表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生きるとは何か  作者: ルーツ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/161

バレンタイン

あの日以来、

和樹は転校し、

周囲の連中も俺から距離を置くようになった。


大きな騒ぎを起こすこともなく、

表面だけは静かな日々が続いていた。


だが──

俺の心は、日を追うごとに歪んでいった。


三学期が終わり、二年生になる。

一年という時間は、

驚くほどあっけなく過ぎ去った。


気づけば俺は、

ほとんど一人で過ごす存在になり、

周囲からは「怖い奴」として見られていた。


兄に対しても、

理由のない苛立ちだけが募っていった。


────


それからさらに一年半。

三年生の二月十四日。


突然、

同級生の女子に声をかけられた。


「あの……よかったら、これ……」


差し出されたのは、チョコレート。


だが──


「何これ?」


「あ……お兄さんに渡してほしいの……」


「は? なんでだよ」


女子は顔を真っ赤にして、逃げるように去っていった。


その日、同じことが何度も繰り返された。

俺はただの受け渡し役だった。


家に帰り、まとめて兄に渡す。


兄は、いわゆる“イケメン”で、明るく、負け知らずの人間だった。


──こんなにも近くに、越えられない壁があったのか。


その現実を、嫌というほど思い知らされた。

女子たちは俺ではなく、兄のことばかり聞いてくる。


そのたびに、胸の奥で黒い感情が膨らんでいった。


────


三年生になった頃、俺は塚本や数人の連中とつるむようになっていた。


放課後、

自転車で道路を横一列に塞ぎ、

クラクションを鳴らされればわざと挑発する。


完全な非行少年だった。


だが、その均衡は突然崩れる。


ある日、仲間の何人かが顔に痣を作って登校してきた。

昼休み、月山に集合することになった。


そして──

事件は起きた。


──────


月山に着くと、すでに数人が倒れかけていた。


その中心にいたのは、見覚えのある上級生。


宮田。五年生。


一年のとき、

プールで腹に膝を入れてきた奴。

そして、体育館で俺を睨んでいた奴。


次の瞬間、塚本が叫ぶ。

だが数人が一斉に襲いかかり、あっという間に塚本は地面へ沈められた。


俺も羽交い締めにされ、身動きが取れない。


宮田の前蹴りが、腹に突き刺さる。


呼吸が止まる。


そこからは──

一方的な暴力だった。


殴られ、蹴られ、顎を打ち抜かれ、地面に大の字で倒れる。


馬乗りになられ、顔面を何度も打ち据えられる。


鼻血。裂けた唇。

割れたまぶたから流れる血で、視界が赤く染まる。


──完全敗北だった。


完膚なきまでに、叩き潰された。

胸ぐらを掴まれ、顔を引き寄せられる。


「あんま調子に乗るなよ。

 ──殺すぞ」


唾を吐き、宮田たちは去っていった。


─────


保健室では処置できず、俺は病院で瞼と唇を縫った。


傷は、今も残っている。


だが、もう泣かなかった。

考えていたのは、どうやってやり返すか。

それだけだった。


────


家に帰ると、母と兄がいた。

心配する母に、俺は吐き捨てる。


「うるせーんだよ。関係ねえだろ」


俺の言葉に母は、ただ悲しい顔をしていた。


兄は笑いながら言う。


「お前、ほんと喧嘩弱えな。相手だれだよ?」


本当に惨めだった……


だが、一つだけ理解した。


ヘッドロックなんかじゃ何もならないと。

拳で顔を殴り、足で腹を蹴り潰す。


それがすべてだ。


─────


翌日。

体育館裏に仲間を集める。


やり返すために。


だが──


「やめようよ……危ないって」


塚本までもが、拒んだ。


その瞬間、何かが音を立てて崩れた。


「あっそ、もういい」

「お前らがやらなくても、俺一人でやる」


そう言い残し、俺はその場を去った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
相変わらず読ませる文章してますね。 中途半端に救いとかないのも良いですね。 漫画や小説と違って、リアルって残酷なもんですから。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