6-7 変化
「ええと……僕がどうかしたのだろうか」
名前も知らない女子生徒に廊下で話しかけられた。ここで話しかけられるのは多分初めて。
「ああ、いや、髪が長かったから」
「あー……」
そういえば今回切っていなかったな。忘れていた。うっかりミスだ。何回も繰り返してると髪切るとかどうでも良くなってくる。今はちょうど肩口くらいの長さだ。
仕事中は結んでいたのだが、保健室登校する気しかないので気が抜けていた。
アンナは休暇なんてなく働いてるけどな。
「迷惑なら結ぶけれど」
「え!?いや、そういうのじゃないよ、私も髪は長いし」
「……ふーん。それで結局髪が長いのがどうしたんだ」
「いや……可愛いなって?」
口説かれてるのかな?
「今回はどうしたの?気分転換?」
「こん……かい?」
聞き間違えか?今の状況には適さない言葉選び。
「毎回さ、律儀に髪切ってたじゃん?君」
おっと?
目の前の女子生徒を見る。いたって普通。普通の女子生徒って感じの少女がなんでもなさそうにこちらを見ている。
「ゲームと随分違う行動をしているみたいだね、スティーヴ?」
目の前の女子生徒がにこっと笑う。
これは……確定か?なんで今?
てかこんなにあけすけに情報を開示されると、必死に隠している僕がバカみたいだ。
「ゲーム……聞いたことがある。古代文明にはそのような物があったらしい。僕はあいにく詳しくはないのだけどね」
「……。あったらしいっていうか貴方は古代文明の存在じゃないの」
「なるほどね」
この女子生徒が一体どういう人物なのか不明だけど、少なくとも僕みたいなニワカ未満のプレイヤー以下ではなさそうだ。
心してかかろう。
「それが分かっているなら話は早い。いいか?この僕にかかれば全世界を掌握することなど容易だ。君程度一撃で殺せる」
とりあえず警戒で。
掌握っつうか全滅というか。世界の最小単位が小さくなれば掌握だって簡単にできるので嘘はついてないんじゃないかな。
「脅すつもり?というかスティーヴってこんなに凶暴だったっけ?」
「……」
目を逸らす。
いや僕より僕の方が好戦的だと思うけどね!
ことアンナのことになると、多分僕の方が攻撃的になる。
アンナには期待しているのだ。
この、前世より男性優位の世界で、女性が世界を掌握できるのだという確信が欲しかった。
これは間違いなく僕個人の願望だ。
「何が言いたい」
「いーや別にぃ?頑張ってるねスティーヴ。そういう子、わたし好きだよ。それだけ」
そうやってニッコリ笑って、たたたたと走り去ってしまった。
▫
「ってことが朝あったわけ」
と、リエルに話していた。
「今も朝じゃね?」
「それはそう」
朝礼前だしね。
「さっきあったってわけだよ」
ってことで言い直す。
「なんでそこで誤魔化したんだ。素直に自分はやり直してます。あなたはどうですか?って聞けば速かったのに」
「それな!なんでこんなことしたんだろ。……いや、僕をループさせてる存在だったら嫌だから先に攻撃の意志示しとこうって感じだったような」
「あーまあそれもそうだな。諸悪の根源かもしれないやつに素直に話せってのは無いな。うん、俺が浅はかだった」
「……君がそんな殊勝な態度だと気味悪いな」




