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雪辱のカタストロフィー~厄災認定で追放されたので復讐します~  作者: ボヌ無音
はじまり

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18 冒険者ギルドⅡ

 ゼッドからの話をまとめるとこうだった。


 数百年に一度の厄災がやって来るので、当然勇者が召喚された。

もちろん厄災に対して人間は対策を行うが、逆に魔族は活発化する。その為、危険なクエストがよく増えるのだ。

つまり、彼らは俺達に「死にに来たのか?」と聞いたらしい。別に死ぬつもりもないし、そう簡単に死ぬようなやわな人間ではない。

しかしながら問題はそこだけではい。


 準備が完了した勇者らが、魔族が特に活きのいい地域へと出向く。

冒険者ギルドも例外ではなく、住民を守るべく、もしくは舞い込んできた依頼の為に、危険地帯へと出向かねばならない。

勇者とタイミング悪く、クエストがかち合ってしまったが最後。食べる為に危険に身を投じている冒険者は、《ただ厄災を狩り尽くす為だけにやって来た勇者》に、自らの仕事を奪われてしまう。


 勇者らは民の為、世界の平和の為に率先して魔族を狩るだろう。それが使命だからな。

それを見た民衆は彼らに感謝を示し、自主的に報酬を受け渡すかもしれない。

 だが冒険者はどうだろう?

結局は頼まれた仕事をこなせない限り、ギルドから支払われる金なんてない。骨折り損じゃないか。


 つまり、今の時期登録する人間は金欠覚悟で挑まねばならないのだ。


 それにしても、いい話を聞いた。もしかしたら、クソ野郎どもに会える可能性が出てきたという訳だ。しかも、向こうから出向いてくれるとみた。

積極的に危険クエストを受けていれば、いずれ出会えるだろう。


「いいことを聞いた。これから()()()()()よ」


 今度こそ換金所に行くぞ。

元はといえば金がなくて装備が整えられないから、こうして舐められたのだ。

とっとと防具なり揃えておきたいものだ。


 それにせっかく自由に動ける機会が得られたし、街にいるのだ。

図書館に行って文献を読みあさりたいのだが――


「なあ、これも縁だ。良かったら飯でもどうだ?」


 …………正直凄く面倒だな。

たかが喧嘩の仲裁をして、握手をし、名を名乗った程度で気軽によく言う。

あまり人との関わりを強く持ちたくないんだが。


 まぁ、一応()()()()()()()んだし、ここはイエスと言っておくのが礼儀なんだろうか。

 それに、朝に飯を食ってそのままダンジョンへ向かう形になってしまったから、朝から何も口にしていない。昼時も、とうに過ぎていた。

アヴィは俺に心配をかけたくないのか、疲れた、お腹すいたなどの類の発言を聞いていない。

 換金所だって、そこそこ遅くまで営業しているというし……。

 下手に断って不審がられるのも困る。

………仕方ない。




 ――食堂

 昼食時はとうに過ぎていたのにも関わらず、店内は賑わいを見せていた。

そんな中、俺達と赤い月を合わせた六人でも掛けられるテーブルを発見、これ幸いと急いで着席した。

 赤い月御用達の店らしく、ゼッドは仲良さげにウェイトレスと会話を交わしつつ、メニューをもらっていた。

俺にもメニューをくれたので、先にアヴィへと渡す。


「え……あの」

「先に選べ」

「ありがとうございます……」


 メニューを押し付けて正面を向くと、赤い月のメンバー達が呆気にとられていた。

何かおかしい事をしてしてしまっただろうか?

バイト先の後輩の女性スタッフとかと接する内に、年下の女子を優先する癖が付いてしまっていたから、こっちの世界では変な事なのかもしれない……。


「この亜人、奴隷だろ」


 ここへ来て忍者――ジース・テイバーが発言をした。

会った時からそうだが、怪訝そうな表情を隠すことなくはっきりと出していて、今も俺を疑い探っている。

ここまであからさまだと、相当強いと自信のあるパーティらしい。先のギルドでの鶴の一声もそうだが、結構わがままの通るパーティのようだ。


 それにしてもアヴィに選ばせたのは失敗か。奴隷だから主人である俺が先に選ぶのが当然だよな。

前居た世界に奴隷制度なんて無かったからポンと思い付くわけない……。


「そうだが。どう扱おうと俺の勝手じゃないか?」

「………ふん」


 納得はいかないようだが、言い返してこないので話はここで終わりにしよう。

俺の発言を聞いて、ゼッドが盛大に笑った。


「ハッハッハッ、本当に面白いな。よし! 今回は俺の奢りだ、試験前の応援と思って受け取ってくれ!」

「いいのか?」

「まだ換金所に行けてないんだろう? こっちが誘ったんだ、奢られてくれ」

「助かる」


 ふむ、悪くない奴のようだ。

しかし俺は仮面を外せないからな……、面を外さずに食べる魔法なんてないし、どうしたものか。

まあ最悪、アヴィの分だけ奢って貰って、俺は俺で別に調達した食事を取るとしよう。

 アヴィはランチセットメニューを頼み、俺は飲み物だけ貰うことにした。




 ――時間からして一時間弱。

最初は気乗りしない誘いだったが、食事中の会話で複数の有益な情報を手に入れた。

ここら一帯の集落についてや、魔物・魔族に関して、厄災、犯罪。

俺が世間知らずの箱入り息子だと話すと、世界のことを事細かに話してくれた。

もちろん、研究の一環で手にした呪いの仮面のせいで、外へと飛び出さなければならなくなった事も彼らには告げた。

今後ダンジョンについての情報網になるかもしれん。今のうちに根を張っておかねば。


 一番有益だったのは、俺の最終目的である他の勇者についてだった。

召喚(あれ)からそれなりの日数が経過しているのにも関わらず、勇者様方は王国にてチンタラと修行に励んでいるらしい。

魔族に対してしっかりとした防衛と知識がない以上、挑んでみるのが一番手っ取り早いのに、未だに基礎中の基礎を組んでいる最中とは。


 本当に世界を救う気でいるのか?

