魔王が薬を捨ててくれたのでそれから一悶着ありました
魔王を退治して私はほっとした。
「アリス、凄いな、お前、魔王を退治するなんて!」
ブラッドには畏敬の念で見られて少し面はゆかった。
「まあ、魔王じゃ、アリスに敵わないと思ったけれど、まさかここまでとは思っていなかったよ」
「えっ、そうでもないけど」
お兄様に褒められて私は少し得意げになっていた。
まあ、所詮魔王なんて三流の魔物だ。
私の敵では無いのよ!
何しろ私は将来はシャラおばちゃんを継ぐんだから!
「ちょっと、アリス、遅いわよ」
縄を解いてやろうと思ってイリーナとモンモンの所に行くとイリーナに文句を言われて、
「本当よ。アリス、魔王なんて一瞬でやっつけなさいよね」
モンモンにまで言われたんだけど……
一瞬このままこいつらをほって置いてやろうかと思ったのは仕方がないよね?
「痛い、痛いったら」
縄を解こうとしたらモンモンがギャーギャー文句まで言うんだけど……
「静かにしていなさいよ。ほどけないでしょ」
私が文句を言った。
決してむかついたからきつくしていることはないはずよ。
「フランク様、怖かったです」
お兄様に縄を解いてもらったイリーナの奴は私とはいきなり態度を変えて、お兄様に抱き付いているし……
「ちょっと、アリス、早くしてよ」
「煩いわね」
ますますムカムカして結び目がほどけないじゃない!
思いっきり締めたくなってきた。
そうか手ごと縄を燃やす?
私が良いことを考えた時だ。
「ちょっと、アリス、今良からぬ事を考えたでしょ! ブラッド様。アリスが酷いんです!」
モンモンの奴、ブラッドに泣きついてくれるんだけど……
「何だ、アリスは解くのは下手だな。俺がやってやるよ」
剣を出すと結び目をあっさりとブラッドは切ってくれた。
そのままモンモンの手も傷つけろ! と祈った私は決して悪くないと思う。
「ブラッド様、怖かったです!」
モンモンまでブラッドに抱き付いてくれるんだけど……
何だかな……
私は心底疲れてしまった。
まあ、モンモンもイリーナも、もうほっておこう。
私はそれよりもこの最果てのダンジョンに潜った理由があったのよ。
お母様のためにも何でも治せる薬を探さないと……
私はダンジョンの最奥の間をぐるりと見渡した。
真ん中に祭壇のような物があった。
私はとことことその祭壇に近づいたのよ。
階段の上に祠のような物があった。
私は階段を登ってその祠の中を見た。
でも、中には何もなかった。
「あれ? 何もないわ」
私は唖然とした。
「どうした、アリス? 万能薬はあったのか?」
お兄様が尋ねてくれた。
「それが無いのよね」
私が首をかしげると、
「ああ、それなら魔王が何かしていたわよ」
イリーナが言い出してくれた。
「あいつ、その薬をどうしていたの?」
私が勢い込んで聞くと、
「さあ、その蓋を開けて何かしていたわ」
私は不吉な予感がした。
「魔王はその瓶の蓋を開けて飲もうとしたんだけど一口飲んで『なんだこのまずいのは』と言って捨てていたと思うわよ」
私はモンモンの言葉を聞いて唖然とした。
「何でも効く薬を捨てたの?」
「そう、そこに」
モンモンが指さしたところに、踏み潰されてガラスの破片と化した瓶があった。
「瓶の中身は?」
「その辺に捨てていたわ」
「そんな! あの野郎、今度あったときは殺す!」
私は呆然とした。怒りがふつふつと沸いてくる。
「殺すってアリス、既に魔王を焼き殺していたわよね」
「まあ、良いんじゃ無い? 魔王は何回も復活してくるみたいだから、対処はアリスに任せれば」
モンモンとイリーナの会話を私は呆然と聞いていた。
死病のお母様を治す何でも治してくれる薬を探しに無理矢理ここまで来たのに、その薬を魔王に捨てられていたなんて!
