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異世界行ってもデイサービスで働きたい!  作者: 硬めのバケツプリン
異世界行ってもデイサービスで働きたい!

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第十五話 再会1

第十五話 再会①


「和くん! ちょっと来て!」


茉椰先輩が、ただならぬ表情で僕のところへ駆けてきた。


「どうしたんですか?」


「いいから、こっち!」


先輩について行く。


一体、今度は何があったんだろう。


そして――


「……え?」


その先にいた人物を見た瞬間、僕は言葉を失った。


「しず子さん……!?」


そこにいたのは、僕が以前働いていたデイサービスのご利用者、しず子さんだった。


交通事故が起きたとき、しず子さんも同じ車に乗っていた。


ということは……。


僕たちと一緒に、この異世界へ転移したんだ。


「しず子さん……僕のこと、わかりますか?」


恐る恐る声をかける。


すると、しず子さんは僕の顔を見て、優しく微笑んだ。


「霜村さん! 会いたかったわ」


「……っ」


その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が熱くなった。


しず子さんは、僕の祖母にどこか似ている。


顔が似ているわけじゃない。


話し方や表情。


そして、そこにいるだけで周囲を安心させるような佇まい。


それが、祖母によく似ていた。


「少し痩せたんじゃないの? ちゃんと美味しいご飯を食べないとダメよ」


しず子さんに言われて、自分の身体を見下ろす。


そうだろうか?確かにこちらにきてからお腹いっぱい食べた記憶はない。


でも――。


「しず子さんだって……こんなに痩せちゃってるじゃないですか」


しず子さんが異世界に来てから、どれくらいの時間が経ったのかは分からない。人によって転移してきた時間が異なるから


ちゃんと食事はできているんだろうか。


ちゃんと眠れているんだろうか。


そして――。


ここにいるということは、ルーエの介護を受けているということだ。


ルーエの職員たちだって、決して悪気があってあんな介護をしているわけじゃない。


それは分かっている。


それでも。


今まで僕が働いていたデイサービスに通っていたしず子さんが、突然この世界に飛ばされて。


慣れない環境で、今までとは全く違う介護を受けている。


どれだけ不安だっただろう。


どれだけ辛かっただろう。


そう考えた瞬間――。


「……っ」


頬を涙が伝った。


僕は感情を抑えきれず、しず子さんを抱きしめた。


「しず子さん……」


「ここで介護してもらうの……辛くないですか?」


すると、しず子さんの頬にも涙が伝った。


「ここの介護は、少し乱暴なところがあるから……」


しず子さんは、僕の胸元で静かに続けた。


「デイサービスでは、どれだけ良くしてもらっていたんだろうって思うと……涙が出るの」


「……やっぱり」


胸が締め付けられる。


やっぱり、しず子さんも辛かったんだ。


「でもね」


しず子さんは涙を拭いながら、優しく微笑んだ。


「ここの人たちだって、一生懸命やってるのよ」


「……」


「少し乱暴だけど……私たちのためを思ってやってくれている気持ちは、ちゃんと伝わってるわ」


本当に。どこまで優しい人なんだ。


介護をしてくれている人たちのことまで気遣っている。


やっぱり、祖母に似ている。


おばあちゃん……。


そして僕は、しず子さんをしっかりと見つめる。


「しず子さん」


「なあに?」


「僕……頑張ります」


「え?」


「僕が、このルーエを……デイサービスみたいに、みんなが楽しく通える場所にします」


「……!」


「だから……もう少しだけ、待っていてください」


そのときだった。


「和くん」


後ろから声が聞こえた。


振り返ると、ロアーさんがこちらへ歩いてきていた。


「しず子さんと知り合いなの?」


僕は慌てて涙を拭った。


「はい。前の職場のご利用者だったんです」


「そうだったんだ」


ロアーさんはしず子さんを見て、それから僕を見る。


「和くんは、しず子さんのこと……すっごく慕ってるんだね」


「はい」


僕は迷わず答えた。


「僕の祖母同然の存在です」


その言葉を聞いた瞬間――。


ロアーさんの表情が、わずかに曇った。


「……和くん」


「はい」


「ご利用者に対して、あまり感情的になってはいけないよ」


「……はい!」


僕は背筋を伸ばした。


「承知しています。皆さんに公平であるべきですよね」


「……そういうことじゃないんだよ」


「え?」


ロアーさんは、しばらく黙っていた。


そして、険しい表情で口を開く。


「私たちはね……送迎中に、ご利用者を死なせてしまうかもしれないんだ」


「……!」


その言葉に、息を呑んだ。


「もちろん、本気で守ってる。本気で戦ってる」


ロアーさんの声が、少しだけ震えていた。


「それでも……どうにもならない時があるんだ」


その表情を見て、僕は何も言えなくなった。


きっとロアーさんにも――。


僕の知らない、辛い経験がある。


守れなかったご利用者がいるのかもしれない。


僕は拳を握った。


「……承知しました」


ロアーさんの目を見る。


「ご利用者に対して、思い入れを持ちすぎないように……これからは気をつけます」


一瞬、言葉を区切る。


「ただ……!僕がもっと強くなります」


「……和くん?」


「ご利用者を死なせないために。守れる力を身につけるために……精一杯、努力します!」


ロアーさんは少し驚いたような顔をした。


そして――。


ふっと、微笑んだ。


「よし!」


「……!」


「分かってくれれば、それでいいんだよ」


その隣で、茉椰先輩が僕の肩に腕を回す。


「和くん」


「はい?」


「一緒に強くなろうね!」


僕は先輩を見て、力強く頷いた。


「……はいっ!」


おばあちゃん、おじいちゃんの生活を守りたい。


一人でも多くの方のためになりたい。


「皆さん送迎の準備をしてください!」


ミューミューさんがスタッフ全員に呼びかけた。


「…え? もうですか?」

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