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拘束奴隷と自由な傭兵  作者: 内山スク


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3/4

支配された村

 きた目指めざはじめて一週間いっしゅうかんった。御者ぎょしゃ荷馬車にばしゃから降ろしてもらい、俺達は森の中を歩いていた。


 硬龍こうりゅうガンドラントが生息せいそくする山岳地帯さんがくちたいまでは、あと三日みっかほどかかる。


 最近野宿さいきんのじゅくばかりしている。悪くはないがそろそろ旅の物資ぶっしもなくなってきたし、何よりベッドがこいしい。


「そろそろ村とか見えないかなぁ〜なぁリーフ?」


「ザインガル様のおっしゃる通りでごさいます」


 ここ数日リーフに意見いけんを求めてもこれしか返ってこない。正直しょうじきイエスマン過ぎて話がひろがらない。


 無言むごんで歩くのもがもたないため、会話の広がらないキャッチボールをしていると村のようなものが見えてきた。


「村だ!!村が見えたぞ。リーフ」


「ザインガル様のおっしゃる通りでございます」


「・・・・・・なんか適当てきとうに返してない」


「ザインガル様のおっしゃる通りでございます」


 村に近づくと家や畑がある小さな村だったがある違和感いわかんがあった。老人が多く、若者はちらほらいるが数えるだけでも三人ほどしかいない。


「あのぉ・・・・・・すいません。この村って宿やどってありますか?」


 近くにいた白髪頭しらがあたまの杖をついた老人に話しかけると老人は目を見開みひらいて俺を見つめた。


「あんた・・・・・・剣を持っておるがひょっとして・・・腕に自信のある方かのぉ?」


「えぇまぁ傭兵ようへいをしながら旅をしているもので」


 俺の言葉を聴いて老人は嬉しそうに俺の両手を掴んだ。


「おぉ・・・ついにこの村にすくいの手が来なさった」


「救いの手?」


くわしい話はワシの家で話します。ささこちらです」


 老人に連れられて俺とリーフは老人の家にまねかれた。家の中は木製もくせいでできた家具かぐならんでおり、使われていない暖炉だんろには蜘蛛くもっていた。


 老人に案内され俺と老人は椅子に座るがリーフは椅子に座ろうとしなかった。


「突然のことで申し訳ないのじゃが助けていただきたい」


「助けるって何から?」


「二ヶ月前、この村はオークにおそわれたのじゃ。オーク達は村を支配し一週間に一回生贄いっかいいけにえを差し出すことで我々を生かすと言ってきおった」


「なるほど・・・そのオークを倒して欲しいわけか」


「その通りですじゃ。ちょうどオークに生贄を差し出す日は明日。明日の生贄はワシの妹なのですじゃ」


「明日か・・・・・・ん?おじいさん今なんて言った?」


「明日の生贄はワシの妹なのですじゃ」


「・・・・・・ん?妹?妹さんは何歳なの?それかあれか?親が違くて物凄ものすごい歳の離れた妹がいるかとかか?」


「いいえ正真正銘しょうしんしょうめいのワシの妹ですじゃ。年は三歳ほど離れていますが」


「おじいさん何歳なの?ひょっとして老けてるだけで結構若い?」


「今年で七十八になりました」


「・・・・・・そうか、そうか。うん。明日オーク達を倒す作戦を考えるか」


「今日はワシの家に泊まっていってくだされ」


「ありがとう。ところでこの村に若い子が少なくないか」


「今は出稼ぎの時期なのでほとんどの若者が村から出ております。そんな時期を狙ってワシら老いぼれを狙うとは・・・・・・許せんモンスター共です!!」


「うん・・・・・・そうだな。モンスターの価値観はわからん」


 一日村に滞在たいざいし、次の日の夜だった。村に巨大な影が近づいて来た。オークが三体ほど村にやって来た。


「イケニエヲモライニキタゾ。ニンゲンドモ」


