〈第22話〉心臓レッド、見参!!
「陽月祭、それは古くから、ここ年希島で人々の健康を願って続けられてきた祭りである」
立ち上がった三好がナレーションを読み出す。台本を初めて見た割にはスムーズだ。
木崎は地べたに座り込んだまま、少し微笑みながら場を見回している。寸劇の内容をまだ知らない彼女は、衣装のことを考えようというより、単純にまずは寸劇を楽しもうとしてくれているようだ。
寸劇委員のメンバーは既に内容を知っているし、真剣な顔で台本をにらんでいる。
「そんな人々の願いをくじくことを目的とした悪の集団が、突如、年希島を襲った」
三好がなかなかいい調子で続ける。「その集団とは、怪人カドノアルコール、アマイモノノタベスギ、ウンドウブソク、ギャクニウンドウノシスギ、スイミンブソク、人々を不健康にするためにやってきた悪の組織なのだ。他にも怪人はたくさんいて、サケノノミスギー、それから・・・」
「長いわ!ナレーション!はよ登場させえ。おれが怪人カドノアルコールや!!それから最後に言うとったサケノノミスギー、わしとキャラかぶっとるやないかい」
僕が標準語で書いた台本のセリフを、熊谷が大阪弁に変えてしゃべっている。まあ、これはこれでオッケーだろう。むしろ感じが出ていいかもしれない。三好が続ける。
「マダナレーションノトチュウ」
「なんや、マダナレーションノトチュウ、って、怪人の名前か?」
二人のやりとりを聞きながら、木崎がクスクス笑っている。
「ウルサイダマレ」
三好のカタカナ風の読み方が意外にうまい。
「なんやうるさい黙れって。怪人の名前を紹介するみたいな感じで会話してくな。ナレーターが!」
「ぷっ」
木崎が軽く吹き出した。ウケてる!
「さっきから怪人の名前紹介するだけで、わし以外、誰も出てけえへんやないかい。ほかの怪人も出てこんかい」
「ヒトガタリナイ」
「もうええねん、ナレーションは。ほなヒーロー出せや」
「とーう!心臓レッド参上!」
三好がさきほどまでのナレーションとは声色を変えてきた。結構ノリノリじゃないか。
熊谷は熊谷で、三好のほうを向きながら少し身振りも交えてしゃべる。台本のコピーを片手に持っているが、ほとんど目を通さない。こちらも名調子だ。
「心臓レッド?なんやお前」
「この世の不健康を撲滅するためにやってきたヒーロー、おれたち五臓六腑レンジャー、見参!」
「いや、どう見ても怪人やないか、ジブン。心臓の形して、気持ちわる」
「なに!?黙れ、おれたち五臓六腑レンジャー、見参!」
「いや、それはもうええから。しかも一人やん。五臓六腑レンジャーいうてんのに。てか、なに?五臓六腑レンジャー、って」
熊谷のツッコミが綺麗に入った。さすが、タイミングもばっちりだ。




