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乙女ゲームのセーブ&ロードくんがあだ名のモブ?に転生したので平和に暮らしたい  作者: 神谷洸希
高等部3年生

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6-25 タイムトラベル

 ◇



「ふう」


 目が覚める。覚えのある場所だ。


「……」


「私をじっと見てどうしたんだ?」


 ベッドに座り不思議そうに聞いてくる彼を見て思わず目を見開く。


「い、いや。なんでもないよ」


 そうか。ここからか。

 彼は僕を武器として運用することを好んだ。僕という武器を所有していると他者に示したがった。だから僕は彼が寝ている部屋で、大抵壁際に立ち、飾ってある人形のようにただ虚空を見ていた。彼がそういう僕を好んでいたからだ。


「今日の予定は、同志集めだ。戦力は君一人いれば十分だけどそれでは格好がつかないからね」


「また酒場に行く気かい?やめといた方がいいと思うけど」


「いや!今日は街頭演説だ!賢人達は耳を傾けるはずだ」


 ……。燃えるように赤い髪の青年が楽しそうに笑う。

 見た目だけなら本当に王として不足ないように見えるんだけどなぁ。

 彼は他人に好かれようという気が一切なかった。僕が少しくらい取り繕うように言っても、そんな演技で近寄ってくるような人間は必要ないと聞かなかった。


「それよりルピーに会いに行かないか?」


「む?ルピーと言うと……魔王?……確かにそれもいいな。会ったことなかったしね」


「よし。じゃあ行くぞ」


「は?ちょっと待て……」


 この時代ならパスワードもいらない。さっさと行こう。


 そして僕達は魔界へと落下した。人間の彼は衝撃に耐えられないだろうのでお姫様抱っこをしてやる。彼はいつものような過剰なくらい自信を感じさせる表情を潜め、怯えたように僕の腕を掴んでいる。なんの振動も伝わらないくらいソフトタッチで着地してあげようじゃないか。


「ルピー!」


「お、お前は崩落人形。……と、誰だ?」


「僕の持ち主にして親友、ついでに偉大なる我がブリタジット王国の王兄エドワードだよ」


「ああ、私が崩落人形の所有者であるエドワードだ」


 真面目な顔になり、僕の腕を軽く叩き外させて、鷹揚に立ち上がる。さっきまで怯えていたのが嘘みたいだ。


「そうか。この前は騒がせて悪かったな」


 痩身の悪魔が少し笑みを浮かべながら言う。


「本当に反省しているのかね。私には崩落人形がついていることを忘れないように」


 彼は蘭々と輝く赤い目を細める。


「うん。エドに逆らったら叩き殺すから安心してね」


 僕はニコニコしながら同意した。彼のそういうところが好きだ。

 もう片方の僕はと言うと、状況を把握するためか黙ってじっくり様子を探っているようだった。


「思ってた通りの人物で安心したぞ、王兄殿下」


「思った通り小物臭かったとでも?まあいいだろう。崩落人形が私の味方につく限り優位性があるのは私の方だからね」


「会話が通じそうだという意味でだ。国王の方はその……」


「可愛い弟だとも」


 いいやつだよ。まあ確かにちょっと会話は成り立たなかった気もするけど……。カリスマ性あって人を見る目もあるし王としては不足なしだと思う。


 それより時間があまり残っていない。長いこと移動していると精神が固定されて今の僕と混ざってしまうからな。だからこそ意味がなかったと覚えている街頭演説をキャンセルしてわざわざここに直行したのだ。


 さて。2つ名である白炎の由来となった濁りのない見事な白髪を持つ魔王、ルピーの方を向いた。



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