4-20 真相
「会えて光栄です教授」
ということでランプ教授に会ってみた。
人類が使える魔法は全て使えるという噂の超天才魔法使いにして、魔王襲撃事件の第一容疑者!
元老院の会議にひさっびさに参加したかいがあったぜ……!
「お、お前はスティーヴ・ヘイズ!?」
「あれ?僕のこと知ってるんですか?」
最低限の身なりだけは整えましたという風貌の中年男性、ランプ教授が僕を見て顔を引き攣らせている。
「そ、そりゃあ知っている。マスクマンとかいう面妖な名前を使って現れた建国史に残る人型兵器、崩落人形!」
「え!?僕の名前残ってんの!?」
驚き。僕はいつもしんみりもうみんな忘れてるだろうけど……とか言ってたから記録に残ってないんだとばかり。
「初代国王陛下の兄君が所持していた最強にして最悪の兵器だった、と建国記に書いてある」
「あるんだ……」
僕も知らなかったらしく絶句している。建国記テストに出ないからあんまり読んでないんだよね僕。読んどいた方が良さそうだ。
「人型だというのはあまり知られていないようだがな。まあ真偽不明の資料にしか書いてないからさもありなんと言ったところだ。お前を見るにあれは正しい資料だったのだろう」
「なんで僕がそれだと思ったのさ」
「見た目の情報がまんまお前だからだ!癖のある茶髪に光を吸い込むような黒い目、少年とも少女ともつかぬような出で立ちと書いてある!リーカーの日記にな!」
「わあ」
僕が感動したように言った。リーカーと言うのはどうやら僕が昔仲の良かった男らしい。
「日記なんてマメなもの書くようなやつじゃなかったけどな」
「……その通りだ。記録もとびとびで文章も雑。おかげで信頼性の低い資料だとされている」
「あっ」
自白してるぞ僕。
「えーと僕のことはさておき」
「ちなみにお前が何かと便宜を図られているのも国王陛下が、お前のことを崩落人形だと認識しているからだ。爵位も有効だからな」
「なん、だと……?」
そりゃそうか!いくらそれっぽい情報抱えて戦闘能力高くても平民の言葉をホイホイ聞くわけないか!嫌な話だ!
「変なところで抜けているという記述も本当だったようだな……頭が痛くなってきた。ではあの記述も本当ということか?あれやこれやも?」
「あいつは僕と気が合うだけあって適当なやつだったから信用しなくていいよ」
そうなんだ。
「そんな色々詳しいランプ教授に見てほしい物があってさ」
エリスが暴れてるところの映像を見せる。
「なんだこれは……いや、言わなくていい」
「魔法にお詳しい教授なら何か分かるかと思いまして」
「この動く写真の仕組みはさっぱりだが、そうだな……。この少女はクロウラー家の長女だな?ふむ。物を浮かせる魔法か。……いやこれは魔法ではないな」
「呪術ですかね?」
「いいや。呪術とも違う。あれはこんなに規則的で統一感のある動作はできないはずだ……。どんなに凄腕でも差は出る、というよりそこを修正するならもっと他にすることがあるはずだからな。しかしこの動き、どこかで見たような」
本当に詳しいぞこの男。
「……まさか」
「どうしたんです?」
「…………。気のせいだったらいいのだが、このエリスという女、悪魔じゃないか?」
「へ?なんでですか?」
「やはり、これは魔法によるものだ。予め設定しておいた魔法を使っているから行使した痕跡がこの映像では確認できないのだろう」
「へー、魔法ってそんな使い方できるんですね」
「できるわけないだろ」
「え?」
「それができるなら今の魔法の主流はその使い方になっているはずだ。戦っていない時に魔法を貯めておけば使い放題だからな。でもそうはなっていない。理由は単純で、魔法ってやつは事象を改変するもので時間が経てば経つほど元の事象に修正されていくからだ。しかし、魔法を使う上でのあらゆる障壁を無視できる存在がいる」
「それが、悪魔」
確かに筋が通っている。
リエルが一般的に難しいと言われているらしい精神干渉魔法を容易く使えるのも、それが理由だ。
「じゃあリエルをレイヴンが襲撃してたのは……」
精神干渉魔法が要因だとリエルは言っていた。使ったのは自分じゃない、とも。魔王がそう言うのだから悪魔がやったわけじゃない、だから使える可能性が高い目の前の男が犯人だと思っていたが、リエルを殺そうとした悪魔がいるとなれば根底から話がひっくり返る。
「エリスが悪魔だと仮定すると、そそのかされたのやもしれんな」
「ちなみに教授って精神干渉魔法使えます?」
「……その魔法を見せられれば使えるかもしれんが、見たことがないので無理だ。理論上は可能らしいが本当に存在するのか?」
「魔王はバンバン使ってましたよ」
完全に信用するわけじゃないが、使えないのか。
「悪魔ってやつは……いやなんでもない」
横に首を振った。
「僕、教授は魔法なんでも使えるって思ってました」
「ああ……若い頃は見せられた魔法をその場で再現するなんていう曲芸でひと稼ぎしたこともあったからな。その話に尾鰭でもついたんだろう」




