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〈第47話〉漏れないようにするため、力を入れずにゆっくりしゃべる

 いた!僕を救ってくれるヒーローが。

 足をケガしてるはずの三好は元気に立っている。


 怪人カドノアルコールとドクターパセリがまだ言い合いしてるのを見ながら、僕は少しずつ後ずさりして、ステージのはじっこまで移動した。


 お客さんから顔を隠すように振り返り、木崎に声をかける。


「木崎、三好を呼んでくれ。舞台の目の前、いす席の横にいるから。おれ下痢で漏れそう。あいつに代わってもらう」


 はっきりは見えないけれど、木崎が息を飲む気配が伝わってくる。


「え、いや、三好は手をケガしてて・・・」

「いいから。もう分かってる。おれを舞台に立たせるために、みんなで一芝居打ってくれたんだろ。ケガしたの足だって言ってたし。うう。おれの下痢は芝居じゃないから。う、急いでくれっ」


 木崎をさえぎるように一気にそこまでしゃべったときに、熊谷がアドリブで絡んできた。

「どないしたんや心臓レッド。そんなとこまで下がって、なにしてんねん」


 僕はもう気が遠くなりそうになりながら、木崎が階段を駆けおりていったのを横目で見た。

「はっはっはっはっは・・・。怪人カドノアルコール、お前の最後が近づいてきたぞ。ふう。う・・・」


 漏れないようにするため、力を入れずにゆっくりしゃべる。前がかみの変な姿勢になってしまっているがしょうがない。


「声ちっちゃ、なんやジブン?」

 本当にけげんそうな顔をする熊谷を見て、ようやく僕に何か異変が起きたことに気づいてくれたようだと分かる。


 清花も振り返って心配そうに「先輩?」と言ってきた。


「ふっふっふっふ。おれ、心臓レッドは肝臓ブルーにカンチョウされるとお腹がゆるくなるのだ!おれはこれからトイレに行かせてもらう!健康のための三カ条のおまけ、その四、がまんはしない!」


 渾身の力を振り絞って、大声で言い切った。


「いや、どんな設定やねん?」

「設定じゃない、マジだ、これはー!」


 どはははははは、という笑い声とともに観客席がどよめく。熊谷やブロッコリー先輩、清花の戸惑った様子が伝染したのか、お客さんたちもどこまでが演技なのかと疑っている感じだ。


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