って憤怒しそうになったサラの肩を、サロメがそっと抑えた。

少し強めの力に振り仰ぐと、唇を引き締め何かを必死に堪えるサロメの表情があった。

恐らく、いや、確実にサロメも憤りを感じているのだ。

それを堪えている。

ルカのために。

サラは肩に乗っているサロメの手に自分のそれを重ね、処刑台へと視線を戻した。

ちょうどルカが台に上がり、首に縄がかけられるところだった。

縄がかけられたのを確認し、宰らしき役人がルカの斜め前に立つ。


「これより罪人ルカの処刑を始める。罪名は虚言・瞞着罪。これによる被害者が数名。これを重罪とみなし、よって絞首刑とする。ルカ少年、何か言うことは?」


淡々と書状を読み上げる宰に対し、村人の中から不満の声がちらほら上がる。

問われたルカは真っ直ぐにサラを見つめた。

その様は豪胆で、勇ましい姿と表情だった。


「サラ!ごめんな。守ってやるって約束、叶えられなかった。それと、はっきり言ったことなかったけど…だいすきだ」


ルカの言葉にサラは首を横に振っていた。

違う。叶えてくれたよ。

言いたいのに、喉が詰まってて声が出ない。

泣くのを必死に堪えているから。


「…おっさん、ありがとな。ドクじいちゃん、ごめんな。じいちゃんのせいじゃないからな」


言葉を続けるルカの声は聞いたこともない程に穏やかで、サロメもドクもただ見つめ返すことしかできずにいた。

そして漸くサラは声を絞り出すように言った。


「ルカ…違うよ…。ルカはずっと私を守ってくれてたよ。そして願いも叶えてくれたんだよ。ルカは何も間違ってない。何も悪くないよ…」


そこまで言って、サラの目から涙が落ちた。

最後に詰まりながら言った“だいすきだよ”は聞こえただろうか。

涙で歪む視界の中、揺れ動くルカが足元から落下するのが見えた。

縄で吊るされたルカに悲鳴が次々飛び、役人に対して義憤の声が上がる。


「ルカ…!」


堪え切れず、顔を覆ってその場にしゃがみ込むサラに、サロメも同じようにしゃがみ、そっと背を撫でた。


松明に照らされた処刑台からルカが降ろされたのは、それから1時間後だった。

その間ずっとサラはその場から離れず、何も言わずにサロメとドクは一緒にサラの背を撫で続けた。

ただ、ドクはサラの言葉が気になっていた。

“願いを叶えてくれた”

サラがずっと願っていたこと。

それが叶ったということは。

…サラ、まさかお前まで死ぬ気なんじゃなかろうな…。

不安は増すばかりだが、果たして自分に止めることができるだろうか。

ルカの事でドクは自分の無力さを思い知り、矜持をも失いかけていた。


処刑台の周りに残っていたのはサラ、サロメ、ドクと役人が数名。

風の音すらも聞こえない、静かな夜だった。

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