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昼食と『双子』と『包帯』と

眩しさに目を開けた俺はとりあえず時間を確認するために部屋に備え付けてある掛け時計を見た。

―うわぁ…もう昼飯の時間終わってるよ。

特別な事情―蜜柑みたいに歩けなかったりする患者以外は自ら昼食を取りに行かなければならず、十分以内に行かなければ全て片付けられてしまう。


コンコン


誰かが病室のドアをノックした。同室の志村さんがするわけないし、俺の『検査』は今日はない。全く心あたりがつかないがとりあえず「どうぞ」と言い、許可をする。

「ヤッホー、『名無し』!調子はどうだ!?」

「兄様、もう少し静かになされたほうが…」

ドアを開けて入ってきたのは異様に元気で包帯で口以外は隠している少年とそれとは正反対に気弱そうな声をした『病院』指定のパジャマを着た少女だった。

「…最悪だよ。朝からほのかに寝かされて今しがた目が醒めて頭痛いのに、大声で話す(けやき)が来たからな。唯一の癒しは(あおい)がいることだな」

「そんだけ喋れるなら元気だな」

ニヤニヤしながら言う欅に対して葵は何やら耳を赤くしてうつむいている。

「それで何の用だ?」

コイツが何も考え無しに動くことは有り得ない。こんな奴でもいつも何か人のために動いて自分が損しても全く気にしないことはここに来て一ヶ月で良く分かった。思えば入院して一番初めに話しかけてきたのも欅だった。…まぁかなり厄介なことも引き付けてきたが。

「いんや、俺は無いぜ。葵はあるみたいだけどな」

「葵が?」

一瞬ビクッとして逃げだそうとしたが先回りした欅によって逃走経路を塞がれ涙目になりながらも覚悟を決めて俺の前にくる。

「あの…」

「どうした?」

うつむきながら話すので小声で話す葵の声は正直、聞きづらい。それを解消するためにいつも覗き込んでは逃げられる。だが今日は違う。いつもの俺ではない。

「…葵」

「は…ふぇ!?」

俺の呼び掛けに反応して顔を上げた瞬間を狙って俺は逃げられないように肩をしっかり掴み、出来るだけ真剣に話を聞くために葵の顔を見る。

「用事ってなんだ?」

「はわわわわ…」

顔を真っ赤に染めてあたふたと逃げ出そうとするが俺の手のせいでそれは叶わない。

「大丈夫か?」

だが流石に慌て過ぎだろうと思い一応聞いてみる。

「ははははい!だいじょ…うぶ…で」

結果最後まで言えずに気絶してしまった。

―ぬぅ、いきなり過ぎてびっくりさせてしまったか

「…『名無し』、お前ワザとやってるだろ?」

呆れ顔―まぁ見えないが声色的にそうだろう―で言う欅の言葉を俺は本気で理解出来なかった。

「まぁ…面白かったからいいか」

「なんだそりゃ?」

「『名無し』は知らなくていいことさ」

「さいですか。ところで葵の用事しってんなら教えろ」

「気絶していて昼飯食ってないだろ。そう伝えたら『じゃあ私はもう食べれないから渡しに行く』って言いだしてなオレは渋々ついて来たってわけだ」

欅の指差した先―廊下に置いてあるベッドの上に全く手のつけていない昼食のトレーを見つけた。

葵は俺が昼食を食べれないだろうというだけで自分の分を譲ってくれた。他人のために自分を犠牲にしたのだ。

「目が醒めたら『ありがとう』って伝えてくれ」

「自分で言わないのか?」

「直接いったらまた気絶しかねないだろ」

俺のその言葉に欅は一層愉しそうに口を歪めた。

「お前やっぱりワザとやってるだろ」


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