あのやろう! そんな最低のことをしてくれていたなんて、あんな簡単にやっつけれるのではなかった。もっと徹底的にやってやれば良かった!
私は怒りを持って行くところが無くて呆然と立ち尽くしたのだった……
「アリス!」
呆然としていた私にお父様の叫び声が聞こえた。
振り返るとお父様が私の方に駆けてくるところだった。
「お父様!」
「良かった、アリスが無事で!」
私はお父様に抱きしめられていた。
「どれだけ心配したと思っているんだ」
お父様は怒って言ってくれた。
「お父様、ご免なさい。お母様を治す薬を探しにここまで来たのに、魔王にやられてしまって」
私がお父様に謝ると
「何だと、魔王だと、だからこんなところに来るのは良くないだろう? で、どこにいるんだ?」
お父様がキョロキョロしてくれた。
「父上、魔王はアリスが退治しました」
「な、何を言っているんだ、フランク! こんな可愛いアリスがそんな事出来る訳無いだろう?」
「ほっほっほっほ、さすがアリスじゃ。魔王などアリスの敵では無かっただろう」
そこにシャラおばちゃん達が現れた。
その後ろには馬のおじちゃんや暴風おばちゃんもいる。
「ほれ、オーウェン、心配する必要は無いと申したであろうが! 後ろに古代竜まで、控えておるでは無いか」
シャラおばちゃんが指摘してくれた。
「ピー」
ピーちゃんが叫んで私の胸の中に飛び込んでくれた。
「えっ、シャラザール様、これが最果てのダンジョンのラスボスの古代竜なんですか?」
お父様が慌ててシャラおばちゃんに聞いていた。
「そうじゃ。アリスの前に敵は無かったであろう」
シャラおばちゃんはお兄様達を見てくれた。
「はい」
お兄様が頷いてくれたんだけど、
「でも、何でも治す薬を魔王に駄目にされてしまったの!」
私が半分涙目で言うと
「何でも治す薬? ああ、あのジャルカの風薬か?」
「えっ、ジャルカが作った薬なの?」
私が驚いてシャラおばちゃんを見ると
「そうじゃ。伊達と酔狂でジャルカが作った薬じゃ」
「万能薬では無いんですか?」
お兄様が聞くと、
「いや、まあ、人間にはそうかもしれんの」
「えっ、じゃあジャルカに頼めば薬を作ってくれるの」
「それは作ってくれると思うが、誰に使うのじゃ? 何なら余が治してやろうか」
「えっ、シャラおばちゃん、治せるの?」
「当然じゃ、何しろ余は全能神じゃからの」
シャラおばちゃんが胸を張ってくれた。
「じゃあ、シャラおばちゃん、お母様を治しして!」
私はシャラおばちゃんに頼み込んでいた。
「お母様というとクリスか?」
キョトンとした顔でしゃらおばちゃんは私とお父様を見るんだけど
「クリスはそのように酷い病気じゃったか?」
「いえ、そのようなことは」
「だって、血を吐いていたじゃない」
私がお父様を睨み付けると
「ああ、あれはつわりが酷くて」
「つわりってなあに?」
私はお父様に聞いていた。
「つわりというのは人間が赤ちゃんが出来た時に良くなる症状じゃ」
シャラおばちゃんが答えてくれた。
「でも、お母様は血を吐いていたわよ」
私が思わず言うと、
「血吐いた? ああ、お母様は唇を噛むくせがあって少し血が流れただけだと思うぞ」
お父様が言ってくれた。
「えっ、そうなの!」
私はほっとした。
「というか、お母様に赤ちゃんが出来たんだ。そういう事は早くに言ってよ!」
私がむっとして言うと
「まだ安定期に入っていないからな」
お父様が言うには普通はつわりが終わって安定期に入ってから公表するのだとか。
だからだまっていたんだそうだ。
お兄様達は冒険が出来たから良かったみたいだけど、私はその後帰ってからも延々と怒られてまた大変だった。
まあ、ピーちゃんがペットになってくれたし、私も色々と冒険が出来たから良いか!
私はそう思って諦めて延々怒られ続けたのよ。
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