 オークが来ると目の前にきらびやかな衣装いしょうを来た女性がオーク達の前に出てきた。


 蜘蛛の糸のように細く白い髪と、農作業や村仕事で日々使ってきたであろう、ボロボロの手。しわのだらけの肌はまるで人生の苦労くろうを表しているようだった。


 そう見なりを整え、化粧けしょうをしたおばあちゃんである。


 オーク達はおばあちゃんを持っていた木のおりに入れるとそれを背負い村を後にした。


 俺とリーフ、そして村の若者の男性を一人連れてオーク達の後をつけることにした。オーク達の拠点きょてんがわかればさらわれた人たちを助けられるかもしれない。


「うーんモンスターの好みはわからん。そう思わないかリーフ?」


「ザインガル様のおっしゃる通りでございます」


 なんとなくだがリーフの今の言葉は適当とかじゃなく心からの同意だと思う。相変あいかわらず表情筋ひょうじょうきんは死んでいるが。


 オーク達をつけて森を進んでいると森の中に灯りが見えてきた。


 灯りのある場所ではオーク達が酒盛りをしていた。俺は剣を抜きオーク達を後ろから叩き斬った。


 オーク達の反応はんのうにぶまたたく間に三体をせた。あばあちゃんを檻から出すと村の若者に預けた。


「君達は村に帰りなさい。後は俺たちがやるから」


「頼みます」


 若者がおばあちゃんを連れて森の奥に消えていくのを見届けると俺とリーフは酒盛りしているオークの拠点きょてんに静かに近づいた。


 オーク達の酒盛りをして盛り上がっており、その近くには木でできた檻に老人たちが入っていた。


 檻の中には食べ物が乱雑らんざつに置いてあった。恐らくオーク達にとって老人達は人間でいうペットのような感覚なのだろう。


「数が多いな。リーフから五十メートル離れずに戦うにはきついし、老人達を人質ひとじちに取られたら戦えないぞ」


 オークの数は七体。先ほど倒したオークの強さを見れば大したことはないが不意打ふいうちを仕掛しかけても気付かれてしまう。


 逃げれたらそれこそ終わりだ。リーフからは離れられないしいつ村に来るかわからない恐怖を村人達に残すことになる。


「ザインガル様・・・・・・ご相談があります」


 俺の横にいたリーフが自分から話しかけてきた。


「なんだ?リーフ」


「私がこのオーク達を一網打尽いちもうだじんに致します」


 リーフはそう言うとふところからナイフを取り出した。鋭利えいりなナイフは手入れがいきとどいており、灯りを反射はんしゃしていた。


「お前じゃ無理だリーフ。お前の実力じつりょくはわからないしこの数じゃ一匹でもにがしたら後々厄介やっかいなる」


「・・・・・・確かにザインガル様のおっしゃる通りでございます。しかし私にはできます」


 表情は死んでいたがリーフの目には確かな確信があるように自信に満ちていた。その目を俺は信じることにした。


「・・・・・・わかったやってみろ。何かあれば俺がフォローするから」


「かしこまりました」


 俺たちからオークの位置はギリギリ五十メートル以内に収まっている。オーク達がこれ以上動かなければ俺達が死ぬことはない。


 リーフは深呼吸をすると立ち上がった。


 そして一瞬のことだった。灯りの火が消え、辺りが暗闇くらやみつつまれた。白い線が暗闇にうつると周りは静寂せいじゃくに包まれていた。


 俺が暗闇に目が慣れる頃には七体のオークは首から血を流し地面に倒れていた。


 そしてそのオークの死体に座る血に汚れたリーフがいた。


 突然のことに俺は草むらからゆっくりと立ち上がり、リーフに近づいた。


「リーフ・・・・・・お前はいったい何者なんだ?」


 俺の質問にリーフは表情一つ変える様子はない。ただ赤く美しいひとみで俺を見つめていた。


「・・・・・・私の母は暗殺者あんさつしゃでした。私は暗殺者の娘にございます」

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