アストレア王国へ。2
満足そうなアリサに俺は話を始めた。
「アリサ。これから行くアストレア王国は魔法を忌み嫌う国家だ。そこでは魔法は基本的に使えない」
「ええ、分かってる。でも、あたしだってリオンやエルロンド様と剣術を学んでいるから大丈夫。そこら辺のやつに遅れは取らないし、足手まといにはならないわ!」
アリサは自信満々に胸を張る。
しかし、いくら剣術を習っていても戦闘経験がほとんどないアリサが果たしてどこまで通用するかは未知数だ。
それに彼女はまだ人を斬った経験はない。戦闘になっても咄嗟に相手の命を奪えるかははなはだ疑問だ。
しかも、アリサの戦い方は筋力と瞬発力を風魔法で補う俗に言う魔法剣士という戦闘スタイル。
魔法の補助がなければ彼女は年相応の女の子だ。俺は無詠唱の肉体強化魔法が使えるが、彼女の場合は詠唱が不可欠になる。
魔法は全く使えないと考えていい。子供のしかも女の子が魔法のない国家で戦闘民族のような武闘派揃いの兵士と対峙するのは現実的ではない。
まあ、もし戦闘になっても俺がアリサと敵の間に入って代わりに戦えばいいだけだ。
アリサを連れて来たのも風魔法に適性があり得意な彼女に空を飛んでアストレア王国に行くまでで役割の殆どを終えている。
王国に着いたから街に潜入して子供が一人で動き回っていたら怪しがられるが、アリサと一緒なら子供の兄妹とかに思われるだろうし、女の子しか入れない場所にも入りやすいから潜入捜査もやりやすくなるだろう。
食事を終えると俺とアリサは宿を見つけて今日はそこに泊まることにした。
宿に入ると酒場ほどではないが軽食を食べられるくらいのカウンターと複数の椅子とテーブルが置かれていた。
俺はカウンターにいるエプロンを付けたおばさんに話し掛ける。
「すみません。今晩泊まりたいのですが大丈夫ですか?」
「ええ、いいよ! だけど……あんた達、子供2人だけで旅してるのかい? 親御さんはどうしたんだい?」
「はい。父と母は流行病で亡くなってしまって、今は僕と妹と旅をしているんです……いでっ!」
俺がおばさんにアリサを妹と説明したのが、それが気に食わなかったのかアリサはむっとしながら俺の脇腹を肘で突いてきた。
怒った理由はよく分からないが、不機嫌なアリサを後で機嫌を取っておかないといけないかもしれない。