のうのうとしている内に、各国では活発化した魔族によって人々が死んでいると言うのだ。

勇者サマが本格的に動き始める頃には、世界の人口が大量に減っていそうだ。


 まあ、おかげで前任の勇者の墓に関しては知られていなさそうだ。

奴らがどれほどの情報を得ているのかは知らないが、国から出ていないとなると、勝機はある。

 戦斧と同じようであれば、選ばれし者しか触れることは許されないはず。

捜索隊を派遣しても、勇者達がその墓に到達していないとわかった以上、まだ大丈夫そうだ。


 とはいえ、墓を見つけるのは冒険者の可能性も否定できない。

龍級となればあの程度のダンジョンは攻略できるだろう。

ギルドでの依頼をこなしつつ、ダンジョン探しに出た方が良いのかもな。


「カズヒロ様、お待たせしました」


 俺の昼食を調達するよう頼んだアヴィが戻ってきた。

頭の整理もついた所で、丁度いいタイミングだ。

料理は――ふむ、サンドイッチか。手軽でいいな。


「よろしかったのでしょうか……。私ばかりちゃんとお店で頂いてしまって……」

「いや、気にするな。それに俺はさほどカロリーを消費していないし、この程度で十分だ」

「かろ……?」

「何でもない、忘れろ」


 体力と言っておけばよかったかな。

まぁ、そんなことはどうでもいい、今度こそ換金所へと向かわねば。


 半ば飲むように、サンドイッチを腹へ放り込むと、俺は立ち上がった。


「次は換金所に向かう」

「はい」


 換金所はギルドのすぐ横に設置されている。

直ぐに立ち寄れて効率的な為、利益にも繋がりやすい。病院のすぐ横に薬局があるのと似たような感じだろう。


 再び正門のギルドへ戻り、真横の換金所へと入る。

 俺が今回渡すのは、ダンジョンで見つけたガーゴイルの素材だ。当然自分達用に幾つか取っておくつもりでもいる。

俺が倒した相手はことごとく灰にしてしまったので、アヴィが倒した分だけだ。

母数が少ないが、防具を買える程にぐらいはなってくれるといいが――


「悪いが、うちじゃ買い取れない」


 素材を店主の前に出すと、査定もせずにそう言われた。

まさか俺が透明適性だとバレたか? まさかな、よっぽど能力のある魔術師じゃない限り、俺のステータスを強制的に見ることは出来ないはずだ。

 店主は「本来は紹介したくないが、非合法の店を紹介する」と、俺達の返事を待とうともせず、メモ用紙を取り出してそこに地図を書き始めた。


「路地の裏にあるスラムに、なんでも買い取る店があるから――」

「……なぜ買い取れない?」

「あのねえ……」


 あんちゃん何も知らないのかい? と呆れ顔で話した。

店主は素材の中にある、原石のような石を指差す。ガーゴイルを殺した際にドロップした素材だ。落ちた当初は輝きを帯びていて、生きているようだった。

気付いたら光は消えていたが、そのせいで価値が落ちたとかか?

 それに持ってきた素材の中では、一番量が少ない物だ。

数にして――六つ。

大量に落ちた爪や牙に比べて、ドロップ率が低いものだから、高価なものだとは思っていた。


「これは魔石っつってな、魔族の心臓みたいなもんで、滅多に取れやしなんだよ。俺もこんな大量に見たのは初めてだよ」


 この店はそれなりに繁盛しているそうだが、この希少価値のある魔石とやらは、一つ買い取るだけで借金で店が回らなくなるほど高価らしい。

――問題は俺ではなく、金の事だったか。

 それにしても、そんなに高価なものだとはな……。出てくるガーゴイルを全て焼き尽くしたのは、惜しいことをした。

今後魔物と対峙する場合は気をつけるとしよう。


「爪と牙だけは買い取れるから、出来るだけ高く買い取ってやるよ」

「助かる」


 換金を終え、外に出る。

今回手に入れた金額は、五十万エル。

エルというのはこの世界の共通通貨単位らしく、感覚は日本円と変わらない。しかしながら物価が安いせいか五十万となると大金に感じるな。

店を見て回る限り、野菜や生活必需品はたいてい100~500エルもあれば数日分はゆうに買えるだろう。


「もう夜ですね」


 外は既に薄暗くなり始めていた。

夜になってしまうとは。路地裏へ踏み入れるのは、明日にしようか。


 紹介された非合法の換金所は、治安の悪いスラムに位置する。

表に絶対に出ないという暗黙の了解で、違法脱法なんでも許されている地域だ。

小さな窃盗なんて日常茶飯事。ホームレス、殺人、人身売買、密売、薬物売買などなど、やりたい放題だ。

 そんな場所へ夜に踏み入れるなんて馬鹿な真似をする気はない。

俺は自分の身を守れるとしても、奴隷として売買される亜人種のアヴィは飛んで火に入る夏の虫というやつだ。


 それに今日一日歩き回って疲れも溜まっているだろう。

少し早いが、宿を取るとしよう。

いつも見てくださってありがとうございます。

がんばります。

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