81 グライト帝国
先日は誤字訂正ありがとうございました!
助かりました。
最後にオマケ漫画あります。
※完全なる趣味漫画です
※本編とは関係ありません。
俺は頭を抱えた。ミユが放った言葉があまりにもアホすぎたからだ。小中学生でも少し考えれば違うんじゃないかとわかるくらい。……あぁ、実際中学生もメンバーに居たな。ジースにオモチャにされていた少年がいた。
さて、国王が勇者達をここに送り出す際に言った言葉はこうだ。
「敵対しているグライト帝国に、厄災がいるかもしれない」
その《かもしれない理論》でここに来て、何の罪もないただ仕事を全うしていただけの亜人たちを殺したというのか。それが勇者というものか。なるほどな。
――馬鹿馬鹿しい。
俺を追放したときもそうだった。厄災になりかねない人材。厄災と同等。だったらどうだ、お前達がそうならないよう軌道修正してやるっていう考えは持たないのか。
本当にティアフォールドという国は俺をイライラさせるのが上手いようだ。
あのアクトの目的がティアフォールドの破壊のみだったら、どれほど困らないことか。むしろ積極的に加担するくらいだ。
「最悪ですね……」
亜人であるアヴィが口にした純粋な言葉が、勇者であるキヨヒト達の心に刺さる。バトルロイヤルの時はアヴィのことを養護しただけあって、一応馬鹿なことをやっているのは理解していたのだろう。だが国のためと脅されかけて、ここまで来たという感じだろうか。
やはりこの国は腐りきっている。
ジースが顎で奴らをさしていった。
「こいつらを国に突き返すか」
「ま、待ってくれ!」
キヨヒトは泣きながら懇願し始めた。
ティアフォールドは所謂ブラック企業の国家版――ブラック国家とでも言おうか。始めは俺も経験した通りの厚遇だったが、次第に本性を現していき今となっては過酷な労働環境を強いられているらしい。
その強大な勇者の力故に何度もダンジョンに向かわされ、金銀財宝を奪っては献上。そんな毎日。能力は上がるが心が死んでいった。
過労でミユが倒れた時も、国の指折りの魔術師が万全の状態へと回復させて、また再び働く。そんな日々を送っていた。
キヨヒトは反論も出来ぬまま、メンバーの心は壊れていった。
話だけ聞けば俺が抜けたのが正解だと言えるくらいだ。あの日苦しめられた記憶を思い出しながら、それが一日だけですんだと思うと、なんだか追い出された俺のほうが異世界を楽しんでいるように思えた。
「……それに、透明適性は必ず現れるんだ」
透明適性はこの娯楽を盛り上げる内容として存在した。作り上げられた魔王なのだ。虐げることによって復讐心を駆り立て、勇者と対峙させる。
魔王に挑まんとする無謀な冒険者達が現れれば、街の武器屋は儲かるし全てが上手く回る。
全ては国によって作られた酷く気味の悪いオハナシだった。
「だからといって復讐しない理由にはならないだろ」
いやむしろこれは制裁だ。今までそうやって人の命で楽しんできた連中への罰だ。こいつらが国の盾になるのならば、それを切り裂いてまで俺は国を滅ぼそう。
そしてもう一つ。ティアフォールドにとって計算外だったのは、アクトの存在だろう。本来ならば居ないはずの魔王を探し、グライト帝国を犠牲にしている時間があったら、アクトに対処するように特訓すべきだろう。
俺の意思が変わらないことを知ると、キヨヒトはうなだれた。今更命乞いをして助けてもらえるとでも思っているのだろうか。俺はそこまでよく出来た人間じゃない。
「パブリ」
「はいなのです」
パブリが地面に杖をトンと突けば、勇者達の足元にはブラックホールが現れた。そして瞬時に闇へ消えていく。方法は違えど、あれはパブリの空間魔法に収納したのだ。
俺達を入れるときは丁寧にドアまで生成してくれるが、これは俺の憎む相手だったからこういう処置をしたのだろう。少しは気が晴れるといものだ。
パブリは収納し終えると、俺を見てニヤリと笑う。《どうです? やってやったのですよ》そんな言葉が聞こえそうなドヤ顔だ。この年寄りは褒めるとすぐに調子に乗る、何も言わないでおこう。
木陰に隠れている亜人達に、もう驚異はないと伝える。すっかり俺達を信用してくれているようで、ぞろぞろと出てきてくれた。
少ない魔力ながらも一人で歩ける程度には回復出来たようで、隊長も再会した頃よりは元気そうだ。
「……すまない、助かった」
「いいや。これよりも通行証で街に入れなかったことを謝ってほしいね」
「何?」
「あ、いや。何でもない」
「私の発行した通行証が効かなかったのか。悪いがそれはこちらの問題も絡んでくる。君達をすぐに返すことは出来ない」
真剣な顔でこちらを見つめる隊長。後ろにいる部下達もため息をついたり、嘆いている。……どうやら、言わないほうが良かったのかもしれないな。
亜人の身内同士の問題に足を突っ込んでしまったようだ。
俺達はニコニコと不気味に笑う部隊の人間に囲まれ、逃げるスキも見つけられず再び亜人の街の前へと来ていた。その囲まれている様はまさしく奴隷かなにかだ。
隊長は衛兵に話があると言って、俺達を門から少し遠い場所に残して副隊長と二人、歩いて行ってしまった。
「嘘をついたとでも思われたのかな?」
不安そうにマルンが聞いてくる。周りの亜人達は口を利いてくれないし、心配なのだろう。ここまでに強い敵意を浴びたことがないのだろう。ただの町娘だったのだから、当然のことだ。
「隊長の名誉のため言わせて頂きますが、あなた方を疑っているわけではありません」
亜人の一人が口にした。すると周りの仲間が「何喋ってんだよ」と注意をする。それほどまでにタブーなのだろう。人間と会話することさえもが。
だが破ってしまったことにより、張り詰めていた緊張が途切れたのか、中でもお喋りそうな鳥の獣人が口を開いた。
相当に我慢していたようで、驚くほどの早口で全てをペラペラと喋っていく。
「いや~~、もう僕我慢できない! あのですね! 隊長ってば、実は王子様なんですよう! で、で、今ぁ、亜人の国が窮地に陥ってて~、隊長はなんとかしたいんだけど、王様が~」
「喋りすぎだ、馬鹿ラズ!!!」
そこへ別の隊員が制止に入る。どうやらこのラズと呼ばれている鳥の獣人は、俺達が人間であるということよりも、喋りたいという気持ちが強いらしい。
制止に入った猫耳の半分人半分獣の獣人と仲良さそうに喋っている。
獣人にもいくつかタイプがあるようで、アヴィやこの猫耳青年のように、人間の見た目にしっぽや耳が付いているタイプ。そしてここの隊長やラズのように、フォルムは人間であるものの、全身が体毛や鱗で覆われていたりするタイプ。後者はいわば二足歩行して知性が人並みにある動物、みたいな感じだろうか。
半獣の亜人は、見た目が人間に似ていることから迫害を受けていそうな印象があったが、この部隊を見ている限りではそういったことはなさそうだ。
むしろ人間側から迫害を受けて、亜人の国は助けてくれた、とでもいいそうだ。
結局隊長が帰ってくる頃には、最初の緊迫して頑なに喋ろうとしない空気はぶち壊れ。これもラズという青年のせいである。
いつもの調子に戻って喋り倒している隊員達を見て、隊長の男はため息をついた。




