82 謁見
いつもいつも大変申し訳無いです。
数話前から何故か話数を誤っておりました。
毎度ご不便ご迷惑をおかけします。
「ラズから聞いたとは思うが、俺はグライト帝国の皇太子だ」
隊長――ニック・カスラは俺達にそう言った。次期皇帝というものでありながら、あんな人間の国に近い場所で指揮を執っていたのは、父親の機嫌を損ねたかららしい。
ニックは人間との和解に肯定的で、新しい時代のためにもお互いに友好的になりたいと思っていたようだ。だが父親はそれを拒否。そして怒りを買って関所に飛ばされたようだ。
人間どもの恐ろしさ野蛮さ残酷さを知れば、その考えも変わるだろうと思ったのだ。実際こうやって奇襲にあっているし、父親の思惑通りともいえよう。
「本来ならば今の状況を見たら手を取るべきだ」
「……今の状況?」
「あぁ」
ニックの話を聞いて俺は驚いた。……いや、もしかしたら当然のことなのかもしれない。
単刀直入に言えば、グライト帝国にもあのアクトの魔の手が伸びていたのだ。各地にある村々は壊滅、彼の欲している《偽物の遺物》がごっそりと盗まれている。それだけならばまだいい。村人までも虐殺しているのだ。
彼の言う永久の命を持たぬものは、たとえ誰であろうと邪魔者。ティアフォールドだけではなく、スイ国もグライト帝国も滅ぼすつもりだろう。
あの魔法防壁は対人間っていうのもあるが、もしかしたらアクト達漆黒会の対策なのかもしれない。彼らの強大な魔法の前では、役に立たないかもしれないが。
「今こそ共闘すべきだ。あの忌々しい男を倒すためにも、一時的にでも良い。でなければ本当にこの世界は滅んでしまう」
全くもってそのとおりだ。そのスピーチを動画にしてアップロードしたいくらいだ。人間も亜人も、古くからある年寄り思考のせいで自ら死に向かっている。
ニックが喋りながら連れてきた場所は、帝国の城。隊に囲まれてここまで無事に来たが、それとなく刺さる視線が痛かった。
何となく何をしでかそうとしているかは検討が付いていたが、まさかな。
「父に、お前達に助けられたと伝えるつもりだ」
「正気か?」
ニックはニヤリと笑った。たかが命を助けてくれた程度で、凝り固まった年寄りの考えがとけるとは思えない。俺達を死地へ送り出す気なのか?
衛兵が渋々と門を開けると、遠くから見えていた時よりも遥かに立派な城が俺達を出迎えた。城に対して俺は良い感情を抱いていないから、少し構えてしまう。
冷たい視線を浴びたまま、俺達は城の中へと入っていく。卵や石が投げられることはなかった。亜人達のほうが理性的な生き物なのかもしれない。
だがその視線には当然、押し殺している感情がしっかり乗っている気がした。城の使用人からですらその瞳は鋭い。
しばらく歩けば王の間であろう扉の前に立たされた。ここに辿り着くまでに幾つか部屋の前を通ったが、それの比にならぬほど豪華に作られた入り口。ここが謁見などに使われる王の部屋なのだろうと教えてくれる。
横に構えていた衛兵が扉を開けた。重々しい音とともにゆっくりと開いていく。
奥に王座がありそこにはニックの父であろう亜人が座っている。威圧感が半端じゃない。まるでラスボスのようだ。
顔には古傷が幾つもあって、王でありながら自らも戦場に立っていたのだろう。歴戦の兵士という雰囲気も伝わってくる。
正直俺個人としてはグライト帝国とは敵対する理由がない。だから出来るだけ失礼のないように振る舞うつもりだった。
ニックが俺達を王の前に案内すると、俺はすぐさましゃがみこんで傅いた。ジースとパブリも分かっていたのか、俺と似たタイミングで膝をついた。
遅れてマルンとアヴィが身をかがめた。
「おい?」
「…………」
突然の行動にニックは驚いていた。だが俺は顔を上げない。ここで一番偉いのはニック皇太子ではなく、目の前の玉座に座る王なのだ。
王は口を開いた。
「楽にせよ。発言を許す」
「はっ。有難う御座います。僭越ながら――皇太子様が守っておられました、関所の襲撃犯を確保致しました」
「ふむ。人間か?」
「ティアフォールドの国の勇者なるものに御座います。処分は如何致しましょうか」
俺がそう言うと場がざわつく。自分の仲間の処遇をどうするかと聞いたからだろう。正直国に持って帰るよりもここでさばいてもらったほうが良い。
だってどうせ持って帰ったら、ティアフォールドの都合のいいような処分になるに違いない。それにこいつらはクソでカスであろうとも、一応は召喚された勇者。
下手に殺しはしないだろう。流石に今度はブラック国家じゃ済まされないほどの酷使をされるかもしれないが。
「お主の国の人間だろう。売るようなことをして許されるのか」
「あの国は俺にとっても忌々しい国に御座います。俺を死に追いやりました。いずれこの手で国を滅ぼすつもりです」
「そうか……。まぁよい。して、その勇者とやらは?」
俺はパブリを見やった。パブリも頷いて立ち上がる。王に向かってお辞儀をして、杖を振った。
周りの衛兵達は警戒して武器を構えたが、王はそれを鎮めた。納得のいかない様子で衛兵たちは武器を下ろしていく。
パブリは向けられた武器が下ろされたのを確認して、再び杖を振る。すると、空間魔法に収納しておいた馬鹿ども四人が吐き出される。ちょっと高い位置から、わざと落ちるようにして吐き出すあたりに、彼女なりの怒りを感じた。
そしてやはりどこでも共通で、空間魔法に人間を収容することは珍しいらしくその場の誰もが驚いていた。俺達はすっかり慣れきっていたから、久しぶりの反応だ。
王が衛兵を一瞥すると、数人がまとまって勇者達に近付いていく。拘束こそしていなかったものの、心も体も疲労疲弊しているあいつらには不要だったらしい。
腕を掴まれてそのまま退場していった。恐らく城の牢にでもブチ込まれて刑を待つのだろう。死刑じゃないと良いな。つまらんし。皇族殺し未遂だけど。
「山を鎮めたのもお主だな」
「はっ、恐れながら。報告が遅れて申し訳御座いません」
「よいのだ。…………お主らには礼を言う」
「もったいなきお言葉です」
完結させたら、
・現代に再転移した話を書く
・この世界で続ける
・もう書かない
で悩んでおります。




