〈第20話〉人の名前が分からず焦ると、心の中の五郎さんが「あやまっちゃお」と囁いてくる
「それでは第一回の稽古兼打ち合わせ会を始めます」
この日、寸劇委員室(つまり元演劇部の部室)に集まったのはブロッコリー先輩と熊谷、清花、それから木崎と三好、そしてもちろん僕だ。
ブロッコリー寸劇委員長からは「け、稽古とかについては、け、ケンちゃんが仕切ってくれればい、いいよ」と言われた。
椅子と机を端っこに寄せて作ったスペースに五人が座って、僕を見上げている。
僕は少し緊張しながら、練習の進め方を説明した。
「まずは今日は、皆さんに台本のそれぞれのパートを読み上げてもらいます。それから絵画委員のお二人には台本を読みながら衣装や背景セットのイメージを膨らませてもらおうと考えています」
職員室でコピーさせてもらった手書きの台本をみんなに配り終え、僕は一呼吸した。
表紙に視線を落とした木崎と三好が声をそろえる。
「ゆけ!!五臓六腑レンジャー?」
さっそく台本をめくり始めていく二人を僕は緊張しながら見つめる。
「長瀬、なんだよ、『ゆけ!!五臓六腑レンジャー』って。おれは何役なんだ?変な役はイヤだぞ」
顔を上げた三好に質問されて、僕はあわてて「静かにしてください。順番に説明するので」とさえぎった。
実はこの前、美術室に行って、木崎と三好に衣装づくりをお願いしたとき、ついでに三好には舞台にも出演するよう頼み込んだのだ。
「おいしい役をやらせてやるから」と言っても、しぶる三好は「おれは別においしい役なんてやりたくない。なんだよ、おいしい役って」とかたくなだったが、絵画委員の手伝いをすることと、ふれあい牧場のソフトクリームをおごる約束をして納得させた。
このことは熊谷や清花、ブロッコリー先輩にはまだ言っていなかったので、今ここで、初めて発表することになる。
「ではまず、ナレーションと心臓レッド役、三好くん」
僕が少し声を張り上げて発表すると、熊谷と清花、先輩が顔を見合わせたのが分かった。
「三好くん、お願いしますね」
僕は念を押した。
「ええ?おれ、ナレーションとレッド?二つもやるの。まあ、レッドってのはリーダーだろうからいい役なんだろうけど」
三好がまんざらでもなさそうな様子なのを確認してから僕は一気に続けた。
「それから怪人カドノアルコールは熊谷くん、肝臓ブルー役は小峰さん、ドクターパセリ役は・・・・・・・・・・・・・ロコリ先輩になります。以上です」
ブロッコリー先輩の本名をいまだに知らないことに気づき、変な間があいてしまったけれど、とりあえずは言い切った。




