第1話 私が見つけるべき真実①
K三〇四年、魔法の国の中心地にある教会で挙式が開かれた。
魔法の国の第一王子であるローティスとその妃である私、ユランを祝うため、教会の外にまで国民が押し寄せている。
「これより魔法の国の第一王子であるローティス王子と、魔術の国のユラン妃の挙式を執り行う!」
教会の祈祷台には牧師が聖書を朗読している。牧師の背には、グラデーションの美しいカラフルなステンドガラスが埋め込まれていた。
そのステンドガラスには聖母が十字架を掲げる絵画が描かれており、その圧倒される神々しさに思わず手を合わせて祈りを捧げたくなる。
「あのステンドガラスが気になるか?」
これから夫となる魔法の国の第一王子であるローティスは、私の視線を勘くぐってそう尋ねる。私より頭ひとつ分身長が高いのに、よく気付いたものだ。
「あれは我が「魔法の国」を守る慈愛と誠実を象徴する聖母の絵画だ。どんな罪人でも聖母の前で誠実に懺悔をすれば、聖母から赦しが与えられると言われている。あの聖母が見守っていること肝に銘じて、我々は日々、恥じぬ生き方をしている」
「でしたら私はきっと聖母様から罰が与えられることでしょう」
「それは一体どういう———」
「ほら行きますよローティス様。牧師様が待っています」
私はローティスの腕を掴みながら、足並みを揃えて真っ赤なバージンロードを歩いていく。
豪華なクラシックの生演奏と参列者の歓声が私たちを包み、時計塔の鐘からは祝福の音が聞こえてくる。この場に満ちている幸せはすべて私とローティスに向けられている。だが、私にはその幸せが苦虫を嚙み潰したように気分の良いものではなかった。
「第一王子であるローティス王子より、ユラン妃に誓いの言葉を」
牧師はシナリオどおり進行し、ここでローティスが私に愛を誓うのだが、ローティスは私の耳元で誰にも聞こえないように囁く。
「ユラン。お前が俺に対して嫌悪感を抱いているのは分かっている。だがこれだけは言わせてくれ、俺はお前のことを心から愛している。この国で、いつかお前が何気ない毎日を笑って過ごせるように、生涯かけて幸せにするとここに誓———むぐっ」
その誓いを無かったことにするように、私はローティスの唇を奪った。
参列者から甘い悲鳴が飛び交うが、ローティスは目を見開いて困惑した表情を見せていた。
何故なら誓いのキスはウェディングベールで顔を隠し、『キスしたフリ』をするように事前に打ち合わせをしていたからだ。そんなことよりも、進行の順序を飛ばしてしまったこと、あとで牧師様と執事に謝らないと。
「……お前はどうして」
動揺と困惑がローティスの瞳に浮かんでいる。そんな彼に私は道化師のような笑みを捧げる。
「ローティス様、私はあなたを愛しています。この魔法の国で王子を務めるあなたは、国民の為に多忙な日々を送り、瞬く間に季節が変わりゆくのでしょう。私はそんなあなたを支える王妃となり、あなたと幸せになることをここに誓います」
純白のドレスに包まれる私は、今この瞬間が人生で一番美しくて、人生で一番醜いことだろう。
嘘に固められた私の言葉は、聖母様にはどのように聞こえたのでしょうか。




